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NARUTO
四 

着替えが終わりナルトは荷物を取りに教室に向かった。

キバは居たけどシカマルの姿は無かったな。

落胆するが今の状況なら誘えるものも誘えない。

なんだかもう、駄目なんじゃないか。

それはそれでショックだ。

『・・・腹減ったー・・・』

暗い気持ちを振り払い、何か買って帰ろうかな。カバンを肩に掛け音楽プレイヤーをそのポケットから取り出し選曲をしていると、ひやりとしたものが項に触れ驚く。

『・・・ひっ!』

そこに手をやり振り向くとシカマルの姿に驚き、身体が机にあたった。

『え、な・・・いてっ!!』

「んなに驚くか?」

『びっくりしたって・・・』

冷たいし。シカマルが居る事に本気で驚き、ナルトは机のうえに腰かける。

『・・・なにしてんの?』

居たなんて。

しかも休みなら寝てばかりいるシカマルが目の前に居ることが驚きだ。

「空手、やってたんだな」

『あー・・・うん、そう』

やってたよ。気まずい顔を浮かべながら言葉を返すナルト。

「・・・怪我か?」

『いや。ただ目指すものが無くなった。』

俯き自分の手を眺め、自嘲的な笑みを浮かべた。


「・・・そうか」

久しぶりに話す会話が空手の事なのが苦しいが、それでもナルトは嬉しかった。

机から腰を上げて立ち上がりシカマルにひらひら手を振った。

『・・・じゃあね』

「強かったんだな、お前」

『――は?』

見てた。すれ違いさまに言われ立ち止まる。

ナルトは彼が見に来ていた事に全く気付きもしないで、キバと話している時に、姿なんてなくキバも言っていなかった。

自分はシカマルに嫌われてしまったから。

そうだと思っていたのに

「最後まで見てたんだよ」

『・・・影薄くなった?』

驚きと嬉しさで、冗談が出てしまう。

「薄くねえから。」

『いや、うん・・・ありがとう』

照れくさそうに微笑むナルトの頬は微かに赤い。

なんて単純なのだろうか。

落ち込んでいた気持ちが一気に晴れてしまう。

「細い身体して、あれか・・・」

驚いた。喉を鳴らして笑う姿がナルトには少し大人に見えた。

『それなりに鍛錬した証拠ですー!』

悟られたくなくて、ナルトはそっぽを向いて言葉を返すと、少し低い熱が頬に触れる。

「褒めてんだろうが。」

なにむくれてんだよ。苦笑を浮かばせながらシカマルは柔らかなナルトの頬を突っついた。

それが何だかムズ痒くて、嬉しくて、胸がきゅんとしてしまう。

そして、こんなやり取りが久しぶりなせいで気分も上がってしまう。

『ちょ、俺の柔らかな頬っぺたはそう安くねえよ!』

けたけた笑いながら彼の手を取って、お返しとばかりにいつも綺麗に纏めている頭に手を伸ばした。

「そこは駄目。」

いとも簡単にナルトの手を取り、シカマルはそのまま視線を合わせた。

何時もと少し違う雰囲気にナルトの胸はとくりと脈を打ちながらも、きょとりとした顔を浮かべる。

『どしたどした?』

自分の気持ちを知られたくない。

『なんかこうやって話すの久しぶりだなー・・・』

本当に久しぶり過ぎて、何を話していいのか分からない。

沢山ある筈なのに、いざこうなると出てこない。

『俺さー、俺、さ・・・』

ナルトの頭が下へと下がった。

シカマルに嫌われたのかと思ってた。

そんな事を言いそうになって。

もし言葉にして、自分はシカマルの事が好きだと気付かれたら、きっともうこんなやり取りすら出来なくなる。

こうやって、視線を合わせる事も

こうやって、肌が触れ合う事も無くなってしまう。

そんなこと耐えられない。

好きだから傍に居たい。

好きだから触れていたい。

すきだから――・・・

「・・・ナルト?」

どうした?

黙り込んでしまったナルトに気付いて、シカマルは下から顔を覗き込んだ。

「なに、ないてんだ・・・」

そっと目許に触れる彼の指が余りにも優しくて、ナルトはズキリと胸を痛める。

『・・・ゴメン。なんか目がひりひりしてきてさー!』

あはは、と空笑いを浮かべて明るくしようと振る舞っても気持ちの整理が追いつかない。

「ゴミでも入ったか?」

みせろ。遠慮なんてものはせずシカマルはナルトの顔を上へと向けさせ、蒼く綺麗な瞳を覗き込んだ。

『・・・っ!!』

此れには流石のナルトも息を飲んでしまい、顔が赤くなってしまう。

こんな異性にする事を、目の前の男が好きだと言う自分にしてくるのだから。


「動くなよ。」

『い、いや、近い。近いですシカマルさん・・・っ』

視線が重なる事を恥ずかしがって、きょろきょろ動く瞳。

本当は目なんてヒリヒリしていないのに。

そんなのウソなのに。

早く何とかしないと。

『ちょ・・・シカマル・・・っ』

何時もより近いシカマルとの距離が

羞恥過ぎて呼吸すら止めてしまう。


「お前、その顔反則」

『かっ、顔って言われても・・・っ!』

抑えきれねえ。

一瞬だけ変わった彼の瞳に驚くが、視界に広がった影と唇に温もりを感じて目を丸くした。

『・・・っ。』

「お前が悪い。」

悪い。そう言われても何が悪くてキスされたのか分からない。

ただ言えるのは驚きしかない。

この打ち付ける胸の鼓動も、呼吸もどうにかしないといけないのに。

「悪かったな。こんな事しちまって。」

『え、あ・・・大丈夫・・・』

俺からすれば嬉しくて、悲しくもあるけれど。

「多分もう無理だ。」

『無理・・・?』

ずきりと胸が痛み、胸元に手を当ててしまう。

悲しい。やっぱりシカマルに気持ちが知られていたんだ。

だから最後にこんな事をしたのか。

悲しくて、苦しくて、今直ぐ逃げ出したくて仕方が無い。


――お前が悪い

――多分もう無理だ

軽蔑されてたんだ。

だからあんなにそっけなくなって、一緒に居ることが減ったんだと。

『・・・んで、そっ・・・』

決壊した。

ボロボロ涙が止まらない。

「おい、ナルトそんなに泣くほど・・・っ」

『気付いてたらこんな事すんなバカっ!俺が悪いんだろ、俺がお前の事好きな事知ってて最後にこんな事すんのかよっ!!』

違う。

ほんとうはこんな形で好きって言いたかったんじゃない。

こんな形で気持ちを、想いを言いたかったんじゃない

けど、シカマルにそう言われたら、溜まってたのが一気に出てきて

自分でもコントロールが効かないんだ。

『そんな事されてもちっとも嬉しくなんかねえよ!』

「ちょっとお前黙れ!」

『やだ!はな、離せシカマル!もう近づいたりしねえから離せって!』

声を荒げるシカマルの声と共に掴まれた腕を振りほどきたくても彼がそうさせない。

けれどナルトが本気で怒れば自分なんか直ぐに負けてしまう。

「だからおまえは・・・っ」


自己完結すんじゃねえ!そう怒鳴りながらナルトを担いだ。




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あきゅろす。
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