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NARUTO
三 

ナルトは学校に向かい白衣を着て椅子に腰かける。

頭の中を占めるのはクラマの事ばかりで、溜息が何度も零れる。

酷い骨折では無かったにしろ、きっと歩いたり走ったりしたいんだろうな。

『・・・だめだ』

集中出来ない。

今日様子を見にいった時、もっと写真を撮ろう。そうでないと気持ちが落ち着かない。

ナルトはパソコンで保健便りを制作しながら、つまずけばクラマの事ばかりを考えていた。

そして授業が始まり、体育の授業になれば怪我をした生徒の手当てをしたり、体調が悪くなった生徒の面倒を見始める。

「せんせー、膝ガッツリやっちまったー!」

いてー!と言いながら引きずる足を見て、ナルトは肩を持って椅子に座らせる。

『お前なにでこうなったんだ?』

「サッカーで見事なスライディングしたらさ、ゴールポストに激突した!」


『・・・でこうなるもんか?』

なった!誇らしげに言うな、とナルトは生徒の頭を軽く叩いて、手当てを始める。

その時、窓から顔を出して声をかける生徒。

「ナルちゃんセンセ!指バッサリ切った!」

『ハンカチできつく巻いて心臓より上にあげてろ!』

指示をしてナルトは包帯を足に巻いて行き、終わると外で待っている生徒の傷口をみて直ぐに担任に連絡をした。

『三浦、おまえ病院で縫合してもらえ』

「まじ!?チョー嫌なんだけどー!!」

いやだいやだと足踏みをしている生徒の頭を叩いて、ナルトは必要な事を紙に書いていく。

直ぐに担任がきて説明をすると、近くの病院へと向かっていった。

午前中だけで随分と生徒が来たもんだ。

男子校で、やんちゃな分仕方がないとして、もう少し落ち着けよ、と言いたいのに言えないのは、ナルトも高校時代は随分やんちゃをしていたから。

窓から逃げ出すなんて日常で、渡り廊下の屋根の上を奔ったり、木登りをして昼寝をしたり。

フェンスを飛び越えてコンビニに行って怒られたりもしたが、今となっては笑えてしまう思い出ばかり。


『・・・さすがに窓から脱走する奴はいないか。』

身軽でないと出来ない。

ナルトは平気で二階から飛び降りる癖があり、平然と歩いたり走ったりするのだから、近所では有名な話だった。

放課後になると、今度は部活の生徒が怪我をして保健室にやってくる。

どうしてこうも毎日怪我をするのか不思議だが、今日は早く帰れる事が嬉しかった。

帰りの支度をしていると、携帯が震えて画面を見れば知らない番号。

『・・・誰だってよ』

また知り合いが携帯でも壊したのか換えたのか。

『もしもし?』

「渦巻さんですか?」

耳に届いたのは奈良の声。

『え?奈良先生?!』

クラマに何かあったのだろうか。

不安で胸に手を当てて返答を待つと、奈良はくすくす笑う。

「実はクラマを俺の自宅に持って来ちゃって。様子を見るなら病院ではなく俺のマンションに来てください。」

『あの・・・容体が急変したんですか?』

「いいえ、ただクラマに懐かれちゃって、離れると鳴くんです。」

なんて小悪魔ちゃんなんだ。

ナルトはすみません、と小さな声で謝ると奈良の住所をメモした。

ナルトは手土産を持ってメモを見ながら住所を探すと、ピタリと足が止まる。

『・・・このマンションか。』

時々この辺りで見かける人がいたな。

スタイルがいいのに猫背な人。

ナルトは奈良の姿がその人と少し似ているんだよな、と考えながら中に入ってドアの前にある機械で奈良の部屋の番号をおした。

「クラマ寝てるからそのまま入ってきてください」

『はい。』

そのままエレベーターに乗って15階に辿り着く。

あまり部屋数が少ないのか、広々とした廊下を歩いて奥のドアの前で止まった。

寝ているクラマを起こさないように、ナルトはゆっくりとドアノブを握り、静かに開いた。

『失礼しまーす・・・』

