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NARUTO
短い逢瀬    我ナル

何時も暗闇の中にいた気がする。

光りなんて無い、暗闇の世界で生きていくと思ってた。

生まれながらの化け物とし、砂の兵器として生き、生きる理由が分からなかった。

【・・・一人ぼっちの・・・あの苦しみはハンパじゃねーよなぁ・・・】

こいつも俺と同じ孤独を知る者

【お前の気持ちは・・・なんでかなぁ・・・痛いほど分かるんだってばよ・・・】

涙を流しながらそう言ってくれた者がいた。

同じ人柱力にしか分からない、苦しみや悲しみ、そして

――孤独を。

差し伸べられる手なんてないと思ってた。

笑顔を向けられる事なんてないと思ってた。


いつか俺も、あいつのように・・・





『がーあーらーっ!』

「・・・痛い。」

どしん、と背中に当たった。

けれど姿を見なくてもそれが誰かなんて分かってる。

『わーりいわりいっ!』

屈託のない笑顔で告げ、ナルトは背中から離れた。

『書簡持ってきたってばよ!』

「すまない、ゆっくりしていってくれ」

我愛羅に手渡すと、ナルトはジッと彼を眺める。

『なあ、我愛羅・・・疲れた顔してんよ?』

「・・・そうか」

『ちゃんと寝てんの?』

「それなりに寝ている。」

なら良いけどさ。

風影としての仕事は簡単ではない。

ナルトは綱手の仕事を手伝っているから理解していたが、若くして里の長になった重圧は、きっと今のナルトには分からない。

自分が同じ場所に立たなければ分からないし、見えなかったものが見えるようになるだろう。

我愛羅の苦しみは少しでも取れただろうか。

喜びも、苦しみも、悲しみも、分かち合う事が出来ているのだろうか。


「――疲れたか」

『・・・ん?なんかさ、やっぱ我愛羅はすげーなっ、て思っただけだってばよ!』

にしし、と笑みを向けるナルトを見て、我愛羅は持っていた筆を置いて立ち上がる。

「ナルト」

『ん?』

ちょいちょい。と手招きされて彼の方へ向かうと、すっぽりと我愛羅に包まれた。

『・・・どしたんだよ』

「疲れた。眠いたい。休みたい。」

『なになになに、愚痴ならいくらでも聞くってばよ!』

両頬に手を当てて笑うナルトだが、我愛羅は笑うナルトを見てそうだな。と返す。

「なによりも、ナルトと共に過ごせないのは、それよりも辛い事だ。」

『――・・・っ!!』

真剣な顔で告げられて、ナルトの顔は一気に真っ赤に染まる。

「・・・赤いな」

『うっ、うるせーってばよっ!』

こっちみんな!顔を隠せば頭を撫でられる。

どうしてこうも平気な顔で言えるのだろう。

こっちは恥ずかしくてたまらないと言うのに。

「見たい」

『やだってば!』

「・・・そうなのか」

身体の向きを変えたナルトに、声と裏腹に我愛羅は微笑を浮かべる。

「そうか、ナルトは嬉しくなかったんだな・・・」

悲しみを含ませた我愛羅の声に、ナルトは思わず顔をあげた。

『違う!そうじゃねー・・・むっ!』

見計らったかのように我愛羅は口付ける。

「・・・これも、嫌か?」

『んの・・・っ』

首を傾げる我愛羅。ナルトは恥ずかしさで耳の裏まで赤くなりながら、悔しく感じた。

自分だけがこんなに赤くなる事が解せなくて、我愛羅の胸倉を掴む。

『嫌な訳あるか、バーカ・・・』

「――・・・。」

重なった唇は何度も啄み、ナルトの腰に手が回った。

『・・・早く終わらせて、一緒にいよう』

「――・・・ああ。」

友として、恋人として、短い逢瀬を共に。




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あきゅろす。
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