NARUTO
三
今日も朝から慌ただしく動き、子供と遊んだりあやしていると保育士向いているとからかわれ、泣きじゃくる子供を宥めてみたり、診察やカルテを書いたりとして椅子に座ると突っ伏した。
『・・・腹減った』
ぐったりとしたまま医学書に手を伸ばしてページをめくったが、すぐにぱたりと閉じられる。
『・・・・・・』
このまま眠れそう。目を閉じてナルトは頭が軽くなっていくのを感じた。
けれど今は仕事中であり、ぱこり、と頭が何かで叩かれる。
『・・・おきてます』
「寝かけてただろ」
カルテで頭を叩いたのは奈良で、隣に座ってそれに書き込んでいく文字を眺めた。
綺麗な文字で、癖が無い本を見ているようなもので、無意識に顔が近付く。
「どうした・・・?」
『奈良先生って、習字してました?』
「ああ、特待生までいったから辞めた。」
習字にそんなのがあるのか分からないナルトは奈良を見上げた。
『特待生って、一番ですか?』
「そうだな」
その次にあるのは師範試験で、受かれば子供を教える事ができるがその基準は各書道団体によって決まる。
『凄いなぁ・・・大抵三段とか五段とかで辞めたって人多いのに、凄いですね!』
そんなのは人それぞれだが、笑顔でそう言われて悪い気分にはならない。
「渦巻は・・・まあ、頑張れ」
『これでも通信教育でペン字やったんですよ!?』
先生と見比べないで下さいよ。唇をとがらせて不貞腐れると、奈良は苦笑する。
「上手い方だから大丈夫だって」
『嘘くさ!先セ嘘くさい!』
くすくす看護師達に笑われながら、ナルトもカルテを書き始めた。
夕方になって回診をして周り、明日の検査確認等をして看護師達と一日の纏めと引き継ぎをして終わった。
ナルトは昨日言われた通り研修室へと向かうと、ドアを開けた瞬間固まってしまう。
「なに固まってんだ」
『・・・何処のモデル事務所ですか』
中にいたのは見目麗しい者達で、感じたまま言葉にしたが奈良に頭を軽く叩かれた。
「バカ言ってないでやるぞ」
『あの、宜しくお願いします。』
頭を下げると明るい声がしてその方へ視線を向ける。
「小児科研修なのに保育士が来たって奴、お前の事だったのな」
『・・・保育士?』
なんですかそれ。首を傾げればその男は更に言葉を続けた。
「本職より扱いが上手いって、こっちまで流れてきてんだよ。 」
『扱いが上手いって・・・上手くないです。』
至って普通としか感じていなくて、ナルトは難しい顔を浮かべると、奈良が促す。
「こいつは内科の犬塚で、隣に居るのが外科の日向、奥が脳外科の団扇だ。」
『研修医の渦巻です。』
「実践しないと上達はしないからな、遠慮無くやるといい。」
日向に言われてナルトは苦笑する。有り難い言葉だが、やはり痛がらせてしまうんじゃないかと心配になった。
「ちょいちょいちょい、お前その体勢か?」
『・・・昨日はこれでプッスリいきましたので』
試し打ちです。けろりと犬塚に告げれば、彼は参った、というように顔を手で覆う。
こんなやり方初めてだ。犬塚は言葉をもらすが、やはりプッスリと針が入った。
「基本姿勢でやってみろ、患者によって嫌がられる場合もあるからな。」
日向に言われてナルトは頷いたが、入るだろうかと不安になる。
「恐怖心は無さそうだから、大丈夫だろう。」
『痛かったら、すみません・・・』
駆血帯を絞めて血管を探すと、アルコール消毒をして針を入れた。
『・・・ん?』
「・・・外れたな」
直ぐに針を抜いて押さえると、ナルトは頭を下げる。
ちゃんと血管には当たっているのに、外してしまうのがどうしてなのかが分からない。
『・・・出ない。』
団扇の腕を眺めて、絞めても血管が浮かんで来なかった。
「全員が出る訳じゃないからな。」
団扇の言葉は最もで、ナルトは白い肌を伸ばして血管を探す。
『・・・あ。』
見えた。うっすら見えた血管を見失わないように、ナルトは独特の体勢で針を刺した。
「渦巻、お前やっぱ変わってるわ。」
その体勢で良く団扇の刺せたな。犬塚の言葉にナルトはただ苦笑いを浮かべる。
何度か代わる代わるやっていると、突然ナルトの携帯が鳴りだし画面を見ると母親からだった。
『もしもし、どう・・・』
「ナルト、助けてってばね!!」
母親の焦った声にナルトの表情が厳しくなった。
『助けてって、母ちゃんどうしたんだよ・・・』
その言葉に奈良達もナルトに視線を向けると、肩に手が置かれる。
視線を向けるとそれは奈良の手で、小声で落ち着け、と言われた。
「ナナちゃんが高熱出して痙攣してるってばね、前にもあったから、ナルト・・・どうしたらいいの?」
涙声で告げる母親に、ナルトも眉が寄った。
『奈良先生、受け入れできますか・・・?五歳の女の子で熱性痙攣起こしてるそうなんです。』
「早く来るように伝えろ、準備するから。」
『ナナ連れてきて。着いたら病院用の携帯に連絡して、正面玄関に行くから。』
携帯を切ってナルトは頭を下げた。
『先生方、練習に付き合って頂いてありがとうございました!』
「また付き合ってやっから、頑張ってこいよ!」
「今来るのはお前の患者だから、しっかりケアするんだぞ。」
「奈良もいるんだ、落ち着いて治療してこい」
犬塚達に励まされて、ナルトは奈良と共に詰所に向かった。
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