NARUTO
湖の呪い?
吐く吐息は白く、寒さにみを縮ませる日々が続き漸く晴天になった木ノ葉の里。
とある場所に鈍い音と、それを笑う声。
『・・・尻いてえ』
「どんくせ!マジどんくせぇっ!!」
顔を顰めるナルトとそれを笑うキバ。悔しくて立ち上がるが思うように立てず、まるで生まれた仔馬のようだった。
「得意そうなのにな、これ」
『うっ、せ・・・うわぁっ!!』
どてん、とまた転んだ。
数日の厳しい冷え込みがもたらした、氷のリンク。
ナルト達は森の中にある、湖に出来た氷の上でスケートをしていた。
なかなか滑れないナルトは転んでばかりで、尻が痛い。
こけると分かってそうなれば受け身が取れるにしろ、突然なってしまうとかなり痛い。
「ほら、力いれんなって」
『・・・む、むり・・・っ』
キバに引っ張られても、腰を突きだし足がプルプル震えている情けない姿。
上達の早かったキバはナルトの手を握り、後ろ向きで滑れる速さ。
「だーいじょうぶだって、重心さえ取ってれば」
『も、むり、こわ・・・ギミャッ!!』
「うお!?」
ぐん、と引っ張られキバがナルトにおい被さるように転んだ。
「いっ、てえ・・・」
『もーやだもーやだ・・・』
両手で顔を覆い不貞腐れるナルトに、キバは何かを感じて辺りを見回す。
「・・・・・・?」
(何かいまぞわってしなかったか?)
立ち上がり氷を払うと、きっとこれが服にでも入ったんだと思い、寝転んだままのナルトの手を取る。
「ほら、もう少しでシカマルもくるんだし、少しぐらい滑れるようになるんだろ?」
『俺には向いてねーもん!!』
身体いてえし。こうなるのかよ、溜息をこばしてキバは一度休憩を取ろうと岸に上がる。
「へっぴり腰何とかしねえと滑れねえぞ?」
『・・・そうなんだけどさ』
うまくいかない。頭では理解しても身体が理解出来ていない。
「あと少しで回転出来そうだから、やってみるか」
立ち上がりキバが滑る姿を眺め。すいすい気持ち良さそうに滑る姿が羨ましい。
立てるようになれば滑れると言うのに、歯がゆい。
『・・・また転ぶのか?』
明日は痣と筋肉痛かな。頭の中で呟きながら氷の上に立とうと腰を上げたら、声がした。
「滑れるか?」
『・・・無理』
シカマルの姿に、ナルトは不機嫌な声で言葉を返す。
「慣れたら簡単そうだろ」
シカマルも氷の上に立つと、キバが手を振り戻ってきた。
「ナルトさっきからこけてばっかなんだよ」
『うっせ!ちょっと滑れるからって』
ナルトよりはな。けらけら笑うキバが憎たらしく、ナルトは肩を叩くと、滑って体勢が崩れる。
『ぬおぉ!?』
「・・・なにしてんだよ」
シカマルに支えられて転ぶのを免れたナルトは、ヘラリと笑った。
「シカマル、ちょいナルト頼むわ!」
次は二回転だ!張り切るキバはすいすい滑っていった。
「やるか?」
『・・・ん』
こくり、頷て足を延ばすと背中にシカマルがくっつき、ナルトの腰に手を添える。
『・・・これ?』
「体制が安定するだろ?」
そうなのか。ナルトは納得をして足を一歩前に滑らせると、滑らかに進みもう一歩前に出す。
『すげえ!シカマルすべれた!!』
振り向き笑顔で喜ぶナルトに、彼は瞳を細めて笑う。
「やってみ」
後ろから抱えられたままナルトは滑り、いつの間にかシカマルの腕を掴んでいた。
少し離すとやはりな結果にシカマルは苦笑を浮かべ、ナルトが滑れるようになるまで付き合ってくれた頃に、他の仲間達とも合流した。
『・・・俺だけ変じゃねえか?』
何でこんなに滑れないのかが不思議で、首を傾げて皆を眺めるナルト。
楽しそうに滑っている姿は見ているだけでそうなり、澄んだ青空をながめた。
「滑んないのか?」
『んー、何で俺こんなに下手なんだろう?』
「だから付き合ってやるって言っただろ」
やんのか?シカマルに問いかけられると、ナルトは唇を尖らせる。自分も滑れたらもっと楽しいのに。
『シカマルって、いっつも俺の面倒みて、疲れないの?』
「別に、お前の面倒を真面にみれるの、俺ぐらいだろうから」
隣に腰かけ、ポケットから煙草を取り出し火を点ける。
「・・・いつもこんなんだろ」
『まあ・・・そうだけどさ』
ゆらゆら立ち昇る紫煙を見上げ、視界に入る彼の顔を眺めると、ナルトは今になって気付く。
『髪・・・半分下してたんだ』
「・・・いまか」
喉奥で笑い緩やかに煙を吐き出した。
あまり見かけない髪形は、似合っているがこれはまた人気が出るに違いないと、ナルトは内心両手を合わせた。
『あー、キバぶつかるってばーっ!!』
「あ?・・・んなっ!!」
どけてー!ナルトの叫びに振り向いたキバはとっさに避けるが、その前に滑っていたシカマルに激突する。
『シカマルぶつか、ぶっかー・・・んぎっ!』
くるり、と向きを変えたシカマルはナルトを正面からすっぽり包み込んだ。
さっきまであんなに転んでいたのに、こんな時に転べない不思議さを感じてしまう。
衝突は避けられたが、すっぽり包まれてしまう自分の身体の細さが明るみになり、情けなく思う。
「んとに、俺がいねえとダメなんだな・・・」
『よっ、よろしくね、ダーリン?』
あはは、引き攣り笑いを浮かべながら冗談を言えば、腕にこもる力。
「なにからなにまで、面倒みてやるよ、ハニー」
『やーだー、シカマルなんか目が据わって・・・っ』
ちゅ、ナルトの唇に口付けうっすら微笑み細い腰を撫でる。
『・・・っ』
なにしてくれてんの、と言いたげに声の出ないナルトの口はパクパクするだけ。
「なに、もっとしてほしいか?」
『おまえ・・・だれだってばよ・・・』
こんなの知っているシカマルじゃなくて、ナルトの顔はますます赤みをおびていく。
『シカマルが湖の呪いに・・・っ』
そんな訳はなく、ただナルトに見せていなかったものを見せただけの事で、それがあまりにも危険な雰囲気を放っていて、その色香にナルトが動揺しただけ。
「馬鹿か、滑れるようになったら、今度はコケ方忘れるなんてな」
『しょーがねえだろ!止まり方知らないんだから!』
なんだったんだ、さっきのは。立ち上がると手を取られた。
「行くぞ」
『・・・ん』
やっぱりこうなってしまうのか。二人は変えるまで手を繋いだまま滑った。
(何でシカマル俺にチューしたんだろう)
その疑問を解決出来る日は、何時になる事やら。
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