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NARUTO
40000hit リクエスト  現シカナル 獣医

夕方に見かける人がいる。

いつもスタイルが良いのに、背中を猫背にして気だるげに歩く人。

時々すれ違うから、きっと近所の人なんだろうと、この時は思ってた。


今日は朝から雨が降って気分も身体も重たい。

毎年のことながら、梅雨の季節は憂鬱な気持ちになってしまう。

『・・・はあ。』

溜息を吐きながら傘を差して仕事から帰宅途中の渦巻ナルトは、買い物をする気にもなれず、重たい足取りだった。

目の前から車がきて、濡れないよう端に寄った時、どん、と何かがぶつかった音がした。

『・・・人なんていたか?』

ナルトは音の方を見ようとすれば、車は通りすぎ道路に横たわる何かが目に留まる。

『・・・まさかよ』

ナルトは持っていた傘を放り投げて走り寄ると、ぐったりと横たわる子猫の姿。

『動物だろうとひき逃げはひき逃げじゃん・・・』

ふつふつと怒りが込み上げてくるが、もう相手は居ない。

ナルトは着ていた上着を脱いで子猫を包んだ。

『助けてやるからな、だから生きろ、絶対に!』

近くに動物病院があったよな。

ナルトは急いでそこに向かった。


奈良動物病院。

ナルトはその病院のドアを開けた。

『すみません、子猫が今車に轢かれたんです!』

獣医助手の言葉より先にナルトが告げると、すぐさま助手が中へと消えて行った。

ナルトは自分がずぶ濡れな事を気にすること無く、バッグの中からタオルを取り出して濡れたままでは体温が下がるだろうと、子猫をそれに包んだ。

『大丈夫だからな・・・がんばれ』

何処を痛めたのかナルトには分からないが、小さな呼吸が不安でたまらない。

「今轢かれたんですか?」

中から出てきたのは白衣を纏った、すらりとした男性。

一つ一つのパーツに無駄が無く、整っていて切れ長の瞳が印象的だった。

「そうなんです!あの・・・飼い猫じゃないけど、俺面倒見ますから!」

お願いします!ナルトは頭を下げて言葉にすると、肩をぽん、と叩かれた。

「今から診察しますので、タオルで拭いて待ってて下さい。」

『宜しくお願いします!』

子猫を渡してタオルを助手から受け取ると、ナルトはへなへなと力が抜けてしゃがんでしまう。

『・・・がんばれ』

頑張ったら、家族になろう。

そう願いながら、ナルトは借りたタオルで頭を拭いていると、登録用紙を渡された。

住所と氏名等を書いて、まだ名前すら決まっていないので子猫の名前の所は空白にしたまま渡した。

気持ちが落ち着くとぐるりとまわりを見渡せば、若い女の人が多いな、と感じるナルト。

今はペットブームだからそうなんだろうけど、心無い飼い主もいるんだよな。

「渦巻さん、お入りください」

『はい』

診察室に通されると、診察台の上でぐったりしている子猫。ナルトはそこに駆け寄ると、呼吸をしている事が嬉しくて表情が緩む。

「説明しますね。」

「よろしくお願いします。」

かるく頭を下げて彼を見ると、先ほどと違って眼鏡をかけていた。

それだけでかなり印象は変わるものだとナルトは頭の中で呟くと同時に何かの違和感を感じる。

「当たり所は悪くなかったようですが、後ろ足の骨折と前足の骨折と切り傷ですね。」

『・・・頭やお腹の中とかは』

「大丈夫でしたよ。」

ナルトはその言葉に心底安心して、笑みが浮かんできた。

『・・・前から車がきたから端に寄ったとき、この子の姿なんてなかったのに。』

確かに子猫の姿はなかった。

「・・・木から落ちたか、道路に出たか、ですね。」


『でもっ、どんな姿をしていようとも命には変わりないにの、ひき逃げなんて・・・』

じわりと瞳が潤み、ナルトは俯いた。

こんな小さな身体で、痛みと戦っているだろう子猫に視線を向ける。

「対応が速かったから、体温は少し下がっていますがこのまま様子を見たいので入院になります。」

『入院、ですか。』

ナルトは子猫の頭を撫でた。

『一人で寂しくない?』

「泊まる事は可能ですよ?」

泊まります!すぐさま返事をしてナルトは気付く。

『・・・一回帰ってからにします。』

ずぶ濡れだったんだ。

『直ぐ来るからな・・・』

顎を撫でると、閉じていた瞼がゆっくりと開かれて、綺麗なオレンジ色の毛並をしていて、瞳はナルトと同じように青く、子猫は小さな声で鳴いた。

『・・・っ、かっ、かわい・・・っ』

たまらん!口許を抑えてナルトは身悶える。

『絶対嫁になんて行かせない・・・』

「あ、渦巻さん、このこ雄です。」

『お婿になんていかせるものかっ!』

既に親馬鹿になっていたナルト。





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