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NARUTO
十三

何度、見ただろうか。

太陽の光が当たり、輝きを増す髪の毛を。

日によって違う後ろ姿を、横顔を何度も、何度も見てきた。

眉を寄せて重たい空気の時は頭痛。

頭を軽く下げて歩く時は頭痛以外。

怠そうに背中を少し曲げて歩く時は、眠たいか疲れているか・・・何かあった時。

公園で楽しそうに遊んでいる時の顔は幼くて、おっちょこちょい。

何もしないでベンチに座って空を眺めている姿は、何時もと違う雰囲気を出していて

スーパーで買い物をしていれば、年寄りと楽しそうに話す姿。


どれだけ見てきただろうか。

なのに一度も気付かれた事はなくて、あの日は電話の応対をしていたシカクに代わって店に出た。

まさかイラストのあだ名が自分の名前と同じだった事にシカマルも流石に驚き、聞いたシカクも驚いた姿は忘れない。

それが目の前で抱き締めているナルト。

たまたまが偶然重なったのは、アスマからの呼び出しで学校に行った時、頭痛でやってきたナルト。

あのあとアスマにからかわれはしたものの、あんなに愛おしそうに呼ぶ声が、耳から離れなかった。


他愛のない会話をするようになって、それが生徒に知られナルトの頭痛を酷くさせてしまった事に、シカマルは正直周りが鬱陶しく感じたりもした。


名前を言わせようとしたのは、ただいじりたかっただけ。

いじれば、むきになるナルトが楽しくてわざと薬袋もいじってやった。


別れ際に呼ばれるまでは。


「・・・落ち着いたか?」


『ぐ、ぐう・・・っ』

苦し紛れの寝たふりは、シカマルの肩を震わせくつくつ笑う。

あんな濃厚な口付けをされ、どう話せばいいか考えたらそれしか出て来なかった。

シカマルが何故そんな事をしたのか。

そしてそれを勘違いしてしまいそうになったから。

落ち着かせる為にしたのならば、相当たちが悪いとしか言えない。

『・・・チュー、すんなよ・・・っ』

バカマル。か細い声で告げるナルトのそれは、悲しい色が含んでいた。

「もう一回するか?」

『すんなってばぁっ!!』

ぼろりと出てしまった涙は、悲しみと怒りが込められていて、ショックでもあった。

簡単に言ってしまう程、彼はそれを慣れているんだとナルトにはそう感じた。

「・・・何度だってしてやる」

顎を掴み顔を上に無理矢理向かせるシカマルに、ナルトは怯えて身体が震える。

『・・・っ、や、やだ!や・・・っん!』

きゅ、と唇に力を困ると、掴んだ顎を下へ強くさげて無理矢理開かせる。

『ふ、うぅ・・・やぁ、だ・・・っ』

自分の舌を噛まれないよう指を入れ、ナルトの歯を押し付け舌に吸い付く。

怖さから涙がぼろぼろ流れるのに、身体はそれを受け入れている事に気付いてしまった。

受け入れろと脳ではなく身体が告げている事に。

『たのむ、から・・・っ、も、やめ・・・っ』

ひくひく肩を揺らしながら泣きじゃくるナルトに、シカマルは頬を包み、見つめた。

「名前で呼んだらな・・・」

『・・・ずりぃって、いって・・・じゃ・・・っ 』


ずりぃよ。こんな時までそんな事を言うだなんて随分なイケズだと頭の中で悪態つく。

『いえっ、ねぇ・・・もん、言えねぇんだってば!』

手の甲を口許に当てて声を荒げるナルトは、もう言葉を選ぶ余裕が無かった。

『仕方ねえだろ、呼べないもんは呼べねんだよ、恥ずかしくて・・・くるしい・・・っ』

ただ名前を呼ぶのに、こんなに困難だとおもわなかった。ギリギリ痛む心は、シカマルを傷付けたと思ってしまったナルトは俯く。

「どっちの苦しいだ、それ」

『・・・・・・っ』

嫌だと頭を振り拒絶する。好きだから呼べないなどと、言えやしない。

「どっちなんだ・・・?」

両手を捕まえられ、指を一本ずつ絡め俯くナルトを見つめた。

言えないから、せめてこれで許して欲しい

『・・・い、くすり、ちょうだい・・・』

震えてでた言葉はシカマルの表情を崩すには十分で、赤みの増した頬に吸い付く。

「何の薬がいい?」

『――シカマルさんが、いい』

届いてくれますか?

「それ、返品きかねえぞ?」

『しない・・・よ』

きゅ、とシカマルの手を握り胸元に顔を寄せた。

それから二人は他愛のない会話をしながら、仲よく抱き合ったまま昼寝をした。






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