NARUTO
六
奈良が戻るとナルトに声を掛けた。
「速水さん、最中喜んでたぞ」
『それは良かったです』
ほっとして表情が緩むと、奈良は言葉を続ける。
「また将棋をしたいそうだ、相手してやってくれ」
『はい、喜んで。』
奈良の方が断然強くてナルトも速水も負けっぱなしなのだ。
だから速水と二人でペアになって奈良を負かそうとしたが、返り討ちにされた記憶はまだ新しい。
『そう言えば社長、電話のほうですが、来ませんでした。』
「そうか、わかった」
鳴る事はなく、ナルトは首を傾げて社長室に戻る奈良の背中を見つめた。
パソコンを開くとメールが来ていて、葉山が資料室で探してるものが見つからないと書かれていてナルトは奈良に告げてそこへと向かった。
きっとまた頼まれたのだろう。ナルトは痛みを堪えながら中に入っていったが、誰もいなかった。
『・・・葉山さん?』
返答は無く、代わりにガチャリと鍵が閉まってしまいナルトは愕然とする。
『・・・ここまでするかー?』
がちゃがちゃドアノブを動かすがびくともしない。
それに意識を向けていたナルトは背後から忍び寄る人影に気付かなかった。
『・・・んうっ!』
「静かにしないとダメだよ・・・渦巻君」
その声は専務のそれで、ナルトは一気に具合が悪くなり、寒気が走った。
「どうせ退社処分になるんだ、思い出が欲しいじゃないか・・・」
荒い鼻息が耳にかかって気持ちが悪く、ナルトはヒールで爪先を踏もうと利き足を動かしたが、それが捻った足だった為に痛みがはしる。
『・・・っ!』
「今日は可愛いスカートだね、この下はどうなってるのかな?」
太腿をなぞりながらスカートの中に手が入り込み、ナルトは焦る。
もし触れられてもしたらたまったもんじゃない。
身体を動かして離れたいが、痛みで思うように動けない。
「ん?渦巻君は思ったよりも胸が小さいんだねえ・・・」
シャツの上からナルトの胸をさわるが、生憎ナルトはBカップブラジャーにパットを入れているだけで、感触は無いが、気分が悪くなる。
『ほんっと・・・やだって、ば・・・っ』
腰に回っている腕を取ろうと力を込める。
早く何とかしなければ正体が危うくなる。
けれど出入りするドアは鍵が閉まっていてどうする事も出来ない。
「鍵はしまってるんだ、逃げられないよ?」
『社長が探しに来てくれます・・・っ』
居場所を伝えて出たのだから。
ナルトの言葉に専務はげらげら笑う。
「来ないと思うよ、いま葉山君が向かってるからね」
『・・・っ』
くそったれが。
本性がでそうになるのすら我慢が出来ない。
「みせてもらおうかな、渦巻君の身体・・・」
『・・・っ、ざけ・・・っ』
ぎゅっ、と瞼を強く閉じた。
*******
奈良が社長室から出ると、ナルトの姿はなく眉間に皺が寄る。
そこへノックが鳴ってはいって来たのは葉山だった。
「社長、今日は貴重な体験をさせていただきありがとうございました。」
「最初から渦巻を連れて行く予定は無かっただけだ」
その言葉に葉山は気を良くしたのか、顔が少し綻ぶ。
「なぜだか聞いてもよろしいですか・・・?」
「あいつが足を捻ってるからだ。それに、連れて行けば将棋が始まる。」
奈良はナルトが足を痛めていた事に気付いていて、あえて歩かせないようにしていた。
「それで私を・・・?」
「あいつは言っていないが、俺が渦巻を歩かせたくなかっただけだ。」
まるで惚れている相手にいう言葉を、彼はあえて葉山に告げた。
彼女はそれが気に入らなくて拳を強く握り締める。
「で、お前は専務を利用して渦巻を閉じ込めて何がしたいんだ?」
「・・・なにをおっしゃっているのか私には分かりません。」
引き攣るかおで奈良に返すと、パソコンを見せて奈良はスイッチをおした。
「このメールと、このやり取りはなんだ?」
「・・・え?」
がさがさ聞こえてきて葉山は耳を澄ませる。
シャツが少しはだけ、ナルトは抵抗を止めようとはしない。
「いい加減観念したらどうなんだ?」
『退職にならなかったのかもしれないのに・・・』
