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NARUTO
童心と下心 疾風シカナル

子供の頃は興味があれば進んでやってみたり、楽しいことは仲間と分かち合ったり、怒られたり。

本気になって遊んだ事も、喧嘩をした事もあった。何が正しくて何が間違いかなんてまだ良く理解していなかったし、大人の言う言葉が理解出来ないことだってあった。

疲れ果てるまで遊んだのは何時だっただろうか――・・・


里の建物の上を右往左往する忍の姿。そんなものを気にしていないかのように、真剣な顔で走っているのは・・・


「だーもー!どけどけどけっ!! 」

「どうしたんだよ、キバ!」

「捕まっちまうんだって!」

どけろーっ!大きな声と共に現れた者がいた。それは背後からひたりひたりと近付き間合いを詰めていく。

「アイツ、マジになりやがって・・・っ!」

ぽん。と叩かれた肩にキバは目を丸くして崩れ落ちた。

「マジかぁー・・・」

畜生・・・。背中にぺたりと貼られた、捕獲の札はその文字の上に小さい文字で、糞虫野郎、とも書かれている。

「次、お前な。」

キバに物を渡して立ち去った彼の背中には札が貼られてはおらず、キバはそれを眺めてから立ち上がった。

「・・・シカマルの野郎」

はなっから俺を狙いやがって。忌々しげな眼差しを浮かべながら、彼はどこかに消えた。


暗い洞窟の奥深くに、ナルトの姿があった。

ひっそりと身を潜めて気配を探ると、ナルトの眉がピクリと動く。

『・・・・・・』

(誰か近くにいる・・・)

気取られないよう後退しながら距離を取ると、近づく足音。

物音を立てずに後ずさるが、こつり、と背中に固いものが当たって動けなくなる。

(・・・どうしよう)

