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NARUTO
五 

気怠い雰囲気を漂わせながらナルトは詰所に向かった。

今日は当直をする日で、ナルトは昼からで奈良はもう少し後からの出勤になっている。

『・・・おはようございます』

「渦巻せんせい、熱は大丈夫なんですか?」

近くにいた黒森に聞かれて、ナルトは苦笑を浮かべる。

『いや、昨日はごめんな、もう何か頭おっかしくなっちゃって。』

あははは。空笑いを浮かべてそのままナルトが受け持つ病室へと向かった。

ナルトが病室の巡回をする時は廊下が賑やかな声に包まれ、そんなとき可愛らしく黒森に声を掛ける子供がいた。

「あの、ナルト先生、いますか?」

「いま病室まわってるんだ、名前は?」

マスクをして、一人だろうかと思ったとき、速足で母親がきた。

「ちょっと早いからー、すみませんこの子ナルト先生に会うって聞かなくて。」

「だって渡したいんだもん。」

ぷく。と頬を膨らませる女の子に、看護師が気付いて声を掛ける。

「あらー美空ちゃんじゃない、ナルト先生?」

「うん!会いにきたの!!」

ちょっとまっててね。そういうとナルトの携帯に電話をすれば、直ぐにすっ飛んできた。

『みーちゃんっ!!』

「ナルトせんせーっ!!」

バックミュージックが掛かってるんじゃないかと思われる程、ナルトの背後にはハートが飛び交い、抱き合う。

『みーちゃんだー、みーちゃん元気にしてた?』

「うん!元気に学校いってるよ!」

ぎゅうぎゅう抱きしめて、くるしいよ、と笑って言われるまで抱き合い、呆れ顔を浮かべる看護師達。けれどその眼差しは暖かい。

「今日はね、ナルト先生にこれを渡しに来たの!」

『え、なになに!?』

恥かしそうな顔でナルトの手渡した物は、彼女がお気に入りだった髪ゴムのボンボリ。

「あとね、お手紙書いて来たの!!」

『――・・・っ』

ナルトは口許を抑えて、ジワリと浮かんでくる涙を堪えた。

長い入院生活をして、最初は元気が無くてこんなにも懐かれていなかった。それが少しずつ距離が縮まって笑顔を向けてくれるようになった。

苦しくて痛みを堪える姿に、何度も心配になった。

「ナルトせんせい、一人で読んでね。」

『・・・うん、約束。』

指切りをして、彼女は笑顔を向ける。

『みーちゃん、写真撮って飾ってもいい?』

「え、この髪形で!?」

『・・・え。』

「ちょっと美空、先生は忙しいんだよ?」

母親の言葉にふくれっ面を浮かべると、楽しそうな声がした。

「渦巻、また可愛くやってもらえば?」

『奈良せんせいっ!!』

「やったー!じゃあ奈良先生と同じのにするーっ!!」

いこう!とナルトの腕を引っ張ってキッズルームへと消えていった。

「元気そうでなによりですね。」

「担当俺のハズなんだがな・・・」

担当医は奈良。

けれど子供は正直で、好いた相手に会いに来るもの。

「仕方ないですよ、渦巻先生はここの小児科医であり、保育士なんですから。」

看護婦長の言葉に、奈良はふっと笑みを浮かべ、キッズルームは直ぐに賑やかになった。

「・・・ま、こういう事だったんだろうな」

奈良はナルトよりも早く彼女からの手紙を受け取っていた。その中に入っていたのは、おそらく同じだろう。

「奈良先生はこっちなの!!」

「はいはい」

看護師達も呼ばれて、彼女を中心に写真を撮る事になり、奈良は苦笑を浮かべる。

「私、此処の人達、だーいすき!!」

最高の笑顔を浮かべて、ナルトはじわりとするものを感じる。

『俺もミーちゃんが大好きだーっ!!』

ぎゅー、と抱きつき、奈良がやり過ぎだと頭を叩く。

そしてナルトは子供達に聞かれると、自慢げに話をする姿があった。



**********

がしゃーん、と大きな音が廊下に響きわたった。

奈良とナルトはその病室に駆けつけると、ベッドの上で蹲り、赤黒い色をした血がべったり付いていた。。

「吐血か」

『敦也横向きになれるか?』

上着のボタンを外して横向きにすると、また咳き込み始める。


「手術室どこ空いてるのか聞いてくれ!」

「はいっ!」

やってきた黒森に奈良は指示をだして、ナルトは腹を痛がる子供の相手をしながら脈を計る。

『脈多いです。』

「渦巻、少し離れる」

ナルトは奈良と入れ替わって、子供の上着のボタンを緩める。苦しむ子供の額を撫でて、ナルトはストレッチャーに移らせた。

「渦巻、すぐ内科に行くから移動・・・してたな」

『はい、意識があったりなかったりするので内視鏡少し難しいかも知れません。』

「分かった、後は待ってろ。黒森お前見ておけ」

「はい!」

二人は手術室に向かい、看護師達と片付けをして帰りをまった。



手術着に着替えて、奈良と黒森は中に入る。


「子供でも苦しむから呼吸に合わせてやるんだ」

人口呼吸器を奈良がつけて、テレビの近くにはメモを持った黒森。

