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NARUTO
世話係からの

里にとってあの日は複雑な日だったと誰もが感じていたのかも知れない。

何故彼女だったのだろうか。

口々に言う者は多かったが、いまとなっちゃ・・・


ぽすっ、と足に何かが絡み付いた。

「・・・ナルト?」

どうしたの。頭を撫でてやるとぎゅうぎゅうしがみついて離れない。

『おれっ、おれぇ・・・っ、ふえぇぇぇん!』

大きな瞳からぽろぽろ零れる涙。

カカシはまた誰かにからかわれたのか、と呆れ顔を浮かべて泣きじゃくるナルトを抱き上げた。

「何いわれたの?」

『おっ、おれ・・・っ、キツネって、言う・・・っ』

九尾が封印されている事は口外しない里の決まりとされ、思い当たるとすれば顔にある痣だろう。

『髪も、キツネみたいって、尻尾あるんじゃないかって・・・さっ、触って脱がそうとしてくる・・・』

カカシの穏やかな目は鋭さを浮かばせ、腹の中は煮え立った。

言葉の暴力は、純粋な子供からすれば殴られたのと同じでしかない。

「だれにされたの?」

『しっ、らない・・・大人・・・っ』

そいつ今すぐぶっ殺す。

鋭かった瞳はもはや獰猛で凶悪的なものへ変わり、声だけが優しかった。

「知らない大人にされたの?」

こくり。頷いたナルトにカカシは抱き締める。


「どうやってにげたの?」

『九喇嘛・・・っ』

怒った。全身をひくつかせて泣く姿に、カカシは切なくなった。

どれだけ怖かっただろうか、と。

まだ四歳と言えども、可愛らしく綺麗な容姿に火影であるミナトも心配でたまらない。

平和と言えども、一人歩きをしようものなら声がかかり物で釣ろうとする者もいた。

火影の息子だと分かっていながらも、腐った大人は子供だから解らないと考えている者もいる。


「ねえ、ナルト、一人だったの?」

『と、ちゃ・・・っ、これ・・・』

よれよれになった風呂敷に包まれているのは、間違い無く弁当でナルトはこれを届けるのが好きだった。

『ぐちゃぐちゃ・・・っ、ううっ』

またぼろぼろ泣き始めたナルトを、カカシは宥める。

こんな事が何時まで続くのかなんて分かりはしないけれど、縋りつく手はカカシを望み赤らんだ顔で、潤んだ瞳を細ませてとびきりの笑顔を向けてくれるのは・・・




ずんずん廊下を歩き、扉の前で止まりそれを開いた。

『父ちゃん弁と・・・うぶふっ!』

「ナールートーッ!」

がばり、と抱き付いたのはこの里の長である四代目火影こと、父親のミナト。

未だに親バカ全開であり、デレデレな父親にたいして、息子であるナルトは最早諦めていた。


少し会話をしてからミナトと別れ外を歩いていると、カカシの姿があった。

『カカシ先生ー!』

笑顔で駆け寄りカカシの袖を掴んで見上げるナルト。

カカシもまたずっと面倒を見て、自分の生徒でもあるナルトには優しい。

「今日も弁当届けてきたの?」

『うん!そしたら先生と会えた』

無償の笑顔や甘えを向けるのは、カカシぐらいしかいない。

けれどカカシはそれを時々苦痛に感じてしまうのは、この一回り年の離れた少年に抱いてしまった恋心。

ナルトの中で自分が特別な存在なのはしっていても、それはただの信頼関係だとか兄的存在から来るものだと。

『明日の任務って牧場の手伝いだったよね?』

「うん、サクラが臭いがつくって愚痴ってたけど。」

仕方無いよね。やんわり笑うカカシだが、ナルトは楽しそうな眼差しを向けた。

『牛の赤ちゃんにミルクあげれるかな?俺乳搾りやりたくて楽しみ!』


明日は晴れるかな。空を見上げて楽しそうな顔を浮かべるナルトに、カカシは頭を撫でた。

「やらせてくれるよ、きっと。」

(先生が手配してるだろうから・・・)