「ん?だって葉山君がいったんだよ、君が退職を進めているとね」
『するわけないじゃないですかっ!!』
したことすらない。
ナルトは葉山の腹黒さに怒りを覚え身体が震える。
「それに葉山くんは君が邪魔だから辞めさせたいらしいしね」
『・・・っ、なの、しるかーっ!!』
がすっ、とナルトの肘鉄がかれの腹にきまって身体が離れて距離を取った。
『だからってこんな事するんですか!?自分の家族がどうなるのかわかってるんですか!?』
こんな事で退職する父親を、家族はどう思うのだろうか。
「生憎・・・離婚しているからその心配はないさ」
『その年で仕事が直ぐに見つかるとは思えませんけど・・・』
数年で定年退職なのだから。
ナルトは壁によると回復した彼が近づいてくる。
『まさか他の女子社員にも同じ事してたんですか・・・?』
「ああ、泣きながらも気持ち良さそうに抱かれていたがね」
そんな事許されるものか。
好きでもない、脅しで抱かれた暴力に、どれだけ傷つけられただろうか。
『自分の欲だけで何が楽しいんですか・・・』
「若い子を抱ける楽しさだよ、嫌がる顔がたまらないねえ・・・なのに少し弄ると気持ちいい声を出すんだからさ」
どんだけ変態なんだ、この馬鹿は。
怒りを通り越してナルトは呆れて頭が冷静になった。
『そうですか、なら被害者の方を集めて裁判でも起こしましょうか?』
「会社の名に傷がつくだろ、社長はそんな事しないさ。」
『どうでしょうか、社員を守るのが社長の務めです。奈良社長は薄情な方ではありません』
どんなに忙しくとも社員の誰かが怪我をしたり入院したりすれば必ず出向き、子供を産んでも復帰できるように託児所も作ってくれた人が、薄情な人と言えるだろうか。
ナルトは瞳を鋭くして言葉を返した。
「そうか、君は社長と身体の関係があるのか・・・」
『なわけないし・・・』
男だし。呆れ声で返したが、決めつける彼はただ笑う。
「そうなんだろ?その身体で社長を唆してるんだろう?」
『うーぜー・・・お前マジ鬱陶しい、馬鹿じゃねーの、それしか思いつかない訳?頭ん中どうなったらそうなる訳?』
ナルトの急変に彼は目を丸くした。
何時もとちがう低い声に、纏う空気が刺々しくて。
『ったく、足が痛いってのに・・・蹴破るか。』
どうせ自分が秘書出来なくても替りがいるんだから。
チクリと胸が痛んだが、それだけこの仕事が好きだった事が今になって分かってしまった。
「なにをするきなんだ!?」
『もうやだ、暗いの嫌い、空気悪い、お腹すいた・・・』
ヒールを脱いで足を膝まで上げてドアを蹴ろうとしたとき、それが開いた。
『・・・へ?・・・うわあっ!』
バランスを崩してナルトはそのまま倒れ込むように前へと身体が傾く。
「・・・大丈夫か?」
『しゃ、ちょ・・・?』
見上げた先に奈良の顔があって、自然とナルトの瞳からポロリと涙が出てきた。
「連れて行け」
その背後にいた社員が声と共に中にいる専務を取り押さえた。
ナルトは涙を拭こう離れようとしたが、奈良がそれを優しく拭う。
「足捻ってるくせに何やってんだ」
『どうして・・・それ』
バレバレだ。と頭を叩かれてナルトの腕を引き、立たせると、足を少し曲げた。
「渦巻」
『はい・・・っ!』
肩に掛けられた奈良の上着。
ナルトのシャツは少し肌蹴けブラジャーが見えている状態だった。
今更ながらナルトは頬を赤くして俯く。
『す、すみません・・・っ』
人気のない資料室から二人は社長室に戻り、奈良が手当てをするというのをナルトは拒絶する。
『ほんとうに大丈夫ですから、もうバンテリン塗ってますからっ!』
「効くかそんなもん!」
奈良の突っ込みにナルトは気まずい色を浮かべる。
『ですがほんとうに自分で出来ますから』
「黙って座ってろ」
ソファーに座らされたナルトはどうしたものかと考える。
「これ邪魔・・・」
『え・・・え!?』
スカートを捲し上げてガーターベルトのホックを外した。
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