内視鏡をもち、奈良は子供の顔を眺める。いつもより青ざめていて、苦しそうに眉を寄せていた。

痛ませないようしても、喉の奥に触れてしまうと、自然に嗚咽してしまう。それでも苦しめることは余り無く、奈良はそのまま胃の中まで到達する。

「あー・・・まだ出てんだな。」

「・・・・・・。」

他にはないのか確認していく奈良の目は、いつもより真剣だった。黒森はメモをとり、書きこんでいく。

「痛かっただろ、もう大丈夫だからな?」

意識がまだ朦朧としている子供に声を掛ける奈良。その間にクリップで止血していく。

下がっている血圧もこれで大丈夫だろう。

胃に溜まったものを吸い取り綺麗にしていくと、内視鏡はゆっくり抜かれていく。

「――終了。」

おつかれ。

予定より早く終わったのは、子供が頑張ったから。今はもう眠り、起きた時には少し楽になっているだろう。


外はもう夜に姿を変えていて、ナルトは子供が戻るまで残っていた。

『・・・敦也』

綺麗になったベッドで眠る子供の手を握って、ナルトは顔を眺める。

『よく、頑張ったな・・・偉いぞ』

点滴の落ち具合をみて、脈拍を計ってから病室を後にした。

壁に寄りかかって小さな吐息を吐いた。

助かって良かった。

瞳が潤んできたのが分かって、ナルトは頬を数回軽く叩く。

「会って来たか?」

『・・・奈良先生』

曲がり角に奈良が壁に寄りかかって立っていて、ナルトはそのまま彼の近くまで歩いて行く。

「また泣きそうになってたか?」

『なってません!!』

むきになる姿を見て、奈良は苦笑を零す。頭を撫でられてナルトは奈良を見上げる。

「なってたんだろ?」

『わるいですか・・・』

むすっとした声で言葉を返すと、奈良の口端は小さく笑う。


「こんな所でいちゃつかないで下さい。」

そんな二人の空気を壊したのは、黒森の冷めきった声。

『・・・いちゃつく?』

「違いました?」

首を傾げる黒森に、ナルトは冷や汗が浮んでくる。もしかして知られてしまってるんじゃないのか。

「奈良先生も賢いのか賢くないのか・・・渦巻先生だと結構表情変わるんですね。」

何をいうんだこの研修医は!!

ナルトはハラハラした気持ちを抱えて奈良を見れば、なんとも平然とした態度だった。

「なんか馬鹿くさくなってきちゃった。」

『・・・なにが?』

一人納得する黒森に、ナルトは聞き返すと、彼は溜息を一つ零す。

「二人を少しひっかけてみろって言われても、こうも仲がいいと引っ掻ける自分が馬鹿らしい。」

「お前、院長か理事長に頼まれたんだろ?」

「はい、理事長に頼まれました。」

ナルトは二人のやり取りを聞いて、奥歯を強く噛み締める。

「あんなに態と針やっても怒らないお人よしだし、子供馬鹿だし、奈良先生は何処まで知ってるのか得体が知れない。」

自分の身が危うくなる前にばらした方が速いから。

『なに、したら黒森君が俺に冷たかったのって・・・』

「それは違います、俺があなたに惚れたからです。」

「「・・・・・・。」」

爆弾発言をさらりと告げる彼に、二人は言葉が出なかった。

「昨日のはさすがに奈良先生を恨みました。来てなかったら俺が美味しく・・・介抱していたのに。」

つるっと本音が出て言い直すが、ナルトは眩暈がして奈良の肩にあたった。それを彼が支えるのだから黒森はむすっとしてしまう。

「本当は邪魔するつもりだけだったのに・・・渦巻先生は罪深い人ですね。」

『俺なんもしてないし!』

なに戯けた事を言ってんだ。

「まあ、落とすのは無理だから・・・精々気を付けて下さいね、」

黒森はニヤリと笑みを浮かべて、通り過ぎる時にナルトの尻をひと撫でした。

『・・・っ、のやろ・・・っ』

そこを押さえながら振り向いて黒森を睨み付けると、奈良に腕を引かれる。

『ちょ、なに・・・こっ、ころぶ・・・っ』

「あの野郎・・・」

堂々と言いやがって。

しかもあろうことかナルトの尻に触れたのだから、奈良はそれだけで腹正しかった。

とんだ独占欲の塊に、ナルトはこれからどうなってしまうのか。



ナルトが詰め所に戻ってきた時はぐったりとしていて、机につっぷしていた。

「やられちゃいました?」

『・・・おまえなぁ・・・っ』

口端を笑わせて尋ねる黒森に、ナルトは忌々しげに睨んだが、今のナルトには効果がない。

「あれだけでこうなるなんて、奈良先生って意外と強いんですね。」

こいつからかう為に言ったんじゃないだろうな。

そう感じてならない。

最後までされてはいないが、奈良のねちっこい愛撫にナルトは疲れただけ。つかれたが、身体が疼いてしょうがなかった。



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あきゅろす。
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