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NARUTO


喉がひゅうひゅう鳴り、咳き込むナルトの背中をさするシカマル。

苦しくて生理的な涙がぱたぱたと布団に落ちる。

「戻しそうか?」

『な、い・・・っ』

ふるふる頭を振ったが眩暈におそわれる。

「部屋いくぞ」

『・・・っ、や!』

移動が面倒でナルトは嫌がった。

どうせ数十分後には彼だって帰ってしまう。だったらこのままが一番楽で寂しくならない。

「嫌じゃねえだろうが・・・」

『・・・楽だから、此処がいい』

布団の中に潜ろうとするが、掴んだ手を離したくなくてそこだけ外に出した。

「熱、39℃あんだぞ」

『・・・これ、俺のベッドだもん』

ここでいい。頭まですっぽり布団を被ると、シカマルの溜め息が聞こえる。

子供くさいのは分かっているし、彼を困らせたい訳でもなく、部屋に行ってしまえばきっと長くいそうで、帰った時が寂しくなってしまうから。

それは今のナルトには耐えられなかった。

『冷蔵庫あるし・・・食べ物あるから、此処でいい。』

するり、腕の力が抜けて床に手が落ちる。

『かぜ、うつっちゃうよ・・・』

身体を丸め鼻水声で告げると、がさりと紙の音がした。

「39℃だ。ここが良いなら座薬挿されるのと部屋で寝て錠剤の解熱剤がいいか選べ。」

『ずりぃそれっ!あ・・・さみぃっ!さ、げほげほっ!』

勢い良く起き上がり文句を言うが、寒さと咳には叶わずまた布団の中に潜り込む。

「どうすんだ?」

『・・・っから、ずりぃって・・・』

しゃがみ込んで尋ねるシカマルを、布団の隙間から睨み付けるナルト。

狡いのは百も承知していて、彼はベッドで寝かせたかった。

『・・・何で、知ってんの?』

「あ?お前言いそうに無いからアスマに根回ししといた。」

ばればれだった事にナルトは視界に見える肩を力無く叩く。

『も・・・なんなんだよ、それ・・・っ』

そこまで考えてくれていた事が胸を熱くする。

連絡なんてするもんか。意地をはっていた自分が情け無くて、ナルトは観念する。

『・・・部屋、いく』

どうやって入ってきたのかはまだ知らないけれど、こうして来てくれて我が儘を言ったり、困らせる自分が嫌だった。

「じゃあ行くぞ。」

布団から出ようと身体を動かすと、そのままシカマルに抱き上げられて驚く。


『ちょ・・・なにしてんの・・・っ!』

かぁ、と頬が熱くなり軽々と持ち上げる彼に胸が高鳴った。

「歩かせるより早いだろ」

『やだって!ほんと・・・っ、やだ、はっ、恥ずかしい・・・』

強く告げたが続く言葉は弱々しく、どうする事も出来なくて、ナルトは両手で顔を隠す。

それを横目で見たシカマルはふっ、と目元を笑わせて階段を上がった。

「ドア開いてる部屋か?」

『・・・うん』

奥のドアが開いていて室内に入る。

綺麗なままのベッドは、間違い無く両親が旅立った日からリビング生活をしていたのが分かる。

「部屋で寝てないだろ・・・?」

『・・・・・・。』

尋ねられたら言葉に返すものが無い。布団を捲られ降ろされると、ナルトはまた頭からそれを被った。

『・・・ありがとう』

「それ、顔出して言えって」

くすくす笑いながらベッドサイドに座り布団に手を伸ばす。

『鍵、あいてた?』

「いや、親から鍵預かってたから。」

初耳で目を丸くする。まさかそんな事をしていた良心に、けらけら笑っている両親の姿が浮かんできた。


久し振りに寝る自分のベッドはやはり気持ちがいい。

お粥を作りに行ってくれたシカマルが部屋から居なくなると、頭を出して天井を眺める。

何時から居たのか分からないけれど、やはりナルトは嬉しかった。

思わずにやけてしまう口許を布団で隠し、作っている姿が見たかったな、とも思う。

『あー・・・やばい』

にやけが止まらない。

頭では解っているのに、恋をすればこうもプラスになってしまうとは思わなかった。

頼まれていたのもあったから来てくれているんだと

なによりも何かを優先してくれたのは嬉しいと素直に感じても、それが本当に良かったのかが不安にもなった。

『てか・・・何時なの?』

机にあるデジタル時計をみれば、昼前なのが分かり瞼を閉じる。


寒さを感じながら、遠退いていく意識に逆らわずに眠った。





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