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NARUTO



ならあの日尋ねて来た時は・・・?


違う。その後からシカマルは聞いた。


銭湯に行ったナルトの話を。


その銭湯すらも嫌だと以前言っていた言葉も。


ヤマトから知らされた内容に、彼は一つ納得出来た。


腹が立ったのは、悩みを打ち明けなかったからじゃない


打ち明ける事が出来なかった。


信頼しているとか、していないじゃない。

被害を拡げたくなかったから。


だから相手が迷惑に思うと言った事。


シカマルはもう一度ナルトに視線を向ければ、黙って空を見上げていた。


「ナルト、先に戻ってるよ」


『・・・んー。』


ヤマト隊長。

小さな声で呼ぶとナルトは言葉を続ける。


『隊長、トントン・・・ありがとう。』


振り向き微笑んだナルト。


「ナルト、家の事は綱手様達と考えよう。カカシ先輩もいい考えをくれる筈だし、一人で抱え込むんじゃないよ。」


肩に優しく触れた手。

ゆっくり頷いたがヤマトは細くなった肩に一瞬目を丸くした。


「・・・ナルト、お前・・・っ」


食べてるのか。ヤマトはナルトを背後から抱きしめる。


『・・・っ、た、いちょ・・・?』


ヤマトの行動にナルトもシカマルも驚いた。


「・・・痩せたね、ナルト」


『食ってるってば!ちゃんと食ってるって!』

じたばた暴れ、ナルトはそこから抜け出し彼を見上げる。


「食べてるってたいした量じゃないだろう?」


『・・・っ、だとしても食べてるってばよ!』

むきになって返すナルトにヤマトは怪しむ眼差しを向けたが、背後からひやりとしたものが当たり深呼吸をした。


(やれやれ・・・)


「余り痩せすぎるとカカシ先輩にも言うからね。」


『・・・はーい』


唇を尖らせふて腐れた声を乗せて返す。


お邪魔したね。ヤマトはトントンと共に消えていった。


『・・・俺も行くわ。』

立ち上がり砂をほろった。


『邪魔し・・・だはっ!』

強く襟首を引っ張られると、黒い手がナルトの腹部に回っていた。


『シカマルおま・・・えっ!』


何で影出してんだよ。

ずるずると彼の方に引きずられ、踏み止まろう力を入れるとバランスが崩れる。


『引っ張んなって・・・ばっ!』


「今のお前、素直に来やしねえだろ」


図星をつかれて肩がぴくりと震えた。


隙があれば言い訳を作って逃げようとしていた。


まさか影を使うとは思いも寄らず眉根を寄せた。


縁側まで引きずられたナルトの腕を彼は掴む。


ヤマトが言っていた通り、以前より細まった腕に顔を険しくした。


「ほせぇ腕・・・」


『だから食ってるって言ってんだろ!』


振りほどこうとするナルトは、これ以上その事を言われたくなかったから。

以前と比べれば確かに量は減ってしまったが、食欲がわかない事が多い。

掴んだ腕は離れずそのまま引き込まれた。

『いっ・・・わっ!』


がくりと膝が曲がり視界が下がると腹部に回ったシカマルの腕。


『離せってば!』


なんなんだよお前!

両腕を拘束され、まだ動く足で抵抗するナルトに彼の足が絡み合う。


「暴れんな・・・」


強い力で抱きしめられナルトは渋々動きを止める。


「あの日、此処に来たのは風呂借りる為か?」


『その話はもういいってばよ。』


だから離せ。

あの日の光景が頭の引き出しから出て来て、ナルトは吐息混じりに返す。


あの時はシカマルの姿が出て来てしまって、それ以外考えつかなかった。


良く考えれば、あんな事をする年齢でもあり

仮に話したとして、それが知られ迷惑や被害を出したくなかった。


ましてや同性からそんな事を受ければ、言いにくい事で住家を変えたって現状は変わらない。


変わらないが、あんな光景を見てしまった以上、住む気になれなかった。


荒らされた室内

消えた自分の衣類

異臭が漂うベッド


吐き気がして頭すら痛かった。

その日は眠れなくて、ただ夜空に浮かぶ星や月を眺め


翌日には賃貸情報誌やら買った。


身体は犯されなくとも

自分の居場所を、安心する場所を犯されてしまった。


「ならお前、今何処にいんだ?」


『旅篭。近々変える。』

居場所が知られているのかも知れない。

そうなる前にナルトは旅篭変えをしたかった。


荷物は綱手の自宅で預かって貰っていて心配はなくとも、身体が危うくなりそうで。


『ばーちゃんの所行くから・・・手離せ』


絡まる腕に手を添えて外そうとする。


なのにそれは緩まなくてナルトは苛立ってしまう。


『離せって言ってるだろ・・・』


どうしてシカマルに突っ掛かってしまうのかがナルトには分からない。


彼が悪い訳でもないのに。

八つ当たりをしているようで、ナルトは更に腹が立った。


「汁粉食えばお前は笑うのか・・・?」


『・・・は?』


突然話題が切り替わり呆気に取られた。




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