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NARUTO
二 

ナルトは一度帰宅して、簡単にシャワーを浴びて急いでもどって来た。

ふるふる身体を震わせ、痛い手足を動かして必死に何かを伝えようとしているようで、ナルトは両腿の上に乗せる。

『どうした?身体痛いんだから無理すんな』

みゃー、と可愛く鳴かれ、ナルトの顔はだらしなく崩れる。

助かった命。この手で大切に育てて幸せにしよう。

ナルトは決意を新たに名前を考えていたら、ノックの音がしてドアが開く。

「渦巻さん、子猫のミルクあげてみます?」

『やりたいです!』

奈良はナルトの隣に腰かけて、哺乳瓶をナルトに持たせると手が重なった。

「あまり高いと出過ぎたり、出にくかったりするのでこのぐらいであげて下さい。」

『おー・・・俺母親気分です!』

小さな口でミルクを飲む子猫に、ナルトは携帯を持ち、片手で写真を撮り始める。

「そう言えば渦巻さん、自宅の番号が携帯でしたけど一人暮らしですか?」

『はい。近くのテラスハウスに住んでるんです。』

「この近くなら・・・あそこって賃貸でしたよね?」

動物大丈夫ですか?奈良の問い掛けにナルトは頷く。


『はい。俺のは持ち家なので動物大丈夫なんです。』

そこの土地を持っていた祖父が一つだけ個人用に作ったのがナルトの家。

隣りと離れていて、他とは広さも差がある。一人暮らしにしては贅沢な家。

『明日買い物して住みやすくしてやるからなー』

お腹いっぱいになったお腹は丸く膨れていて可愛らしい。

「渦巻さん明日は仕事ですか?」

『・・・休みたい。ほんっとに休みたいです』

ナルトの仕事は男子校の保健医。

やんちゃな生徒の悩みや怪我や看病を毎日しているが、どうして毎日訪れる生徒が多いのだろうかと、良く考えてしまう。

「今は入院ですけど、当分の間は骨折も治りませんから、心配なら仕事が終わるまでの間預かり出来ますよ?」

『預かって下さい!』

すぐさま返答をすれば、奈良はくすりと笑って頷いた。

「この猫は、渦巻さんに拾われて幸せですね」

『幸せにします。箱入り息子のように』

腿の上で気持ち良さそうに眠る子猫の背中を撫でながら、ナルトは瞳を細める。

『運命だと思うんです。もしあのままだったら、他の車に命を奪われていたかも知れませんし、出会えて良かった。』

「見過ごす人だっていますよ。他には持ってきて里親探しをしてくれたり、人それぞれですが」

先の事なんてナルトは考えてもいなかった。

ただ病院に連れて行かないとダメだと。

後の事はそれが終わってからでも良かったのに、ナルトは直ぐに面倒を見ると言ってしまった。

自分じゃないとダメなような気がして。

『あ・・・そうか、猫って何が必要か調べてからじゃないと意味ないか』

ぽつり、と呟いたナルトの言葉に、奈良はメガネを外す。

「待合室の本棚に本があるから見てみたら?」

『はい、退院する前に揃えて置きます。』

何があるんだろう。

ナルトは家で動物を飼った事が無くて、楽しみだった。

子猫が眠ってから、ナルトは奈良に教えてもらった本を手に取って読み始めると、様々なものがあって正直迷いが生まれる。

『・・・缶詰だけでこんなにあんの?』

栄養はもちろんだが、毛並が良くなるとなればこっち。けれどキャットフードも同じようにあってぐるぐる回る。

『トイレの砂は流せるのがいいよな・・・』

トイレに流せる砂を見てメモをしていくと、次のページは猫のベッドがあってまた迷う。

一人うんうん悩んでいると、結構時間が経っていたのか、奈良に声を掛けられた。

「渦巻さん、ミルクの時間ですよ。」

『・・・あ。』

忘れてた。ナルトは本を閉じて立ち上がると、ずっと座りっぱなしだったせいで脚がもつれる。

『うおっ!や・・・ん?』

壁にぶつかると感じたが、その衝動は来なくて、奈良に支えられていた。

『・・・すみません』

「渦巻さん、軽いですね。」

『そ・・・ですか?』

昔から軽いと言われてきたナルトは、未だに自分が軽いとは思えない。

病室に戻ると、気配を感じた子猫はミーミー鳴いてナルトの方へ行こうと身体を動かす。

『そう言えば、奈良先生は当直なんですか?』

「たまにやらないと怒られるんですよ。」

苦笑を浮かべながら返答して、ナルトにミルクを渡した。

「名前、決まりましたか?」

『いやー・・・さっぱりです。』

ミルクを与えながらそう返したが、名前よりもグッズに目がいってしまっていたナルト。

早く決めてあげないとな。

ナルトは子猫に柔らかな笑みを浮かべながら頭の中でそう呟いた。



※※※※※※※※※※


朝になるとミルクをあげて、ナルトは出勤の時間になり、離れなければならない。

それが後ろ髪を引かれる思いで、離れたくなくて動けないでいた。

「渦巻さん遅刻しますよ。」

『分かってはいるんですけど・・・っ』

奈良の腕の中にいる子猫を見詰めて、ナルトの頭はがくりと下がる。

『早く帰れないのが辛い・・・』

「はいはい、急がないと本当に遅刻ですよ。」

『じゃあ宜しくお願いします。いい子でいるんだぞ、クラマ。』

ちゅ、と子猫の、クラマの額にキスをした。

「クラマになったんですね。」

『はい、男の子だから。』

頭を撫でて、ナルトは高校へと向かった。

「・・・さてと」

奈良はナルトが行くのを確認すると、白衣姿のまま外を歩いた。


「あー・・・ちと、ねみぃな。」

ゴロゴロ喉を鳴らすクラマ。奈良は額を指の腹で撫でながらマンションの中へと入って行った。

当直なんてしたことが無い。

預かった動物を連れ出した事も無い。


「クラマ、帰ってくるまで此処な。」

枕の隣にタオルを敷いてクラマを置くと、直ぐに丸まった。

子猫は睡眠が一番。

休日の奈良も、昼寝が一番。

一人と一匹は、朝から仲良く眠った。


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