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NARUTO
十二

火影室には関わった者達がずらりと立ち並び、綱手はなんとも言えない顔を浮かべていた。

「聞くが、ナルトをただ見詰めていたい集まりはあっちにいけ。

次は不法侵入し、盗みを働いた奴はそっち。

勝手に鍵を作った奴はそっち。

寝室で馬鹿な事をしたやつはこっちと、手紙を送りつけたや・・・ああもう、あちこち動くなっ!」

ばんっ、机を叩く綱手。

一つだけではなく二つ三つやらかした者達があちこち動き回り、鬱陶しく感じた綱手。

ネジ達から聞いた業者達は、社長がナルトの事を息子のように感じている為、肌身離さずだったらしい、と。

従業員が何かを見たのは、犯人がナルトの家から出て行った姿。けれど薄暗くて解らず本人だったかも知れないと考えていたらしい。

シカマル達が捕らえた者達は

ナルトをただ愛でていたい。というグループと

鍵が開いているのを聞いて、出来心でハンカチやタオル、他の物などを盗んでしまったグループ


好きすぎても手が出せずに妄想族となり寝室で自慰行為をしてしまったグループ


最後が、ナルトをコスプレさせたい者と、ナルトの手で触れて欲しかった者達。

「とんだ変態ばっかの集まりじゃないか・・・」

けれど犯罪をおかしたのは事実であり、ナルトの精神的苦痛に性的な暴行をされたようなものもあり、罰せなければならない。

綱手はどうしてくれようか、と頭の中で色々と考えていた。

二度と起こらないように。


ずっと繋がれた手は暖かい。

暖かくて、彼の手の大きさを実感した。

さっきからするいい香りに、ナルトは久し振りに空腹感を感じる。

「あ、来たきたー!」

イノが気付き手招きをすると、中央にある大きなテーブルには沢山の料理があった。

「チョウジ、来たわよ!」

はやくはやく、とチョウジを呼び全員が室内に入ると彼が言葉にする。

「ナルト、ナルトの大好きなの作ったから、沢山食べてね。」

するりと手が離れ、風が小さく舞ったのはナルトがチョウジに抱きついたから。

『・・・っ、チョウジ・・・ありがと』

「僕は、皆と違ってこれしか出来なかった・・・」

『んな事、ねえ、馬鹿言うな・・・』

いい雰囲気が流れているが、それを打ち破ったのはやはり明るいキバだった。

「俺達、あちこち走り回って捕まえたってのに・・・ハグねえのかぁぁぁっ!!」

どうなんだこんちきしょうめ!子供のように拗ねるキバに、ナルトは同じ様に抱き付いて礼を告げていった。

『・・・・・・』

けれどナルトは戸惑っていた。

サスケにそれをしていいのかどうか。

ナルトの両手は広げてはいるものの、躊躇いを滲ませていたら、溜め息がこぼれる。

「さっさとしろ、ウスラトンカチ」

『・・・っ、ありがとう、サスケ』

抱き付き、最後になったシカマルの方に身体をむけるとすっぽり包まれた。

「ま、これで安心だな。」

『・・・うん、ありがとう、シカマル』

後は家を見つけるまで宿暮らし。

仲間やカカシ達に助けてもらい、ナルトは有り難い気持ちになる。

大切なんかじゃなく、宝物なんだと実感した。

自分の仲間達は、宝物だから傷をつけてはいけない。

けれどその宝物達を傷付けていたのは自分だったんだと、気付かされた。


『チョウジうめー!うめーよーっ!』

ぎゅーっとまた抱き付くナルトに彼は大袈裟だよ、とくすくす笑う。

「あんたお肉ばっか食べてないで野菜食べなさいよ!」

『いていていていてーっ!』

耳を引っ張りイノは野菜のある方へと引き連れ歩く。

「ナルト、ほら野菜よー」

サクラが満面の笑みで目の前に野菜を見せると、ナルトの顔は一気に青ざめる。

『むりむりむりむりむりっ!』

ぜってー無理!両手で拒絶すると、サクラは皿を置いて胸倉を掴んだ。