これ以上は進めない。ナルトは焦りどうにかならないかと辺りを見渡しても、この暗さでは分からなかった。

子供の頃は楽しかった。

追いかけるのも、追いかけられるのも。

むきになって足りまわって、捕まえて。隠れては見つからないよう移動して。

なのにこの年になって本気の隠れ鬼をするだなんて思ってもみなかった。

夕日が上る時までに、誰が一番多くの捕獲札が貼られるかによって、夕ご飯代が懸かっている。

ナルトは人が来ないこの洞窟に身を潜めていたが、札を張られてしまうかもしれないと、緊張してしまう。

「・・・ナルト、か?」

『・・・っ』

最初の鬼はシカマル。

ならば次の鬼は自分。

逃げ道はなくて、素直に捕まるしかない選択に抗う気力すらない。

「背中、向けろ」

『なんで此処にくんだよ・・・』

言われた通り背を向けると、腹が圧迫された。

『シカマル・・・?』

「少し黙ってろ・・・」

腹に回ったのは彼の逞しい腕。抱えられながらシカマルは岩に手を伸ばす。

『ちょい、俺鬼・・・うわっ!』

ぐん、と揺れてシカマルの身体に抱きつく。

登った先に何があるのか知らないナルトは黙って到着を待った。

「鬼は、キバになったから、今頃走りまわってんだろ」

『・・・匂いでバレそう』

鼻が良い彼にとってこの遊びは有利過ぎる。もしかしたらもう誰かが掴まっているのかも知れない。

「・・・着いたぞ」

『あ、りがと・・・』

登った先には少し狭く、水が流れる音が響いていた。

『こうなってたのか・・・』

「知らなかったのか?」

『しらなかった。』

岩から伝い落ちる水の雫やその周りに生えた苔。

ヒヤリとする気温にナルトは自分の身体を抱きしめる。

『やっぱ奥は寒いのなー・・・んん?』

少し動くとシカマルに当たってしまい、ナルトはしゃがみ込む。

「本当ならまだ道があったんだ、ここ」

『そうなんだ・・・勿体ねえの』

子供の頃に知っていれば、さぞかし楽しい冒険になっただろうに。ぐるりと見渡した天井は高く何処に繋がっているのか分からない。

『子供のころさー、何でも楽しかったよな』

「そりゃそうだろ、子供の遊びは殆どが本気だからな」

目いっぱい遊んで、疲れたら朝まで寝る。

好きな事だけをして、嫌な事はなるべく避けて。

いずれ嫌でも大人になるのならば、子供の時ぐらいは避けて通りたい道を選び、楽な道を選びたい。

大人になったナルトは嫌な事があっても逃げる道が無い時がある。

避けて通りたい道も、選ばなければならないときも。

懐かしい記憶の中に確かにあった童心の心は、時々懐かしくもあり、輝いている時もあった。

楽しかった。

げらげら笑いながら何かをするのが。

『・・・あの頃は、早く大人になりてえって、おもったのになぁ・・・』

人は我が儘な生き物だから、そう思わずにはいられない。

『なのに・・・こんな遊びすら真面に出来なくなっちまって』

「きっかけさえあれば出来る事だ、俺たちなら。」

『・・飯をかけて?』

そうだ。だから本気になって誰かを捕まえようとする。なんて単純なのだろうか。

その単純さに、あの時の記憶が甦りそんな賭けすら忘れてしまう。

「・・・落ちるぞ」

『あ?それヤバいから!』

ずりずりシカマルの方にぴたりとくっつき、ナルトは気付く。

『シカマルもこんなに大きくなったんだよなー』

似た身長だったのは、今ではナルトが見上げるほうになってしまった。

「ならないとおかしいだろ・・・」

シカマルもしゃがみ込み、肩を並べるが彼の方がそれは高い。

伸びたナルトの手はシカマルの肩に触れる。

『何でこんなに広くなれる・・・んだ!?』

突然シカマルが追い被さりナルトを頭から包み抱く。

「静かにしてろ・・・」

耳元で囁かれ頷くナルト。

誰かが来たのだろう。意識を向けていたシカマルに助けられたと素直に感じた。

これすらも懐かしかった。

良くシカマルと一緒になる事が多く、二人で隠れてばかりいた。中々見つからなくて強いと言われていたが、それはシカマルが同じようにしてくれていたから。

そうでなければ簡単にナルトは掴まっていて、走り廻ってばかりいただろう。

そしてその温もりに時々眠ってしまうことも。

『・・・平気?』

「ん?・・・まだダメだな。」

見上げて尋ねるがシカマルは天井を眺めているだけだった。それでもナルトは彼から離れる事は無く、そのまま包まれたままでいた。


(・・・やばいな)

このままだとナルトに眠気が襲ってきてしまう。

何度もシカマルの腕の中で寝てしまった事があるナルトは、眠気を何とかしようと考える。

『・・・・・・ない』

「・・・あ?」

なにがだよ。問いかけるシカマルにナルトは気まずそうな声で告げる。

『シカマルが温かいから、眠くなってきたんだよ・・・』

「寝ればいいだろ」

『捕まるから!!』

声の音量を下げて返すと、シカマルはナルトの背中を撫で始める。

『ちょ、シカマル・・・ッ』

「よく寝てたろ、こうすっと」

だからいまは、言いかけたナルトの声を塞ぐようにシカマルの唇が重なった。

『−−・・・っ!』

下唇を甘噛みされ、吸われナルトの大きな瞳は見開かれる。

「ーー寝てろ」

『だっ、からって・・・これするか・・・』

「ほんとに覚えてねえんだな・・・」

ナルトの記憶ではシカマルとの口づけは今が初めてで、けれど彼の発言からすればそうでは無いと言っているものだった。

「まあ、寝てたしな、お前。」

『・・・・・・』

言い返す言葉が見つからない。寝ていた自分に目の前にいる男は何をしたのか。けれど眠気が無くなったのは何よりの助け。

「変な事はして・・・いてえから」

『おっ、おま、俺に・・・そんな・・・っ』


ぼかりと彼の背中を叩き混乱したまま言葉にしても、繋がらない。けれど言いたい事はシカマルにも分かっていた。

「ご褒美的なものだからそんな気にすんな」

『お前ムッツリか!!』

この野郎!人が寝ているのをいいことにそんな事をされていたとなると、顔が熱くなってくる。

「やっぱ起きてる時にしても罰は当たらないだろうし・・・」

『バチあた、あ、なにす・・・んう!』

逃げるために身体を捩るがその反動でシカマルはナルトの唇を塞ぎ、空いている隙間に舌を入れる。

『ん、シ・・・ッ』

鹹め取った下のぎこちなさに、口づけさえ碌に知らない事が、シカマルの背筋をぞくりとしたものが駆け上がった。

「ーーもっとするか?」

上唇をゆっくり舐めながら目を細めて笑うシカマルに、どくり、と胸が強く打つ。

「ここは、誰もこねえから捕まる事なんかねえよ・・・」

顎を持ち上げ、そこを甘く噛み付くとナルトの腰が震え
る。

『なんで、わかんだよ・・・んっ!』

「さっきの岩が行き止まりと思ってるからな。」

だから来ない。言い終わると深く口づけをされ、ナルトはシカマルの腕にしがみ付く。

くらくらする頭の中で、ナルトは思い出す。

童心にかえり懐かしんだが

これは間違いなく、下心だと。





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あきゅろす。
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