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NARUTO
五 

奈良との一日が終わり、秘書室で作業をしているナルトの眉間には皺が寄っていた。


『・・・痛い』

足首が。

階段で足を捻ってしまったナルトはずきずき痛む足を恨んだ。

どうして捻るんだろう。高いヒールを履いている訳でもないのに、ぐきりとなってしまった。

何時ものように奈良を出迎えて、予定を告げると彼はじっとナルトを見ていた。

『・・・いかがされました?』

「いや、確か速水さんが体調を崩して入院したんだって?」

『はい、今日の朝方に体調を崩し病院に搬送なされた速水武一様のお見舞金をご用意いたしました。』

達筆な筆使いで書かれた見舞い袋を奈良に見せると、彼は頷き空いている時間に向かうと告げる。

ナルトは空いている時間を告げれば、昼過ぎにむかうと言われ書きこんだ。


そしてコーヒーを作り奈良の元へ行くと、彼に呼び止められる。

「お前・・・」

『はい?』

いや、何でもない。奈良は言いかけた言葉をしまい、作業を続けた。

足の痛みが朝よりも強くなってきて流石にどうしたものかと考えていると、ノックが鳴った。

「失礼します、社長に呼ばれて資料を持ってきました。」

『はい、どうぞ。』

資料なら取りに行ったのに。

しかも持ってきた相手は秘書補佐の女子社員で、会えば嫌味を言われる時もある人だった。

補佐と言っても配属された業務をするが、もしナルトになにかあれば代わりに入る人で、ナルトは少し気持ちが陰った。

いつ此処から居なくなるのか分からないのが秘書であり、人員削減があれば真っ先に切られてしまうのだから。

考えていると女子社員が出てきてナルトに声を掛けた。

「渦巻さん」

『はい?』

ふふっと笑う彼女が何を言いたいのか何となく見当がついてしまう。

「もしかしたら替わるかも知れませんね」

それだけ告げてさっさと出て行った彼女に、ナルトはただドアを見つめるだけだった。

『そうなったら何しよう・・・』

此処では働けなくなるのだから。

もしかしたら昨日言った事がいけなかったのかもしれないし、セクハラするものが対処されて自分は用無しになったのかもしれない。

だから見たかった映画も、食事も連れて行ってくれたのかも知れない。

『あー・・・本当に考えものかも』

まだ確実ではないのでナルトは気を取り直し、日帰り出張のスケジュール管理を始めた。

アメリカ支店と電話対応をしていると再び先ほどの女子社員が現れコピーされた書類を持って中に入って行った。

今日は何も言われない事が気がかりだが、ナルトはどう聞き出せばいいのか分からないでいると、出てきた途端に女が勝ち誇った顔で告げる。

「渦巻さん、速水様のお見舞い、私が同行することになったの」

『・・・え?』

これには流石にナルトも喉がひゅっとした。

「そういう事だから、渦巻さんはゆっくり仕事しててくださいね」

嬉しそうな顔で部屋から出て行くと、ナルトは社長室に向かった。

『社長、速水様のお見舞いに葉山さんが行くと聞いたのですが』

「ああ、行ってる間に電話がくることになったんだ、お前しか話せれないだろ、フランス語は」

転送電話があるのに。

ナルトはあえてそれを言わないで下がった。

『湿布、貰おうかな・・・』

歩くのが億劫で、痛み止めを飲んだがあまり効き目は無い。

こんな事は初めてで、ナルトは不安を感じてしまう。

いつも奈良と共にいて、電話の対応も転送していたのに。

ひやりと背中が冷えた。


********

奈良と同行するのが嬉しいのか、葉山はどこか張り切っていた。

若い奈良に好意を寄せている者は沢山いて、その近くで仕事を共に出来ているナルトを羨ましがるが、葉山の場合は浮かれ過ぎていた。

憧れの、ましてや好意を寄せている奈良と滅多に行動を取れない。それが今彼と共にできるのだから。

「社長、速水様は確か甘いものがお好きでしたから、なにか見舞い品を買われますか?」

「渦巻がもう手配してる。」

窓の外を眺めながら素っ気なく返す奈良に、葉山はその言葉が嫌だった。

病室に着くとベッドで小説を読んでいる年配の男性が速水。

「速水さん、お加減はどうですか?」

「おお奈良君、いやこの年で盲腸と言われてしまってねえ・・・」

はっはっは、と笑い、奈良の背後にいる葉山に目を向ける。

「ん?・・・渦巻君は休みかい?」

「いえ、渦巻はいま電話の対応を任せていますので、代わりのモノです。」

「葉山といいます、宜しくお願いいたします。」

お辞儀をすると、速水はそうか、としょんぼりした声を出すと、奈良は溜息をついた。

「どうせ渦巻と将棋が出来ると思ってたんでしょう?」

「楽しみをうばったなっ!!」

いててててて、と腹を抑えると奈良はくすくす笑う。

「良くなったら渦巻を連れて伺いますから、まずは快方に向け頑張って下さい。」

「・・・ならいいが、奈良君もするんだからな?」

「分かっていますよ。」

奈良は胸ポケットから見舞い袋を取り出し、速水に手渡すと、彼は思い出したように顔を綻ばせた。

「そうだった、さっきこれが届いてね、ありがとう」

「食べ過ぎて太らないで下さいね」

それは速水の好物で、直ぐに売り切れてしまう最中。

ナルトは開店すると直ぐに電話をして取り置きをしてもらい、奈良が行く時間を見計らって配達してもらった。

「いつもながら羨ましい秘書をもったね」

「渦巻はあげませんから。」

「くれっ!!」

「だめです。」

子供じみたやり取りをするなか、葉山はただ黙って聞きながら、自分の爪を引っ掻いていた。

チャンスだと思っていたことが、まさかこんなに不利な思いをするとは思わなくて。

「・・・・・・。」

葉山は笑顔を浮かべていたが、その裏側は酷く淀んでた。





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