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NARUTO


シカマルって呼んでみ。

頭の中で木霊する彼の声と表情に、胸が高鳴るのに気付いて押さえた。

「・・・なんなんだ、これ」

強く服を握りしめて俯く。

この良くわからない感情にナルトは戸惑い、悩む日が続いた。


買ったばかりの肝油もカラカラ軽い音を出していて、無くなりそうなのが分かる。

けれど気持ちが乗らない。会うとは限らないのに、躊躇うことが。

「かんゆー・・・」

明日の分がない。

溜息を零してナルトは外に出た。彼は大学生で帰りは遅いと考えて。

避ける事なんか何一つ無いのに、ただ恥ずかしい気持ちがあるだけで。


「何で言っちゃったんだろう・・・」


勢いとかではなくて、ただ自然と出てしまった言葉にナルトは驚いたのを覚えてる。


薬局のドアを握る手が強張り、深呼吸をして開いた。


『シーカークーさーんっ!』


相変わらず人気の無い店内。今のご時世からすれば物騒としか言えない。ナルトは毎回そう感じながらもう一度呼ぼうと口を開く。


『シーカー・・・あぁ?』


カウンターに目をやった時に言葉が止まる。

何時もなら無い肝油が置かれているのに。

『・・・忘れ物?』


その缶には可愛らしい鹿のシールが貼ってあり、くすくす笑った。


『子供の忘れ物?』


しっかし可愛いな。

手に取り眺め、表情が緩むと、かたん、とした音がして顔を上げれば見知らぬ誰かが二人居て驚く。


「肝油の子じゃない・・・?」


「ああ・・・ってそうじゃねえ!」


相手側も驚いたまま呟いて、ナルトは首を傾げる。


『あの、店員さんですか?』


「いや、俺達は怪しいもんじゃねえ!」


『じゃあ強盗?』


慌てる男にナルトは胡乱な眼差しで尋ねる。

もう一人の全身からほのぼのしてしまう男が言葉にした。


「僕達は知り合いだから怪しくないよ。」


『そうですか。あの、シカクさんは?』


シカクの姿が現れなくて尋ねれば、明るい声が耳に届いた。


「なに騒いでんのよ・・・ってお客さんじゃない!シカマル呼んで来るわね!」


綺麗な女性が現れてナルトはどうしてか胸が痛んだ。


「イノ!シカマルに肝油って言えばすっ飛んで来るぞ!」

悪戯な笑みを浮かべ女性に告げると目を瞠り、にやりと笑う。

全くついて行けずにただ眺めるだけのナルト。


「シカマルー!肝油よ、肝油ーっ!」


大きな声で彼を呼ぶ中で、ナルトは商品棚を見ると声をかけられた。


「お前のこれだぞ」


『・・・は?』


鹿のシールが貼ってある肝油に指をさす男。

『だってそれ忘れ物とかじゃ・・・』


「違うよ、イノが楽しんで貼っちゃったんだ。ごめんね。」


『たのしむ?』


意味が解らず肝油を眺めると、また女性の声がする。


「早く来なさいよっ!」


「うっせーな、ガミガミ言うなっつーの」


がりがり頭を掻きながらシカマルが現れた。


「肝油だろ?」


『うん。』


うなずくとやはりそれを手渡された。


「シール貼られちまって悪い。」


『いいよ、可愛いから。』


財布を取り出すナルトはシカマルに尋ねた。


『シカクさんは?』


「親父は薬の納品に行ってる。」


そっか。支払いを済ませて缶を取ると、イノが尋ねた。


「ナルト君、よね?」


『・・・はい。』


微笑を浮かべながらも探るような瞳が嫌だった。


「やーっぱりね、アスマ先生が言ってた通りよ!」


『アスマ先生?』


「この三人もあそこの卒業生なんだよ。」


シカマルが説明するが、ナルトは眉根を寄せる。


あのクマヒゲ何言いやがった。


「近所に目立つ後輩が此処に良く肝油買いに来るって言ってたんだ。」


お前だろ?と犬歯を見せて笑う男。


返ってきた言葉にナルトは安堵した。


以前アスマの前で失態をおかしてしまった事があったから。


しかもアスマだけではなく目の前にいるシカマルもいた。


だからそれじゃなくて安堵したのだった。


『まあ・・・髪の毛目立ちますからね』


自身の毛先に触れると、それに触れる誰かの手。


「でも地毛なんでしょう?綺麗よねぇ・・・」

イノがまじまじ眺めるといきなり近付いてきて後ずさった。

「睫毛ながーい・・・羨ましい!」


「イノはつけまつげだ・・・もがっ!」


黙れ!イノが思い切り肩を叩く。


「キバ、女はツケマツゲばっかりなのよ!」


「・・・ヒナタはそんなもんしてねぇ」


痛む肩を押さえながらキバは眉を寄せる。

「お前はまずそのガミガミ直せっつーの・・・」


あーいてぇ。キバの言葉にイノの目が吊り上がる。


「お前らやるなら外でやれ。」


邪魔くせえ。威圧感を出して言うと二人は静かになる。


「イノ、お前サクラの所行くんじゃなかったのか?」


「あ、そうだった!」

行かなきゃ!イノは慌ただしく中へ入っていった。


『賑やかだね。』


「昔からあぁだから、慣れちまってんだ」

自分の回りも賑やかではあるが、いい具合にバランスが取れているとも感じる。


「チョウジ、予約間に合わなくなるぞ。キバもあんだろ。」


「あ、ほんとだ。」


「チョウジ急ぐぞ!」

じゃあな!と二人は走り出していった。


賑やかさは一気に無くなって、ナルトはもう一度肝油缶を眺める。


『次、いつ納品されるの?』


棚に無かったのに気付いていたナルトは尋ねる。


「いつ無くなりそうなんだ?」


『・・・さあ?』


明日かもね。くすくす笑うと

腹壊すぞ。苦笑されてしまった。


この胸の動きは一体何なのだろう。

痛かったり はやかったり


ナルトは壁に寄り掛かって肝油缶を掲げた。

『・・・バンビはバンビじゃん』


なら頑なに呼べない自分はなんなんだ?


『シカマルに・・・シカマルさん・・・っ』


薬の袋を見ながら呟くと、ナルトは目を丸くして床に倒れ込んだ。


『・・・嘘だろ』


有り得ない。

頬に集まる熱を感じ手の甲を口許にやった。

『なんだそれ・・・っ』

彼の名を呼んだ瞬間、強くうつ胸の鼓動にナルトは驚き頭を抱えた。


『何かの間違いだ・・・間違いなんだ!』


ああー・・・。一人悩むナルトでも、肝油や薬が無くなるのは待ってなどくれない。


次会う時は肝油か薬が無くなった時。


ナルトはどんな反応をするのだろうか。




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あきゅろす。
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