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NARUTO
四 

クラマの鳴き声が聞こえてナルトの意識が浮上した。

奈良の腕に抱かれてナルトをみるクラマに、顔が緩む。

「もってて下さい」

『クラマー・・・ただいまー』

うちゅう、と頬にキスをするナルト。奈良はキッチンに向かってミルクを作り始める。

足を動かしてナルトの頬に触れるクラマに、ナルトはもうデレデレ顔。

『そうだった!クラマ写真!俺もう足りなくて仕事になんなかったんだよ!』

携帯を取り出してナルトが構える。クラマは見慣れないそれに興味があるのか、前足でチョンチョン触れてくる。

『かわいい・・・めっちゃ可愛いっ!』

寝転がって下から写真を撮ったり、正面から取ったりと、ナルトの背後にはハートマークが飛び出しているような錯覚になる。

『婿になんて行かなくていいからな、どこぞの知らない女に引っかかっても困るんだからな?孕ませることすんなよ・・・って、なに笑ってんですか?』

「いや・・・さすがに笑うんじゃないのか・・・っ」

親馬鹿すぎて。

そしてナルトの格好が奈良にはおかしかった。

冷めたミルクを持って奈良はナルトの方へいくと、徐に腕を伸ばす。

「渦巻さん、腹冷えますよ」

『うひょうっ!』

脇腹を突かれて間抜けな声が零れた。

ナルトはそこを抑えて振り向くと、ミルクを持ってしゃがんでいる奈良と視線が合う。

『・・・脇腹は駄目です。』

「ああ、弱いんですね。」

にっこりと笑みを浮かべて、奈良はまたそこを突っついた。

『うひゃひゃっ!ほんとにダメですってば』

「面白い声出すからですよ。」

はい、ミルク。手渡されて体勢を直すと、分かっているクラマはミーミー鳴き始める。

早く寄越せ、と前足でナルトの頭をタシタシ叩くクラマ。食に忠実なのは悪いことでは無い。


こんなやり取りを始めて数日が過ぎた頃。

ナルトはやっとくる土曜日が待ち遠しくてたまらなかった。

普段使わない車を出して、クラマの物を買いに行ける楽しみがあったから。




それなのに



『・・・は?』

「ほんとわりい!ナルトどうにかなんねえか?」

ぱん、と両手を合わせてナルトに頼み込む男。

『いや、無理ですよ。俺もう予定が入ってますから。』

誰がするかってんだ!

冗談じゃない!

その日はクラマの物を買うと言う大事な使命があるのだから。

「お前以外いないんだよ、頼むっ!」

たかがサッカーの練習試合に目の前の友人兼教師が法事で出れなくて、それが無しになろうが・・・。

『・・・わーったよ。でればいーんだろ、出れば』

生徒に罪は無い。

ナルトは諦めの声を含ませながら言葉にすれば、強い力で身体が引っ張られる。

「まじで助かった!本当にサンキュー!!」

ぎゅーっ、とナルトを抱きしめるが、人目を気にしてもらいたい。

『ちょっ、ぐる、ぐるじ・・・っ』

細いナルトをすっぽり包み込む相手に、ナルトは爪先を踏みつける。

「あいつらも喜ぶ!これで心起きなく法事に行けるってもんだ!!」

『あんたが予定確認しないからだろうがっ!!』

ばっ、と離れて文句を告げるナルト。

「だってナルト予定無いだろ?」

『あるわ馬鹿キバッ!!だれのせいでおれの大事な・・・あーもーっ!!』

やりようのない気持ちがナルトの声を荒げさせ頭を抱える。

『・・・しかもあいついんし』

「まあ、あまり感情的になんな」

『お前がいうなってばよっ!』

対戦相手のチームのコーチには会えばいつも言い合いがおこる。

馬鹿にした態度が気に入らなくて、ナルトは近付きたくなかった。


暗い空気を醸し出したまま奈良のマンションに向かうと、奈良の纏う空気も重く感じた。

『奈良先生、大丈夫ですか?』

「・・・なにがです?」

『俺が預かって貰ってるから、先生眠れてないですよね・・・』

申し訳なくてナルトは目を伏した。

「寝れてますよ、クラマも起きませんし。」

『・・・でも!』

「それより今日は随分暗いですね」

『・・・そう見えます?』

やっぱり顔に出てしまっていたんだな。

いや、楽しみを奪われてしまったこの気持ち、どうしてくれようか。

『土曜日、楽しみにしてたのに・・・』

どれだけこの日を楽しみにしていただろうか。

「もしかして、デートですか?」

『ちがいますー。クラマの物買うって、先生だって知っててそう言うんですか!?』

酷いです!と頬を軽く膨らまして不貞腐れるナルトに、奈良は軽く笑ってそれを指で突っつく。

「何か予定でも入ったんですか?」

『・・・サッカー部の監督の代役です。』

ナルトはクラマを抱き上げて、お腹に顔を擦り付ける。

『なのに相手は団扇のいる高校だし・・・』

「団扇・・・?」

『あー・・・そこの高校教師です。』

がくりと肩を落としていてナルトは気付いていなかった。

奈良が口許に手を当てていたのを。

「渦巻さんの高校でやるんですか?」

『はい。九時から開始なので・・・気が重いです』

「仲、良くないんですか?」

嫌がるナルトに尤もな事を尋ねる奈良だが、ナルトは溜息を吐いた。

『なんかこう・・・見下したような言い方とか、馬鹿にしたように言うとか』

「・・・誰にでも?」

『いや、俺にだけなんですよね。』

この外見だからでしょうね。

金髪に碧眼、そして持ち前の明るさが馬鹿っぽく見えるのだろう。

クラマの頭を撫でながら考えると、奈良は鼻を鳴らす。

「明日、クラマと散歩しようと思ってたんで、観に行きますよ」

『え・・・それダメですよ。奈良先生女子に囲まれちゃう!』

ああ。クラマもだった!と頭を抱えるナルト。

「それならサングラスかければ近寄ってきませんから。」

『・・・そういう問題ですか?』

そういうもんです。とにっりと笑った。

ナルトは奈良の纏う空気が何時も道理になっている事に気付いてほっとする。

『でも、俺癒されちゃいますね』

ふにゃり、と笑みを浮かべると、奈良の手が頭に伸びて撫でられる。

『・・・ほ?』

「渦巻さんの髪の毛って、クラマと同じで柔らかいですね」

さわさわ撫でる奈良の手。それだけでナルトの胸がドキドキしてしまって、頬に熱がいくのがわかる。

『くすぐったいからダメです!』

ぺしぺし、と奈良の手を軽く叩いてやった。


本当は、頬に集中してきた熱を誤魔化したかったから。



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あきゅろす。
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