「礼儀正しい泥棒みたいですね。」

『・・・っ!!』

びくん!と身体が震えてドアに額をぶつけてしまった。

声を殺して笑う奈良の声が耳に届いて、ナルトは恥ずかしくなって頬に熱が集まる。

「・・・っ、大丈夫ですか?」

『穴、どこかにありませんか・・・?』

恥かしくて顔が上げる事が出来ない。

痛む額を撫でていると、奈良が上がってください、と声が頭上から届く。

『・・・お邪魔します。』

下がっている頭を更に下げ、靴を脱いで上がったナルトは、奈良の方を向いて手土産を渡す。

『すみません、好みが分からなかったので、ビールと珈琲を買ってみました。』

「気を遣わなくて良かったのに。どちらも好きなのでありがたいです、ありがとうございます。」

ビールの好みが分かれば尚更良かったのだが。

リビングに通されると、一面に広がる大きな窓。

そこにはカーテンがされていなくて外の景色が見える。天井は高く、一部吹き抜けになっているそこに螺旋階段があるから。

天井の低い部分にはソファーとテーブルがあり、そこから見る景色は気持ちが良いだろう。

お洒落としか言いようがなく、ナルトは外の景色をみつめていた。

「・・・渦巻さん?」

『あ・・・はい。』

どうしました?

首を傾げる奈良に、ナルトは苦笑を浮かべて頭をかいた。

『いや、景色がきれいだなって。俺はテラスハウスだからこういう景色は見れなくて。』

「座っててください、きっともう少しでクラマが起きる頃ですから。」

腹空かせて。と付け足すと、ナルトはくすくす笑う。

『面倒かけてしまって申し訳ないです』

「好きでしてますから。やっぱり動けないのが辛いんでしょうね、しきりに足動かしてました。」

『・・・早く治ってくれればいいな』

そうしたら首輪を付けて、庭で遊ばせてあげられる。

「お疲れ様です」

『え・・・あ、ありがとうございます』

ビールを貰ったナルトは受け取ると、数口飲んだ。

『先生の家と俺の家って近かったんですね』

「そうなんですね、昨日みてびっくりしましたよ。」

奈良もビールを飲んんで笑う。

ナルトは奈良の姿をみて思い出す。

『・・・じゃあ時々すれ違ってたのって、案外先生だったのかもしれましんね』

「そうかもしれませんね、俺も渦巻さんに見覚えありますから。」

ナルトは猫背、奈良は金髪碧眼

互いに見かけたことがあって、話がすすんでいくと、どこからかクラマの鳴き声が聞こえてきた。

「起きたみたいですね」

連れてきます。奈良はリビングから出て部屋に向かうと、ナルトは外を眺めようと窓の方に移動する。

きらきら輝くネオンと信号。それに車のテールランプが動く度にゆらゆら揺れる。

住んでいる階が違うと、見える景色はもっと違うだろう。けれどあまり高い所に住むと揺れている感じがすると聞いた事があった。

この広い部屋で一人で住んでいるのだろうか。

ナルトからみた奈良は何処にいても女が放っておかないだろう。

スッキリとした切れ長な目許は涼しげで、鼻筋の通って鼻梁も、形のいい厚みのない唇。

全てが整っている、と。

『・・・そうか』

そうだったのか。

ナルトは自分の胸に手を当てて俯く。

俺はそんな人を好きになっていたんだ、と。

時々通り過ぎる人にナルトは淡い恋心を持っていた。

名前なんて知らない、姿なんてあまり見た事が無いそんな人を、ナルトは好いてしまった。

よく街の中であるいていると、好みの誰かが通り過ぎて振り向く。

その延長線見たなもので、すぐに収まると思っていたのに、ナルトの読みは外れてしまい、まさか知り合うとは思いもよらず、まさか同性にそうなってしまうとは思いもよらなかった。





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あきゅろす。
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