『たのしみーっ!!』

ぎゅーっ、と抱き付くナルト。

これが、何時までも続けばいいと思ってた。




駄目だと、気付いたのは何時だっただろうか


心も身体も成長した時だったか、気付いていながら気付かないフリをしていただけなのか


ナルトは18歳になり、童顔から大人の顔立ちになり、身長も伸びた。

ただ、変わらないのは胸にずっと秘めている想いだけが、色褪せる事なく鮮明に色付いている。


ずくずく痛くて、ぼんやりした世界に映っていたのは、顔を醜く歪ませて笑っている知らない誰か

『・・・・・・っ』

もう隣にいるのは俺じゃないのに

あの頃とは、違うのにそれを望もうとする自分は、なんなんだろう


今になって後悔するとか

「貴方のせいよ、貴方が生きてるからあの人は・・・っ」


嫉妬で俺、こんな事になってんの?

女は怖いって、これだよな。

無害な振りして近付いて

『こんな事して、そいつはアンタに振り向くわけ・・・?』

皮肉を告げれば女は更に顔を歪める。

『振り向く訳、ねえだろ・・・っ』

片膝から両膝へと崩れ、痛む頭に顔を歪める。

「だとしても、あんたみたいな化け物はいなくなるべきなのよっ!」

″ナルト君、術式が大丈夫かみてあげるから、お腹出してごらん″

何でこんないやな物が出てくるんだよ。

女が振りかざしたクナイを流し見て、避けれる気力が無くて瞼を閉じた。

その暗い世界に見えたのは──・・・


″おいで、ナルト──″

『・・・・・・』

けれど痛みは無くて、重たい瞼を開こうとすれば何かに遮られる。

「・・・ナルト」

愛しい人の声に、全身が喜んでいるように熱くなった。

「酷いね・・・」

『・・・先生は、ずりぃよ・・・っ』

昔から変わらない。

いつもこうやって来てくれて、おかしくさせるんだから。

ナルトは薄れていく意識の中で、カカシの温もりを感じながら彼の腕に手を乗せた。

「――狡いのは、ナルトなんだよ」

カカシはもう片方の手についた血を払い、ナルトを抱き上げると、尻もちをついている女に睥睨の眼差しを向ける。

「・・・馬鹿な女」

「どうして・・・カカシさんを苦しめてる子なのに、どうして助けるの?私はずっと貴方の事を考えてこうして・・・」

「それが馬鹿な証拠だって、分からないから。」

カカシは決してナルトには見せない冷めた顔と、冷淡な声で女に告げると、彼は病院へと向かった。

狡いのはお互い様だが、カカシは強い想いをいだいたまま女との関係を保ってきた。

時にはナルトに似た女と一夜を共にしたり、触れられて高まった感情を女で発散させてきた。

長い長い想いは消える事はなく、このままだとナルトを無理やり組み敷いてしまうのかも知れない。

そんな恐怖をいだいたまま、カカシはそれでも大人の対応をしてきた。

けれどそれはいつしか限界という文字が浮んできて、姿を見ただけで手を伸ばしてしまう事もあった。

このまま連れ去って、寝乱れたひと時を過ごせれたら。

もしこの想いを告げてしまえば、どうなるかなんて分かりきっているし、何よりもミナトの信頼を裏切る形になってしまう。

ミナトの生徒であり、ナルトを赤子の時から面倒をみて、今では自分の生徒でもある。

溢れてしまいそうなコップと同じで、ぎりぎりを保つことが困難だった。


「ナルト!かかし、ナルトは一体どうしたんだい!?」

ミナトが血相を変えて現れると、カカシは頭を下げて説明をした。

自分が悪い。

カカシはそれしか言えないでいると、ミナトは溜息を零す。

「そんなフシダラな教え子に、俺の大事なナルト渡せれないよ、カカシ。」

「・・・はい?」

なんて言った、この人。カカシは頭を上げてミナトを見れば、にんまりと笑っていた。

「気付かないはず無いでしょ、まさかカカシがロリコンだったとはねー・・・ナルトはファザコンかあ」

パパショックだな。小さな呟きにカカシは自分の耳を疑ってしまう。

「先生、あの・・・それは・・・」

「あとは本人から聞きなさい、相談される方も悲しくなってくるんだからね。」

愛息子がまさか同性を好きになるとは思ってもみなかったミナトは、ショックで食事も睡眠も満足に取れなかったことを思い出す。

本当に気絶しかけたほど、ミナトにとってショックな一日だった。



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あきゅろす。
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