「・・・食べるわよね?」

『・・・三竦みだ、これ』

こえー!叫ぶとナルトは逃げ出す。

「やっと、賑やかさが戻ったって所か」

ネジが呟くと、イノは頷く。

何時もと変わらない、屈託無く笑う姿。

あんなに弱々しく、涙を流した姿は誰もが忘れられない記憶になった。

片付けが終わって2人は帰宅し、ナルトは風呂に入り荷物を整理していると、風呂上がりのシカマルに、部屋に呼ばれ向かった。

『・・・なんか、あった?』

ベッドに座っているシカマルに尋ねると、手を掴まれる。

「まだ、此処で暮らしてろ」

『いや、俺・・・家見つけるまで宿・・・っ』

ぐいっ、と引かれナルトはバランスを崩し膝はベッドに乗りシカマルに抱き留められた。

「無理だろ、それ」

『・・・なんで無理なんだよ』

無理じゃねえよ。離れようと身体を動かすがびくともしない。

「終わったからって、簡単に寝れねえだろ、ただでさえ中身は繊細なんだから、此処にいろ。」

『寝れる、俺は繊細なんかじゃねえし・・・ぐーすか寝れる・・・っ!』

ぽろりと出た意味が分からない。

ぽろぽろ涙が出るのは、終わった事の安心感からくるものなんだと。

「寝れねえよ、お前は。」

背中をゆっくりさすられ、肩に顔を埋めるナルト。

「思い出して、泣くだけだろ・・・独りでなんか泣かせねえ、泣くなら俺の前で泣け。」

こわいなら、背を撫でていた手はナルトの手首を持ち上げた。

「こわいなら、傍にいて、一緒に寝てやる」

約束をするよう、シカマルはナルトの手にキスをした。

『ちっ、ちが・・・っ、相手違う・・・っ!』

顔を真っ赤にして、胸が高鳴った事に動揺するナルト。

『おっ、シッ・・・キャラちが・・・っ!!』

言いたい言葉すら上手く出ないナルトを、シカマルはくすくす笑う。

「独りで抱えること、もうすんなよ?」

『・・・今のシカマルが悩みだっつーのっ!』

なんだこのお色気男は!真っ赤な顔のまま逃げようと身体を捩るがやはり上手くいかない。

自分の心臓が違う生き物のように動いているようで、苦しかった。

「お前が居ればいいだけだ、諦めな」

『なんだよそれっ!俺邪魔だろ!』

諦めずに逃れようとするナルトを黙らせようとして、シカマルは耳朶を噛む。


『ひぃっ!?』

びくん、と震える肩と、ぞくりとしたものが体にはしって目を見張る。

「邪魔な訳あるか、ぐだぐだ言ってねえで寝るぞ」

『まっ、寝るのは・・・ぶっ!』

ぼすり、と沈められると、そのままシカマルに抱き締められてまた胸がとくり、と高鳴った。

『・・・・・・』

なんか変だ。感じながらナルトは大人しく瞼を閉じた。

何時も何かあれば思い浮かぶ人はシカマルの姿。

あの時出た名前もシカマルだった。

ほっとした自分がいて、この包んでくれる腕が、体温や温もりが

『・・・あ、れ・・・』

パチリと目が開き口元に手をあてた。
なんだかそれは、まるでシカマルに恋をしているようで身体が熱くなった。

気付かなかった振りをしてナルトはまた瞼を閉じるが、今度は自分の鼓動が五月蠅くて眠りの妨げをする。

「・・・ナルト」

耳元で囁かれた声に肩が震えた。

「早く落ちろ・・・」

『・・・あ、うん?』

寝れるか!頭の中で突っ込んだが、ナルトはこれからの生活が不安に感じてしまう。

きっと間違いなんだ。

ナルトは呪文のように頭の中で呟きながら眠った。

「・・・意味、わかってねえだろ」

そっちの落ちるじゃねえ。

けれど自分の指を握りながら眠っているナルトを見て、シカマルは口元を笑わせて項にキスをした。

まだ始まったばかり。

これからを邪魔する者はいなくなり、彼はどうするのかは、また違うおはなし。




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