NARUTO
六
試合は引き分けで終わり、生徒達は疲れがどっと来たのか背中が曲がっていた。
それを見てナルトは奈良の事を思い出す。
そう言えば来ているのだろうか。
「俺たちのアイスがーっ!!」
「アイス食いてえええっ!!」
『・・・お前らアイスの為に頑張ってたのかよ』
呆れ顔を浮かべるナルトに、生徒達はだって食いたい!と言葉を返す。
それにはナルトも溜息が出て肩をがくりと落ちる。
「あー、引き分けとかマジないわー」
「無いわハウスだわー・・・」
『あー・・・まあ頑張ったしな・・・』
無いわー。山びこのように言葉にする生徒達。がりがり頭を掻いて言葉を告げていると、声が掛かった。
「渦巻先生」
『は・・・奈良さん?』
声がした方へ顔を向けると私服姿の奈良がいた。
「暑い中お疲れさん。はい、アイス」
『ちょっ、奈良さん何考えて・・・んだはっ!!』
「「「ありがとうございますっ!!」」」
ナルトを押しのけて生徒達は奈良に頭を下げる。
『極端すぎるだろーがああっ!!』
奈良からアイスが入った袋を受け取ってガサガサ漁る生徒にが鳴った。
「「「だって正直が一番だからっ!!」」」
『はもるな馬鹿たれどもっ!!』
「・・・っ、はははははっ!」
奈良は腹を押さえて笑った。
『すみません奈良さん・・・』
「いいんですよ、頑張ってましたしね。」
目を細めて笑う奈良を見て、ナルトの胸はとくりと打つ。
「なるセンセ!あーん!」
『あ?さんきゅう・・・』
そう言ってナルトはチョコアイスを食べた。
口許に付いたバニラを舌先を出して舐め取ると、生徒達は俺も俺も、とアイスを突き付けてきた。
『いや、そんなにいらねえ・・・』
「渦巻さん生徒に人気なんですね」
『・・・先生と思われてないですから』
苦笑を浮かべて返すと、奈良はくすりと笑う。
「さっきクラマ連れて来たんですけど、ばてちゃって家に居るんです。」
その時にアイスを買った。と言われてナルトはまた彼にお礼を告げた。
『あ、立花、それ食ったらテーピング外して洗えよ?』
「はーい!でも捻ったからそのまんまでもいー?」
『ダメに決まってんだろっ!』
馬鹿たれ!怒鳴りながらナルトは立花の足を持って靴を脱がせる。
けらけら笑いながらふざける立花に、ナルトは一発頭を叩く。
『次言ったら剥がす時にすね毛が脱毛するぐらい巻きつけるぞ・・・』
「おれ黙るー」
ツルツルにしてもらえ!ツルコになっちまえよ!ナルせんせサドだ、サド!!
からかう生徒にナルトはにっこりと笑みを浮かべる。
『お前たち、次怪我したら傷口抉ってやるからな』
「「「・・・すみませんでした!!」」」
顔を青ざめて謝罪する生徒達。
奈良は更にクスクス笑うと、どこからか視線を感じて流し見る。
「――・・・。」
奈良は俯いて、ふっ、と鼻で笑い口許が歪んだ。
「渦巻さん、この後なにか片付けあるんですか?」
『はい、これを保健室に戻したら終わりです。』
「手伝いますよ」
『いやいや、先生は病院大丈夫なんですか?』
今日は土曜日。忙しいであろう彼が此処にいていいのかナルトは戸惑う。
「ああ、今日はもとから休みだから大丈夫ですよ。」
だから手伝いますよ。ナルトの肩に手を置いて笑みを浮かべる奈良に、ナルトはそれ以上なにも言えなかった。
「・・・あまーいっ!」
「あっまーいっ!」
生徒達からの言葉に、ナルトは首を傾げる。
『甘くないアイスなんて無いだろ?』
なに言ってんだよ。ナルトの返答に生徒達の目が点になる。
(この人、なんでこんなに可愛いんだろう)
ナルトは親しみやすくて男気あるが、ふとした動作が可愛らしい。
アイスを食べ終わると生徒達は片付けを始めて終わればぞろぞろと校門を後にした。
奈良は電話が入ったとナルトと別れて外で話をしていた時、保健室から人影が見えて視線を向ける。
ナルトは持ち出したモノを棚に仕舞っていると、ドアが開いてそのまま言葉にした。
『今度は何処で騒いで怪我したんだ・・・よ?』
振り向きざまに告げると、ナルトは生徒じゃなかったことに目を丸くする。
『・・・帰ったんじゃなかったんですか?』
「いや、コレ借りたままだったからな」
先ほど貸した小さな冷却スプレーを受け取り、棚にしまった。
『あの子、痛がってませんでした?』
「ああ、それよりあんたアイツと知り合いだったんだな」
『・・・あいつ?』
誰の事を言っているんだろうか。団扇を眺めながら考えていれば、彼が近づいてくる。
「――・・・奈良シカマル」
『奈良先生?』
フルネームを告げた団扇に、ナルトは二人が知り合いだったのだろうかと考えた。
『今奈良先生にお世話になってるんですよ。』
「あいつの世話・・・?」
ピクリと眉根がより、空気が変わったのにナルトは気付いて更に不思議がる。
『はい。今週からお世話になっているんですよ。それで今日買い物の予定だったのに代役頼まれちゃって・・・うわっ!』
ぐん、とナルトの腕が引かされて前のめりになってしまう。何が何だか分からないナルトは疑問符ばかりが頭の中で浮かんでしまう。
「お前あいつがどんな奴か知ってんのか」
『優しくて真面目な人じゃないですか。疲れてるのに俺が会えるようにって持ち帰ってくれてるんです。』
ぎりっ、とにぎる腕に力が込められてナルトは痛みで眉根が寄った。
「だからお前は・・・っ」
『なんですか!俺がなんだっていうんです!?』
また馬鹿だと言いたいだけだろ。
腕を振りほどいてナルトはそこを摩った。
「いいか、奈良シカマルってのは・・・」
「暫く会ってねえと俺の職業まで忘れんのか?」
ドアの前に奈良の姿があって、団扇はぎりっ、と彼を睨む。
「お前、どんだけ被ってんだ?」
「なにも。サスケは疑い深いだけだ。だからカカシに言われんだろうが・・・」
呆れ声で返すと、団扇は奈良を睨みつける。
「あいつは関係ないだろ。」
「そうかねえ・・・」
『あ、お茶飲みます?』
空気を変えようとした言葉がなんとありふれたもので、ナルトは口許が引き攣りそうになる。
「だからお前は・・・っ」
「そうですね、渦巻さんこれから買に行くんですか?」
『はい、帰ってから着替えて車で行こうと思ってます』
団扇は呆れて額に手を付けて項垂れる。
奈良が猫を被っているのを知っているからこそ、彼は溜息しか出てこない。
「面倒くせえ、おれはもう帰る」
『飲んでいかないんですか?』
いらん!それだけ言って団扇は保健室を後にした。
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