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NARUTO


なぜ汁粉の話しになるのか。

シカマルはそれを食べていた時の姿が脳裏に焼き付いていたから。


「汁粉なら食えるんだろ?」


『今はいらない・・・食いたくねえ』


食欲が沸かない。

「なら、お前が安心出来るようにしてやる・・・」

してやるから

細くなってしまった肩に顔を埋めてシカマルは言葉を続けた。


「もう一人で泣くな・・・」


『泣いてねえ・・・』


慈しむよう次がれた彼の声に、ナルトの喉が熱くなり腹が震える。


ナルトもまた気付く。

その言葉で身体が安心して、喜んでいるのを。


「一人で抱え込むな・・・」


頭に触れて撫でる手が、今のナルトを眠気へと変えていく。


『も・・・言うな・・・っ』

涙が浮かんできた事に気付かれたくなくて、震える喉をぐっと堪えながら言葉にした。


『なにも・・・すんな・・・』


朦朧と薄れいく意識の中で、ナルトが見たのは誰かの足だった。


がくり、と頭が垂れ下がり全身の力が抜けるのを感じたシカマルは、違う気配に視線を向けた。


「あ・・・っ、シカマルさ・・・っ」


シカマルの隣を歩いていたくの一の姿。

その顔は驚きと戸惑いがあり、涙を浮かべている。


同性同士が向かい合っていなくても、抱き合っている姿は強烈で。


「──・・・なに」


「あの、わっ、私・・・っ」


冷たい声で放たれた言葉と、同じ瞳が女の身体を強張らせた。

「今日はなんだ」


「シカマルさん、私は貴方が好きです。だから私・・・っ」


女の言葉にくすりと笑うシカマル。


「遊びでいいって言ったのアンタだ。俺はそれ以上のモノなんかアンタにはねぇ」


眠ったナルトを抱き上げシカマルは女を見下ろす。


「じゃあ、じゃあ付き合って欲しい、私シカマルさんが好きなの!」


「ねぇって言っただろ。」


涙を流す女を見てもシカマルの表情は変わらない。

どこまでも冷たい彼に女は嗚咽する。


「あんなに、あんなに求めあったのに・・・」


「ただの処理な。」


面倒くせえ。

身体だけの関係でもシカマルはそこに感情が芽生える事は無い。


女はそれを理解していながら望むのだ。

遊びでも彼の隣に立てて、身体を重ねられる喜びに。


だから気付かない。

簡単に捨てられる現実を。


「いや、シカマルさん私・・・っ」


「こいつ起きる」


じゃあな。泣き叫ぶ女の声を背に感じながら室内へ入っていった。


場所は変わりヤマトは火影室へ戻ってきた。


「悪かったね、手伝わせて。」


プギプギ鼻を鳴らしながらトントンは綱手の机の上へ飛び乗る。


「決まりそうですか?」


「まぁ目星は付けたが、根本的な解決にはならないだろう。」

ふう、とため息をだしトントンを膝に乗せる。


「住家が変わろうが被害は変わらないだろう。」


「そのうちナルトが危うくなりますね。」


早く何とかしなければ。

室内に明るい声が入り込んだ。

「いやーナルトの家酷い事になってますね。」


カカシが現れ告げると綱手は眉を寄せる。


「あんなの見たら・・・ナルトだって住みたいとは思いませんよ。」


あーいやだいやだ。

カカシは軽く言いながらも業腹だった。

自分の大切な生徒であり、大切な忘れ形見が苦しめられ、明るく元気な眩しい笑顔が消えてしまっているのが。


「アイツの噂は回るのが早い。行動には気をつけるんだ。」


二人は頷き一瞬で消えた。


温かくて柔らかいものに包まれながら、ナルトは瞼をゆっくり開く。


『──・・・何処』

見知った場所にいたのに、今は殺風景な部屋。


真ん中に置かれた大きなベッドと、サイドに置かれたテーブル。


『・・・シカマルの部屋じゃねえ』


誰の部屋だ。

頭が覚醒しきれないままベッドから下りようと動いたら、ドアが開いた。


「起きたか」


『・・・ここ、何処?』

ベッドサイドに座りシカマルを見上げると、手が伸びて頬に触れた。

「俺の部屋・・・」


『・・・は?全然違う・・・けど?』

部屋を見れば全く違う。

首を傾げれば触れられている頬が軽く抓られた。


『・・・いてぇ』


「部屋は随分前に移動してんだ。あそこはあんまり使ってねぇよ。」


言われた言葉が引っ掛かってナルトは疑問に感じる。


『だってこの前・・・』

「こっちでなんかしたくねえ。」


使い分けている台詞にナルトは呆れうなだれた。


『・・・あぁそう』


頬から手が離れ立ち上がる。

『寝かせるなら此処じゃなくて良かったのに・・・』


二階に運ぶの疲れるだろうと思って告げた言葉だが、シカマルはふっと笑う。


「ぐっすり寝れただろ」


『まあ・・・ありがとう。』

照れ隠しをして礼を告げると、ナルトは窓の外を見て目を丸くする。

『え・・・もう夜になんの?!』


夕暮れの空にナルトはどれだけ寝ていたのか解らない。


ぐっすり寝たのは確かに久し振りですっきりしている身体。


『わりぃ、俺旅篭戻るわ。』


風呂に入りたいし。背伸びをしてからシカマルを見れば手を前に出していた。


『・・・なに?』


「手、寄越せ」


なにさ。手を前に出すと金属の音がした。


『・・・鍵?』


「お前当分此処で暮らせ。」


『お断りします。』


返そうとしたが受け取る様子が無いシカマル。


「旅篭なら金かかるだろ。」


『金なら幾らでもある。シカマルこんな事すんなよ。』


する必要なんて無いし、噂だって流れるのも広まるのも早い。


『家見付けっから大丈夫だって。』


ほら。鍵を受け取りやすいようにするナルトに、彼はその手を掴む。


「旅篭変えたって危ないだけだろうが」


『そこまで入る馬鹿いねぇから』


堂々巡りを繰り返し、シカマルは一度息をはく。

「・・・知らなとここまで無知だとはな・・・」

からかいを含ませた真っ黒な瞳に見下ろされ、細い手首を掴んだ。




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あきゅろす。
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