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NARUTO
二  

どんより空気がナルトの周りを漂う。

奈良の腕は痛くなっていないだろうか。何度も失敗をしてしまったナルトは、どうしてこれだけうまく出来ないのか悩みの種だった。

友人にも何度となく練習させてもらったが、失敗が重なり嫌がられてしまった。

血管に見立てたゴムチューブで練習しても、やはり本物でなければ成果が出ない。

ナルトが苦手なのに気付いた奈良はこうして練習台になってくてるが、気が引けてしまう。

『・・・自分でやるしかないか』

微妙だけど、何もしないよりはマシだ。テーブルに突っ伏して瞼を閉じた。

自分がこの道を目指したのは、小児科医が少ないからではない。

まだ進路を決められないとき、どの道が自分にはあっているのか分からなかった。

分からなくて、迷っている時に知ってしまった事が、ナルトを小児科医の道に進めさせた。



*****


『・・・無謀だったのか』

勤務が終わり研修室で一人練習を始めたが、からん、とトレーの上に針を置いて赤くなった自身の腕を眺めて摩る。

圧迫された腕には跡が浮かび、何本も刺した痕。人に針を刺す恐怖は無くて、ただナルトが不器用なだけの事。

不器用だからこそ人よりも寝る間を惜しんで練習してきたが、実践をしたことが無いナルトにとって出来るか不安だった。


ましてや相手は大人ではなく子供。小さな子供なら尚更痛みを感じてしまう。

今度は誰をとっ捕まえようか。考えているとドアが開き奈良の声が届く。

「渦巻、なにしてんだ?」

『・・・練習ですよー』

突っ伏したままひらひら後ろに手を振って応える。

その腕を奈良は掴み、赤くなってしまった所を眺めた。

「自分のでやるか・・・?」

『一昨日は足にやってみましたけど、痛かったから諦めました。』

腕とは違う痛みに、諦めざるを得なかった。

「怖くはねんだろ?」

『そういうのは無いんですよ、ただ子供相手に通用しないじゃないですか、刺し間違えたら終わりですし。』

血管を避けてする皮下注射ならできるが、採血や点滴針は針を刺しても逃げてしまったり、貫通してしまったりと微妙な角度と加減が難しい。

「こんなに見えてるのに失敗するとは・・・」

『ずれるんですよ。』


笑わないで下さいよ。さらに突っ伏すナルト。奈良はその腕を摩り、駆血帯を巻いた。

『なにしてるんですか?』

「角度の問題だろ、それ以外は問題無かったからな」

ぷすり、痛みを感じない刺し方にナルトは目を瞠る。

「採血なんて数こなさないと慣れねえよ」

『先生って、将棋マニアじゃないんですね』

「マニア言うな!」

ばしん、頭を平手で叩かれ、ナルトは笑う。

見た目と違って奈良の趣味は昼寝と将棋。ミスマッチすぎて笑えた。

「明日もやるからな」

『えー・・・』

嫌です。はっきり出てしまった言葉にナルトは咄嗟に口許を抑えるが、奈良は呆れた眼差しを向ける。

「お前、それ他で言ったらキレられんぞ」

『・・・痛いの、奈良先生なんですよ?』

もしかして、ナルトは大きな瞳を見開いて奈良をみた。

『奈良先生ってまさか・・・』

「おい、お前なに勘違いしてんだ・・・」

嫌そうな顔を向け、ナルトは勝手に一人で頷いていた。

『先生って、注射好きなんですね・・・』

「な訳あるか!」

馬鹿か!一喝されまた頭を叩かれると、ナルトは不満な色を浮かべ頬を膨らます。

『俺の頭モグラ叩きじゃないですよ!』

「お前・・・自分の不器用さ分かってんのかよ?」

切れ長の瞳でナルトを捉え、告げた言葉に頬の膨らみは無くなり、立ち上がった。

『よし、今日も頑張った!!』

研修医がこんな事して許されるのだろうか。

奈良の性格とナルトの性格がこんなやり取りを生んでしまったのかは知らないが、ナルトは気が引けているのは確か。

「そうか、なら明日実践しろよ。お前の髪の毛を結ってくれた、ミーちゃんの採血。」

『先生やりましょうっ!!』

どっちなんだよ。溜息を零して頬杖をつき奈良。

実際は看護師がするのだが、こまで言わないと確実に逃げていたに違いない。

『・・・みえね』

奈良の血管に針を刺そうとするが、身体の角度のせいなのか見えにくくて、ナルトは更に近づき彼の腕の上に胸が当たる。

「やりにくくねえか?」

『そおでも・・・、ないです』

腕に唇が触れそうな至近距離で針を刺し、その大きな瞳は真剣な眼差しを向けふにゃりと顔が綻んだ。

『できた・・・先生できたー!!』

「喜ぶ前に抜けっての」

跳ねて喜ぶナルトに突っ込みを入れ、針を抜いた。

嬉しそうに片づける姿をみて、奈良はふっ、と笑う。

「明日終わったら此処にいろ、練習相手連れて来てやるから。」

『あー・・・痛がらせちゃうかも知れないですよ?』

「研修医の採血とかは俺たちが練習台になるのが普通だから安心しとけ」

ぽん、と頭にのった手のひら。

離れるとそこに手を当てて彼を見た。

さり気無い気遣いや優しさがナルトには格好良く見えてしまった。もともとそうなのだが、胸がきゅんとした。




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あきゅろす。
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