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NARUTO
こんな時でも

久しぶりにツーマンセルでの任務は、気心知れた相手だと苦にならない。

なら恋人同士のツーマンセルならどうだろうか。

最初のころは浮かれたりしたが、いつしか任務の遅れは二人の密な時間を邪魔するものと認識するようになった。

知らない綱手は二人の速さに、よく任務を組ませる事が多い。それでも二人の時間には変わりないのだが、触れ合う事が出来ないのが腹正しいと思っている。

二人は兎に角一緒に居たいのだ。

そんな今日に限って、カカシの荷物が多いと感じていたナルトは、あまり気にせずにいた。

至って順調に進み、問題無く終わろうとしていた時に、それは急変した。


「ナルト」

耳通りのいい声が届きナルトは立ち止まり振り向くと、何時ものにこりとした笑みを浮かべていた。

『どしたの・・・?』

「先生やっぱり諦めきれなくて・・・」

『――は?』

唐突に告げられた言葉にナルトはきょとんとした顔でカカシを見上げる。相変わらずにこりとした笑みを絶やさない彼に、不気味さを感じる。

「そうするべきだと思う訳なのよ。」

『だから、何にたいして言ってるのか理解出来ないってば・・・』

しかも空は茜色になっていて、傾こうとしていた。

「こういった時でないと無理なんだよね。」

ほら行くよ。ナルトの手を掴んでカカシは慣れた足取りで何処かに向かう。

『ちょっ、せん、せ・・・っ』

どんどん林の奥に向かう彼に、ナルトはこの先に何があるのか分からない。

『どこ行くんだってばよー・・・』

生い茂る木々たちに、周りは暗くなっていき、匂いが変わったのに気付いた。

『・・・この匂い』

「なかなか無いでしょう、こういうの。」

自然と湧き出た天然温泉。

大きな岩の空洞からは岩を伝いながら源泉が流れ、川へと流れていた。

これから夜の姿に変わろうとしている空は綺麗な茜色を変えようとして、水面に映る姿は違う美しさを表していた。

『・・・温泉?』

「そ、ナルトとゆっくり入りたくてね。」

荷物の量に納得が出来たが、カカシがそんなことを考えてくれた事が、何よりもうれしくて背後から抱きつく。

「ナルトには我慢させてるからね・・・」

温泉が好きなナルトは、付き合う前は良く入ったが、この年上の恋人と付き合うようになってからは入れなくなった。

入れるのだが、彼があちこちに印を付けるせいで諦めざるを得なかったから。

入れたとしてもその日の夜が辛くなるだけで、意外と嫉妬深い一面が彼にあったことがわかった。

「おいで」

先に入ったカカシはナルトの手を取り両腕の中に包む。

ナルトもまた、カカシが口当てを取った姿を誰かに見られたく無くて何も言わなかった。

『きもちー・・・』

「たまたま見つけた時、いつかこの辺りを通る時にナルトと入りたくてね。」

『ありがとう。』

見上げて微笑むナルトは温泉の温かみで頬がうっすら赤く色づき、濡れた髪の毛が項くっつき色めいていた。

『小屋とかあったらゆっくりできたのになあ・・・』

残念。ひと眠りしてまた入るのもいいだろうし、川で魚釣りを楽しんだり泳いだり。

一日をのんびり過ごせる贅沢な時間だろうな。夜空に変わり月を眺め、瞬く星たち。誰にも邪魔されずゆっくり入る温泉もまた、贅沢。


「でも、帰るのもったいないね」

『うん、勿体無い!』

カカシの胸に寄りかかりながらくすくす笑う二人。

『寒い季節の時は風邪ひくな、これ。』

「だろうねえ、また帰ったらお風呂かもしれないね」

『流しっこしよ!』

はいはい、柔らかなえみを浮かべカカシはナルトの項にキスをした。

「お腹もすいたし、ご飯食べたら甘いの貰わないとね」

『虫歯になるからダメです。』

腹に回っている腕を叩くと、カカシは瞳を細めて耳朶に噛み付く。びくりと震え、お湯がはねた。

『何で噛むんだよ・・・』

「気に入らないから。」

そんなことを真顔言うな。普段からにこやかな顔をしている彼が、ナルトに見せる本来の表情や声が好きでとくりと胸打つ。

『食べるのは・・・先にご飯食べて、お風呂入ってからね。』

「お風呂の時でも嬉しいなあ・・・」

『絶対だめっ!!』

からかいを含ませると思惑道理頬を赤らめる姿にカカシは可愛くて仕方がない。

こんな時でも普段と変わらないやり取りが好きで、カカシはまた小さな赤を項に付けた。




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あきゅろす。
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