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NARUTO
三 

奈良が纏う空気は普段と違って鋭く、冷たい空気が漂う。

「渦巻がこういう格好をしているのは、俺が言いつけてるからだ。」

「社長が許してるんですか!?」

そうだ。

奈良はナルトの前に立って専務を見下ろした。

「最近そういう被害が多くてな、だから会議に乗じて渦巻にさせてたんだ。」

それが本当か分からないが、セクハラで悩み、泣いている女子社員を何度も見たり聞いたりしているナルト。

「証拠がなかったが、これでできた。」

「なぜそんな事をするんだ!!」

「そういう事をする輩がいて会社の悪影響にしかならないからだろ。」

馬鹿か。ずっぱりつげる奈良の声は低くて冷たい。

聞いているナルトですらぞくりとしてしまう。

「ほかにもいたから纏めて処分を待ってろ。」

そうだった。奈良は一度ナルトを流し見て唇を動かした。

「戻るぞ」

『・・・はい』

震える声で返事をして奈良の後に続いた。

こんな恰好していなければ。

していなかったらどうにでもできたのに。

性別を隠し、出ないようにする事が時々苦痛に思う時がある。

あんなの投げ飛ばすでも殴るでもできたのに。

そして辞める事だってできた。

男性の秘書だっているのに、何故自分は女の姿をして秘書をしなければならないのか。

『社長、すみません、トイレに寄ってから戻ります・・・』

「ああ。」

トイレに入ってナルトは身体をさすった。

気持ちが悪い。あの感触が残っていて。

たった一撫ででも、気持ちが悪い。

『・・・あの狸』

尻触るか。俯いてナルトは水を出そうと手を翳すと、尻に違和感を感じた。

『・・・へ?』

「何処触られた?」

振り向く前に奈良の声に驚いて全身が大きく震えると、奈良はさらに触れる。

「格好はどうであれ、捕まえれたから良かったがな・・・」

『そ、ですか・・・っ』

奈良の触れ方はどうもナルトには刺激が強すぎて、力が抜けてしまう。

同じ男なのに、どうしとこうも違うのだろうか。

秘書室に戻ってからナルトは電話の対応と、書類の整理など雑務をこなし、定時の17時になった時、社長室のドアが開いた。

「渦巻、もう少しで行くぞ」

『え、あ・・・はい!』


慌てて立ち上がり、そのままナルトは片付けを始め、奈良から受け取った資料を脚立に乗って棚に戻し溜息をついてナルトの表情が固まる。

『・・・何してるんですか』

「あ?下からの眺めってどんなもんなのか見てた」

胡坐をかいてスカートの中を覗き見ていた奈良の姿に、ナルトは溜まらず顔に力が籠る。

『社長・・・いくらなんでもそれはセクハラと同じですよ』

「なんねーだろ」

確かにそうなのだが、ナルトにだって我慢の限界があるのだ。

『俺にこんな恰好させてなにが楽しいのかさっぱりわかんないんですけど・・・』

どこから見ても格好いい男が、こんな事をしているのだから。ナルトは奈良の性格が本当に変わっているとしか思えない。

若くして社長になり、女には困らないはずなのに、どうして女装をして秘書をしなければならないのか。

そしてどうして触れて来るのか。

分からないだらけのまま毎日をすごしていた。

「そのうちに分かる、もう終わったのか?」

『・・・終わりました。』

脚立から降りてそれをしまいナルトはバッグを肩に掛ける。

これから何があるのかナルトには知らされてはおらず、もしかすれば秘密裡な事なのかもしれない。

緊張感を抱いたまま奈良と共に車に乗り込み、さきにクリーニング店へ寄ってスカートを受け取った。

「・・・随分ため込んでたな」

『出して取りに行けなかったままのものもあるんです。』

紙袋二つ分のスカートとシャツ。

そろそろ新しいスーツも欲しいと考えていた。

車は静かなまま走行して高速道路にはいり隣の市へ向かった。

『こっちに何かあるんですか?』

「まあな。」

奈良は携帯を取り出し、ナルトは窓の外を眺め見た。

ネオンの光があちこちに光り輝き、その中を行き交う人々の顔は楽しそうだったり怒っていたり。

自分もあんな風に楽しく外を歩きたい。

なにも気にせず食べて、呑んで、騒いで。

この職業に抵抗が無かったわけじゃない。

自分の面談の時は場所が違い、奈良しかおらず、その場で秘書課の配属が決まった。

本当なら海外事業課に行きたかったのに。

それでも社長たちとの同行で世界に行けるのなら、と承諾したものの後から言い渡されたのが、女装しての秘書。

もしかすれば今日みたいな事をふまえての女装だったのだろうか。

今は言葉でのセクハラが増えているとテレビでみた事がある。

だとしても、自分で良かったのだろうか。複雑な思いを抱えながらナルトはただぼーっと外を眺めた。



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