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NARUTO
邪魔な壁 

この気持ちに気付いた時は、自分の行動を思い出してみて確実なものだと受け止めた。

自分の性格や、誰に対しても同じなのが幸いとしてナルトは周りに気付かれる事は無かった。

聡いシカマルにすら気づかれていない事が嬉しかった。

同じ性別で生まれ、恋をしてしまったと知られてしまうのが何よりも辛くて。

何も変わりはしない行動で誤魔化して、心を満たして。そんな虚しいと思わることをナルトは選んだ。

仲間だから。親友だから。

同じ性別だから抱きついても何も言われはしない。

心が手に入らないのなら、振り向いてくれないのならば

惚れてくれる確率がゼロに近い事に、ナルトは簡単に諦めた。

言葉にしたい感情を堪え

誰かに嫉妬する感情を任務で晴らし

姿を見つければーーー


『シカマル、また徹夜?』

眠そうに歩いている姿を見つけて、ナルトはシカマルを覗き込んだ。

「・・・お前はいいよな、こんな目の下に隈一つ浮かんでなくてよ」

憎たらしい。ナルトの柔らかい頬を両手で引っ張るシカマルに眉を顰める。

『俺今日少ししか寝てねえってば!』

「どの口がそういってんだよ・・・」

ああ?ぶみ、と今度は頬を潰して唇が尖りアヒルのようになる。

心が手に入らなくても、こうして触れてくれるだけでナルトは嬉しかった。

『ガーガーッ!』

「んなアヒルいねえから・・・」

くつくつ笑う姿にナルトも笑う。

こんな時間がナルトの癒しだった。



数日間の任務が終わって、ナルトはシカマル補給をしようと歩くが姿は見当たらない。

会いにいく理由すらなくて、こんなときは何時も痛感してしまう。

『・・・不毛です』

不毛すぎる恋が苦しい。

シカマル補給が出来ない。それが三日も続いて任務が荒く、ついに綱手に叱られた。

『・・・いてえ』

思い切り拳骨された頭はたんこぶが出来てしまい、ナルトの空気がピリピリしている。

里の連中もそんなナルトに声を掛けることはしないのは、どれが起爆なのかが分からず聞く事すら出来ない。

山の半分壊したぐらいで文句つけるなら、最初から依頼なんかすんなよ。

苛々が募り、ナルトは森の中を歩いた。

このイライラを人に当たりたくなくて。

任務での説教だけじゃなくて、大半がシカマルと会えなかった事でこんな結果を生んでしまったのだから、反省しなければならない。

自分で選んだ道を、後悔したってどうしようもない。

『・・・・・・』

ついには幻覚まで見えるようになったのか。

寝転んでいるシカマルの姿に胸が高鳴り、きゅんとした。

近づくと胸元に置かれた小説に、寝ている事が分かってナルトは膝を地面について眺める。

『・・・・・・』

眠るシカマルの姿に、ナルトの目は細まり端正な顔を眺めた。

言えたらいいのに。

通じればいいのに。

俺だけを見てくれればいいのに。

どうして好きになっちゃったんだろう。

何か一つでも、シカマルに刻めたらいいのに・・・


シカマルの顔に影が濃くなり、ナルトは唇をかさねる。

『−−・・・ばーか』

小さな声で告げてナルトはそこから立ち去った。



欲深になっていく心が怖かった。

選んだ道はつらい事ばかり。

自分の弱さを出したくないだけで、怖がってばかりで楽な道を選んだ結果は、辛い道ばかり。

欲しいのは、本当に欲しいのはシカマルの心なのに

『なに、したいんだか・・・』

わかんねえ

何でこんなに胸が痛いんだろう。

してはいけない事をしたから?

ズルズルと気の幹に凭れかかって空を仰ぎみた。

『他の誰かを、好きになれればいいのに・・・』

どうして大切な仲間だったんだろう。

もし、違っていたら言えていたかもしれない言葉を、何度空を見なが想いを乗せて告げただろうか。

『−−・・・好き、大好き』

シカマルが。

何度、彼を想いながら涙を流した事だろうか。

想いを重ねた気持ちは、風船のように膨れあがっていつ破裂するのかナルトにも解らない。

また、衝動にかられて口づけてしまうのかもしれない。

『ーー・・・馬鹿だな、おれ』

何でしちまったんだよ。

一線をこえてしまったら、歯止めが利かなくなりそうだ。

『・・・・・・馬鹿だ』


すう、と瞼が自然に下がって流れる涙と共に眠った。


そよそよ、そよそよと、緩やかな風に乗ってナルトの頬を擽る髪の毛を誰かの指が優しく払った。

その寝顔を眺め、強まっていく影はナルトの唇に優しく重なり何度も啄み、離れると頬を撫でる。

「ーー乗り越えて来い」

そしたら受け止めてやるから。

愛しき者を見つめるシカマルの眼差しに、ナルトが気付くのはいつになるだろうか。

気付いていながらも、待っている事が辛いという事を。

自分から乗り越えていいのならば、もうとっくに乗り越えて逃げ出さないよう捕まえているというのに

「・・・次は、なにがいい?」

酔ったふりしてキスでもしてやろうか。

それとも、酔い潰して身体に触れてやろうか

いくらでも、言いやすいようにしてやる。

そうしたら、今まで我慢してきたものを全て、ナルトに植え付けてやろう。

だから早く、その邪魔な壁を乗り越えてこい。

その願いが叶うのはいつになるだろうか。




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