NARUTO
バレンタイン記念
今日はバレンタイン。
殆どが好きな人にチョコを渡す日。
ナルトもその中の一人で、好きな人にチョコを渡そうとしていた。
けれど相手は同じ同性であり、しかも自分の先生ときたら親しみを込めたチョコとしか思わない。
それでもナルトはカカシに渡そうと決めていた。
『・・・受け取るかな』
とぼとぼ歩きながら考えていると、目の前から渡されたであろうチョコを持ち歩いている姿があった。
「あ、ナルトじゃない」
『先生、今年もチョコ一杯貰ったんだ・・・』
チリチリ痛む胸や嫉妬している自分が嫌になる。
そんなの受け取らないで。そう言いたくなるのを我慢するのは、好きになってからは毎年のこと。
「んー、いらないって言ったら、置かれるようになっちゃってね・・・」
困った笑みを浮かべるカカシに、ナルトは切なくなる。
自分が女だったら、生徒として受け取って貰えただろうか。
少しは、彼に好意を寄せる女達より優先されるのだろうか。
もしくは、想いを伝えれたら実っただろうか
そんな醜い感情ばかりがナルトの中を渦巻いて、切なくなる。
「ナールート？」
どうしたの？覗き込むカカシに気付いて、ナルトは目を丸くして後ずさる。
『びっ・・・くりしたー・・・』
どくどく煩い心臓に手を当てて、呼吸を整えた。
こんなことですらナルトの胸は速まるのを彼は知らないだろう。
「ナルトは貰った？」
『・・・サクラチャン達からはね』
聞かないで欲しい。さっさと渡してしまいたい。
想いを込めて伝えれないけれど、親しみを込めた物なら受け取ってくれるだろう。
緊張しながらいつもと変わらない声で伝えられるかも不安だった。
『せんせい・・・あのさ』
「んー？」
なに？首を傾げるカカシに、ナルトは躊躇いながらポケットから小さな箱をカカシの前に差し出す。
「先生にくれるの？」
『ん、いつも世話になってるから・・・』
受け取って貰えるだろうか。不安が募るばかりで、カカシからの言葉がないのが怖かった。
『・・・先生？』
「お世話になってるから、くれるの？」
『う、うん・・・』
それすら嫌だったのだろうか。ぐるぐる回る様々な感情がナルトを襲い、喉奥がひりひりとする。
「なら、先生、いらない。」
『・・・っ！』
にこりと告げられた言葉がナルトの頭のなかを白く染めていく。
震える手が箱を小刻みに揺らし、唇が震えた。
『あー・・・ごめんね、忘れて・・・』
ちゃんと笑えているだろうか。
困らせてしまっていないだろうか。
ジワリと浮かんでくる涙が零れ落ちる前に、箱をポケットにしまおうとすると、カカシは呟く。
「先生、ナルトからは、素直な気持ちが聞きたいんだけど？」
『・・・』
手を掴まれてカカシは俯くナルトを見つめるが、震えている手に気付いて彼は口許を笑わせる。
「お世話になってるからって、それだけでこんなに震えちゃうの？」
違うでしょ。やさしく問いかけると、ぽろりと地面に落ちる雫。
『・・・ふっ、震えるんだってば・・・』
引き攣りそうな声を我慢しながら伝えるが、涙は止まらない。
「素直な気持ちじゃないからでしょ？」
知っている口調がナルトを混乱させ、血の気が一気に引いていく。
「今日はチョコを渡す人が、相手に素直な気持ちを伝える日、なんだけどね」
追い打ちとも言える言葉にナルトは戸惑い胸が締め付けられる。
『おっ、俺は・・・』
伝えて、断られたら？
頭の中でナルトに問いかける何か。
カカシは、お前をただの生徒としか思ってないよ？
（やめてくれ・・・）
伝えられない気持ちなら、誤魔化せばいいだけだろう？
（そんなんじゃない）
そんな軽い気持ちで好きになったんじゃない
沢山悩んで、諦めることにした気持ちは、このままを望んだ自分は
ーー・・・なんだったんだろう
このままを望んだつもりなのに、それを破ろうとしたものは・・・
『カカシ先生・・・』
「なあに？」
やっぱり気持ちを隠してなんかいられない、女々しい気持ちだった。
『俺は・・・先生が好き・・・』
伝えれた。つっかかっていたものが取れた感覚と、すっきりした気持ち。
小さく息をはくと、何かが落ちる音がして、ふわりと包まれた。
「先生、いらないよ・・・」
『・・・だ、から・・・っ』
つかの間の安堵感はまた嫌な感情が生まれてきた。
「いらない、ナルト以外のチョコなんて」
『・・・・・・』
追いつかない感情は忙しなくて、胸が高鳴り涙が零れる。
「チョコも、ナルトも、先生にちょうだいよ」
顎を掴まれ見上げたナルトは、微笑んでいるカカシに胸がときめいた。
『・・・貰ってくれるの？』
戸惑いがちに聞くと、カカシは言葉よりもナルトに口づける。
『・・・っ！』
一気に熱を奔らせナルトの頬は赤く染まり瞳が彷徨い動く。
「ねえ、先生ナルトのチョコ食べたいし、食べさせてよ」
『・・・うん。』
頬にキスをされて、ふにゃりと笑うナルト。
バレンタインは、素直な気持ちを相手に伝える日。
ナルトの気持ちは穏やかになった。
［前へ］［次へ］
[戻る]
携帯モード]
[
URL送信]