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NARUTO
十一 


汗でシャツがうっすらと湿っていて、彼は着替えさせないとダメだと言葉にする。


「着替えるぞ」

濡れてる。告げればナルトの手が離れる。

『・・・あっち行って』

「むり」

『一人でできるってばー・・・っ』

ああ楽しい。シカマルはこんな姿を見れるとは思わなくて、苛めてやりたい気持ちが強くなる。

「身体、拭けないだろ?」

『羞恥心で気絶しそう・・・』

何なんだ今日のナルトは。

そう思ったのはリビングで目覚めた時からだった。

服を引っ張ったり、掴んだり。

恥ずかしいと呟いたり無意識に触れて甘えてくる仕草が。

何よりも普段から見る事の出来ない表情に、シカマルは不謹慎だと感じながらも楽しくて仕方がない。

もっとみせればいい。 そう思ってしまうのは深く考えなくても寸なり認める事が出来たから。

だからこそ、普段からはあり得ないと言われる行動をしてしまう。

「本当に・・・一人で出来んのか?」

『できっ、る、からぁ・・・っ!』

あっちいってて。駄々を捏ねたような言い方で返すと、シカマルは着替えの服を尋ねてナルトに手渡した。

「身体、拭けるか?」

『・・・できる、もん・・・っ』

唇を尖らせてタオルを受け取ると、ナルトはシャツを脱ごうと掴む。

汗で身体に貼り付くシャツはすんなり脱げず、力が入らないナルトはもたもたとしてしまう。

『・・・お休みなさい。』

「まてまてまて!」

がしり、と肩まで脱いだナルトの腕をベッドに倒れ込む前に掴んだ。

「だから言ったろ・・・」

『休憩だもん!』

お休みなさいって言っただろうが。突っ込まれてシカマルはナルトの背中を拭いた。

親にしかされた事が無い事を、いきなり恋心を抱いている相手にされてしまうのは恥ずかしくて瞳がキョロキョロとさ迷ってしまう。

至れり尽くせりだが、ナルトにはハードルが高すぎた。

「俺来てなかったら、どうしてたんだ?」

『下で寝てる』

他には。問いかけられてナルトはおずおず答える。

『動けるまで、寝る』

「・・・それ、酷くなったら入院もんだぞ」

『やだー・・・』

涙腺が弱くなっているいまは、何に対しても涙が浮かびやすくて、ほろほろ落ちる。

「泣くなっての・・・」

追いつかねえから。新しいタオルで拭いてやると、ナルトはシャツに袖を通す。

『・・・言ったのに』

「なにが?」

何か気にすることでも言われたか思い出すが、何も思いつかない。

『下がいいって、風邪、移るって・・・』

「どうしてそれ、言ったんだ?」

『・・・・・・。』

それを言ってしまったら、どうなってしまうのだろうか。

移るから居ないでほしいという気持ちと

寂しいから傍にいてほしいという気持ちと

もう二度と無いのだと思い、彼に甘えて触れたいと思う狡い気持ち

色々な気持ちが混ざりあって、ナルトは何が一番正しい選択なのかが分からなかった。

傍に居てほしい

けれどそれは我が儘で、彼の予定を潰してしまうのかもしれない


甘えたくて、触れていたい

彼の優しさが、その声が、自分をおかしくさせてしまっていて熱のせいにしてしまう狡さを、気付かれたくない。

徐にナルトがすがり付いたのはシカマルのシャツだった。

『も、わかっ、わかんねえよー・・・』

ひくひく嗚咽しながら泣き始めたナルト。

思っていた以上に強すぎる、シカマルを想う気持ちがナルトを混乱させてしまう。

こんな姿を見られたくないのに、戻れるのなら戻りたいと願ってしまう程、好いてしまった相手。

「だから馬鹿だって言ったんだ」

『・・・・・・っ!』

強く抱きしめられ、嗅ぎなれたシトラスの香りがした。

すっぽり収まったナルトの身体を、逃げ出さないよう肘を封じてシカマルは肩に顎を置く。

「俺が直ぐ帰ると思ったから、其処でいいって言った事ぐらい気付いてんだよ」

『頭いいやつ、嫌い・・・』

溢れそうな涙に、ナルトは瞬き彼のシャツを濡らす。

「面倒じゃねえから、此処にいるんだろうが」

ばーか。背中をさすりシカマルは自分のシャツが濡れていることに気付くと、くすりと笑う。

「こうなるのは、予想外だったがな」

こんなにも自分の理性と戦わなければならないとは考えてもみなかった。

「何がシカマクラだ、ふざけやがって」

『・・・へ?』

なにそれ。涙が止まり顔を上げて彼を見れば、こちらを流し見ているシカマルの視線と重なる。

「寝言。さっさと呼べって言ってんのに、意地かそれ」

『シカマル、さん?』

すっと出てきた言葉にナルトは首を傾げる。頑なになって呼ばなかった彼の名を、躊躇いなく呼べた事に不思議な感じがした。

きっとそれも今だけで、直れば恥ずかしくて呼べないだろう。だからナルトはまた彼の名を呼ぶ。

『シカマルさん、これでいい?シカマルさ・・・っ!』

ぱすり。彼の手がナルトの口許を塞ぐ。

「熱、下がってからにしろ・・・」

もたねえ。シカマルは頭の中で呟き、後悔する。

たかが熱でも今のナルトの姿はただの高校生には見えなくて、蠱惑てきな姿はその唇を奪いそうになってしまった。

『・・・なんで?』

「楽しそうだから。」

楽しくない。小さく呟いたナルトに、シカマルの瞳はどこまでも優しく、暖かかった。









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