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NARUTO
五 *

数日が過ぎた頃には、トウシは言葉を覚えて会話が出来るようになっていた。

鹿は賢い生き物だが、人の姿になってもそれは変わらない事に、研究者達はこれからの資料として書き留めていく。


歩き方も良くなり、今では走れるほどにもなり、鹿本来の脚力は失われてはいなかった。

ナルトと共に寝起きをして、共に風呂に入って。

当然彼氏であるシカマルは面白くもなく、腹正しいものだった。

三人で入ろうとナルトなりの気遣いすらも、今のシカマルには辛かった。

自分のなのに、手を出す事ができない歯がゆさで。

『シカマルー、今日は早く終わりそう?』

背後から抱きついてくるナルト。

正直な気持ちで言えば、嬉しい。可愛い。

「ああ、トウシはどうした?」

『いまシカクさんと一緒に居るから抜け出してきちゃった。』

あはは、と軽い笑みを浮かべて、ナルトはそのままシカマルの頬に口付ける。

『・・・頭では分かってんだ、中身はそうでも見た目が人の姿だから』

悪い事をしているようで。

シカマルの目の前で、浮気をしているようで。

ぎゅっ、と彼の袖を掴んでナルトは肩に額を擦り付ける。

「今更だ。今更になってお前の気持ちが分かった。」

『・・・なんの?』

なんの気持ちだろう。

目の前で女と抱き合っていた時の気持ちだろうか

それとも目の前で抱き合って口づけをしていた時のことだろうか。

「あれは確かに・・・辛いよな。」

ごめんな。

シカマルはナルトの頭を撫でた。

けれど、その陰ではナルトに好意を寄せる者の始末をどれだけしてきただろうか。

顔を赤らめながらナルトに告白する場面をみて、自分の方に向くように仕向けてみたり、弄んできたか。

そう思うと、自分は随分性格の悪い、腹黒い事をして来たのだと。

気持ちが傾けば簡単に切り捨てて、近くにナルトが居ると知りながらも、利用して傷つけて来た。

どうしたらナルトが落ちて来るのか。

どうすればナルトの口から言葉が出るのか。

あの時、ナルトが遊郭遊びをしている。

あのナルトがそんな所で遊ぶ筈がない。

けれど確証できるすべが無い。だからシカマルはナルトに聞き出す事をせずに、キバ達にその話をした。

そうすれば話は広まり、サクラにまで行くと分かっていたし、聞き出そうとすることも分かっていた。

自分では動かず、周りに言えばそれが動いてくれる。

自分が聞き出すよりもスムーズにいくから。

けれど、手伝いだと分かっていても、相手は遊郭。

能天気なナルトが言葉巧みに丸め込まれ、共にしていたら。

それはそれで腹が立った。

けれどその予想は外れ、任務をしていると分かれば、シカマルは自分の所の依頼を変更した。

数日前から奈良家の鹿が殺されている。

ナルトでは無い事は分かっていても、腹の中で渦巻いているものをどうにかしたかった。

能天気だから、分からないだろう。

この腹の中で渦巻くものが、嫉妬や愛しさで混ざり合っていることなんて。

自分がこんなに夢中になるとは思ってもみなかった。

執着しているとは、思わなかった。

あんな、人を惑わせる瞳をするだなんて思わなかった。

いくら化粧をしていても、隠しきれる事が出来ないナルトの魅力や艶めいた表情が

トウシが現れるまで、気付く事が出来なかった。

競のようにあちこちから飛び交う金額。

本当に困った顔を浮かべ、涙がジワリと浮かんでいたナルト。

誰が渡すものか。

その肌に触れるのは自分。

その瞳に映されるのも自分。

乱れる姿を目に焼き付けるのも

ナルトのすべては自分のもの。

随分惚れてしまったものだと苦笑したのを覚えてる。

「・・・、足、もっと広げろ」

『や、だ・・・っ』

真昼間から二人は乱れた事をしていた。

「かえって来るぞ・・・?」

『ぅや・・・あっ、あああっ!』

ぐいっと無理やり脚を広げさせると、シカマルの踏込は深くなってナルトの奥を突いた。

トウシがきてから肌を重ねた事がなくて、お互い自然にそうなってしまったが、ナルトの頭の片隅にはやはり彼の姿が浮んでしまう。

戻ってきたらどうしよう。

その不安と、久しぶりの熱に挟まれながら、ナルトは乱れた。

シカマルからの律動に、ナルトは背中に手を回して抱きついて彼の胸の突起に吸い付いた。

「・・・っのやろ」

されっぱなしが嫌いなナルトは、いつもどこかで仕返しをしてくる。

それが予測不能で、シカマルはナルトの胸の突起を強く抓てやった。

『・・・っ、う、ああっ!』

そのままくりくりと抓り回し、引っ張る。ナルトの喉奥がジンジンとしてきて、痒い感覚が生まれてくる。

『んう・・・あっ、やだって、ば・・・っ』

「嫌じゃなくて、気持ちいいんだろ?」

好きな癖に。

耳元で囁きかけると、シカマルを飲み込むそこがきゅうっと締め付けた。


「ほんと、耳弱いのな・・・っ」

『知っててそれ、すっ、ああっ!』

知りながらもそうやって付け込んで来るから質が悪い。耳の奥にまでその響きが留まって、中を犯していくのだから。






「トウシにまで、襲われんなよ?」

『それは大丈夫だって・・・』

多分。

そう言ったナルトの声は微かに掠れながらも顔は陰った。

最近トウシはナルトの肌に触れるようになったから。

きっと見ていたのだろう。

ナルトがトウシに会いに来て、シカマルが暇だと言って背後からナルトの肌に触れていたのを良くやっていたのを見て、覚えていたのだろう。

「襲われそうになったら逃げて来いよ?」

『そんな事にならないって!』

あはは、と笑うがナルトの腹の中では不安が募る。

だって中身は鹿なんだから。

そう思う気持ちと

中身が鹿だろうとも、好いてる相手を前に手を出さないとは限らない。

シカマルの言葉がぐるぐる回って、どうすればいいのか悩んだ。

シカマルに悪い事をしていると思うし、かと言ってトウシを冷たく出来ない。


トウシは何故危険を冒してまで秘薬を飲んでしまったのだろう。


偶然だったにしろ、リスクが無い訳ではないのだから。

最悪、命を落としてしまっていたかも知れない。

そう思うと、ナルトは胸が苦しくなってしまった。




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あきゅろす。
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