NARUTO
五
土曜日、晴天の中ナルトはジャージ姿で救急箱を持ってグラウンドへと来ていた。
他校の生徒もきて、反対側のベンチでストレッチや用意をしているのが見える。
ナルトはそこに団扇の姿がなく、少し安堵した。
「渦巻センセ―だー!!」
『うおおいっ!』
どすこーい!背中に負ぶさる生徒に、ナルトは前かがみになって落ちないように足を持った。
「怪我しても直ぐ出れんじゃーん!」
『出れる訳ねーだろ!』
降りやがれ!怒鳴るナルトに生徒達は集まりケラケラ笑う。
『ほら、お前たちも用意だの準備運動とかしとけよ』
生徒が背中から降りると生徒達は返事をして用意を始める。ナルトはその間に犬塚が残したメモを読む。
『・・・なにがお土産は饅頭だ』
馬鹿か。食うけど。
ナルトはベンチに座って空を見上げると、雲のない綺麗な青空が広がっていて、目を細める。
視界の端が薄暗くなって、生徒だと思って顔を向ければ直ぐに眉間の皺が少しだけ寄った。
『・・・おはようございます』
「犬塚の代わり、勤まるのか」
低く透き通る声が耳に届いた。
ナルトが見上げた男は対戦相手の監督である、団扇サスケ。
いつもナルトを見下ろす彼は言葉が何時もツンツンしていて、ナルトはそれが気に入らない。
見た目がいいと、こうも高圧的なのか、とナルトは思う。いや、馬鹿にされているのだろう。
『さあ、俺はただここにいて眺めてるだけですから。』
「随分軽い代理だな。」
指示なんてしない。ただ言葉をかけるだけ。
『いーんですよ・・・あ?』
ナルトは生徒に視線を向けると立ち上がった。
『立花あっ!』
いきなり大きな声で生徒の名前を読んだナルトはそのまま走り出し、驚いている生徒を担ぎ上げる。
「いやーっ!なるセンセ、いやあんっ!」
『うるっせえな!てめえ馬鹿だろ、底なしの馬鹿だろ!!』
「やーだー、俺馬鹿だけど傷つくーっ!」
ナルトはずんずんとベンチまで担ぎながら歩くと団扇はもう自分のベンチに戻っていて、生徒を座らせて爪先で相手の足首を軽く突く。
「ちょっとーなーにす・・・いでええっ!」
『そんなんで試合出れるとおもうな、なんだその変なテーピングは。』
靴下を脱がせナルトは手加減せずにビリビリとテーピングを剥がしていく。
「いてーいてーっ!まじイテーッ!!」
涙目になりながら立花は足を動かそうとすれば、それよりも強い力で抑えつけられる。
『黙ってろ。試合に出たきゃ、黙れ。』
いつもと違う声に立花は目を丸くして、黙り込む。
『・・・こんなド下手糞なのしてたら却って痛めるだろうが!』
ナルトは救急箱からテーピングを取り出す。
立花は捻挫予防としてテーピングをしていたが、あまりにも違和感があってみてみれば、やはりな結果にナルトは頭を叩く。
「下手って言うなー・・・俺傷付くじゃん。」
『だったら上手くなれ。そんで他の奴にも出来るようになれ。』
巻いて行くと立花は小さな声で頷いた。
『間違いなくマーク付くだろうから気を付けろよ?』
「大丈夫だって!捻挫してないんだから!」
『だから相手が思い込んで狙ってくるって言ってんだ、馬鹿たれがっ!』
そーでしたー、とゲラゲラ笑う立花に、ナルトは盛大な溜息を吐き出した。
ほんと、サッカー馬鹿だよな、こいつ。
性格は見ての通りで、親しまれやすい。
試合が近づくと、他校の生徒やその知り合いがスタンドに集まり始めてくるなかで、サングラスを掛けた奈良の姿もあって、視線が集まっていた
『お前ら、練習試合でも本気でい・・・げほっ!』
「なるセンセ買ったらジュース買ってー!!」
隣に立っていた生徒に抱きつかれてナルトは言葉が止り、咳が出てしまうが周りは言葉に乗っかってジュースジュース!と悪乗りする。
『だーもー!ジュースじゃなくて棒アイスぐらい買ってやんよっ!』
「「「いえええええっ!!」」」
アイス。それだけで無駄に盛り上がる生徒達。
声が届いていない対戦相手からすれば、気合が入っている。としか思えない。
観戦にきた者たちは、何だか楽しそうだと話したり、ナルトの外見を言っていた。
「まじナルせんせ顧問にほし―し!」
「むりむり。あの人手当で毎日引っ張りだこじゃん。」
「つーか保健室毎日にぎわい過ぎ!」
間違いない!と生徒達はげらげら笑って話した。
それを聞いていた奈良は、随分生徒達に好かれているんだな、とナルトの新たな一面を知る。
ピッチに入ってホイッスルが鳴って試合が始まった。
応援する声はいつ聞いても良いものだと思う反面、出会い探しでもあるんだよな、と実感する。
『おーおー、走りまわってるねえ・・・』
キバのやつ、本当に良く教えてるよな。
けれど相手の生徒も団扇の教え方がいいのかきっちりポイントを押さえて、隙を狙って走り抜けていく。
ナルトは生徒を見ながらノートに書いて行き、相手の動きも正確に書いていく。
互いに点を入れさせない攻防戦が続いていく中で、相手の生徒がスライディングをしたが、そのままゴールポストにぶつかった。
『・・・いったな。』
脛は痛いんだよな。
当たりが悪い場合は出血が出たりもする。特に顔がぶつかったのが瞼なら、切れやすい。
生徒の交代が入ると、団扇はその生徒とともにナルトの方へ来た。
「悪いが手当をしてくれ」
『見事にぶつかったな。』
ベンチに座ると、脛から血が出ていた。
手当てをすると、ナルトはそのまま生徒の腕を掴んだ。
「・・・なんですか?」
『そこも痛めてんだろ』
「べつにこれぐらい平気です」
ツンツンとした態度は誰かさんを連想させ、ナルトの目がすっ、と細まる。
『ま、別にいいけど。俺の生徒じゃないから無理やり触ると面倒だし。』
ひらひらと手を振って行け、と言う動作をすればその生徒は立ち上がる。
「悪かったな」
『はいはい、痛がってたらコレやっといて』
小さな冷却スプレーを団扇に渡した。
自分の生徒なら無理やり剥いていただろう。
ナルトはそのまま試合を眺めた。
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