NARUTO 六 ベッドの上に沈まされ四肢をはりつけにされるようにして押さえ込まれながら、力以上にシカマルのきつい言葉がナルトの顔を歪ませた。 「それともこうなるように、おまえが仕向けてんだ?」 見上げた男は平坦な声でつげ、手首を締め付けるシカマルの指の強さが、彼の怒りを象徴しているようでたまらない。 ナルトにはただ理不尽で腹正しいと感じるのに、瞳が真摯な眼差しを向けられているのに気付く。 けれどナルトにはこれすら慣れてしまっているのに気付いているのだろうか。 『・・・無知なんかじゃねえよ』 諦めを含ませた声にシカマルのてがぴくりと動いた。 『何回もこう言う事あったし、逃げてきたけど・・・噂も色々あるから、お前等にまで伸びたら嫌なだけだ。』 自分の事で誰かが傷つくのをみたくない。 ふっ、と軽くなった手首に視線を向けると、額に鈍い痛みがはしった。 「・・・それ、そのまんま熨斗つけて返してやる。」 『返すなよ・・・』 何て言いぐさだ、と思いながらも先程とはうってかわって柔らかくなった指先が頬を突っつく。 「俺達は、お前が大事だ。大事だからこそ守らなきゃならねえ」 シカマルの言葉に戸惑い瞳がさまよい泳ぐ。 「もうナルト一人で抱えられるものじゃねえだろ・・・」 悪かったな。ぐっ、と腕を引いて起きあがらせると、そのままナルトを抱き締める。 いつ以来だろうか、誰かの温もりを感じたのは。 『・・・面倒事嫌いなくせに』 ようやるわな。こつり、と肩に額をつけ口元が笑った。 「・・・慣れだろう、そればっかりはよ」 何度となく経験してきたから言えた台詞で、こんな事は初めてだったがシカマルは小さな肩を抱きしめ、細くなった腰に手をまわした。 『あ・・・宿に戻って荷物・・・っ!』 そろり、と撫でられた腰がくすぐったくて脚が跳ねる。 「こんなに細くなってたのか、お前」 『ちょ、くすぐって・・・っ!』 笑いを堪えようと力を入れ肩を震わす。 「荷物ならもう手元にあるから安心しろ」 『・・・へ?』 彼はこんなに行動力があっただろうか?小さな疑問が生まれたが、ナルトはこれで良かったのか心配にもなる。 落ち着いた頃、広い風呂にのんびり入るのはいつ以来だろうか。 思い出すのは忌まわしい銭湯の記憶が強くて、ナルトは湯船の中に顔を入れた。 着替えるとナルトは用意された部屋へ行き 月見窓の障子を少し開けて寄りかかれば、夜風が頬を掠め夜空を見上げる。 『・・・・・・』 悩み顔を浮かべ思うのは、安心だとしても解らない不安があったから。 夜がこわくてたまらない。 眠るのが、怖いと思った。 そう思ったら、我愛羅の姿が浮かんで悲しくなった。 きっと毎日自分以上に辛かっただろう。 ナルトは布団さえ敷かずにそのまま瞼を閉じた。 (きっと、大丈夫・・・) 夜中、シカマルは様子を見ようと階下へ降りてナルトが居る部屋の前で止まると、電気が付いていた。 「・・・ナルト、起きてるか」 尋ねるも返答は無く、襖を開くと月見窓に寄りかかって眠っている姿があった。 布団すら敷かずに、と思いながら近付くと彼の眉間に皺が寄る。 「・・・・・・」 視線が捉えたのはナルトが握っているクナイ。 自分は警戒されるような事をしていないから、これはきっと侵入して来る者に対してのものだと考えた。 そこまで精神が追いやられていた事に、シカマルは憤りを感じる。 ナルトは大切な仲間であり、親友だと言える。 そんなナルトを苦しめる者達がどうしても許せなくて。 あの日から何処か変わってしまったナルトは、今日まともに話して全てを理解できた。 理解できたからこそ自分自身腹正しかった。 もし、あの時違っていたら、と。 自分を頼って来てくれたナルトを、支えてやり救えたのかもしれない。 「・・・風邪、引くだろうが」 障子を閉めるとシカマルはクナイをそっと取り、ナルトを抱き上げた。 [前へ][次へ] [戻る] |