NARUTO
八
サイドをピンで留められスッキリした髪型になったまま一日を終わらせた。
一度帰宅して着替えると、近くの商店街へ買い物に向かう。
何を食べようか考えていると、チョウジが何かを食べている姿を見付け、声をかける。
『副委員長それなんです?』
「あ、ナルト君。」
コロッケだよ。
優しい雰囲気と声で言葉を返すと、ナルトはじっと見ていた。
『コロッケかぁ・・・』
「食べてみる?」
いいの?チョウジを見上げると柔らかな優しい笑みに、ナルトもつられた。
(癒されるなぁ)
ぱくりと一口食べると、衣のさくっとした食感にジャガ芋の甘さとバターの味がしてナルトの表情はふにゃりと緩む。
『うーまー・・・っ』
「ここのは南瓜コロッケも美味しいんだよ」
『南瓜かぁ・・・』
どうしようかな、と考えていればチョウジは声を発する。
「シカマル、ナルト君に南瓜コロッケ一口あげてくれない?」
「ナルトに?・・・ほら」
店から出て来たシカマルは、食べていたのをナルトの口元にコロッケをやった。
『いただきまーす』
南瓜の甘味と滑らかな食感が、またナルトの顔を綻ばせた。
『これもうまーい・・・っ』
両手を頬にやって咀嚼すれば、頭をぺこりと下げる。
『二人ともご馳走様でした。』
買ってくる。二人に告げて店内へ入ると、チョウジが声をかけた。
「クリームコロッケも美味しいよー」
『それも買う!』
にかっと笑い注文をするナルト。
戻ると二人は食べ終えていた。
「随分買ったな・・・」
『今日の夜ご飯!』
楽しみー。にこにこしているとチョウジは首を傾げ尋ねる。
「お母さんご飯作ってるのにいいの?」
『両親海外転勤だから今一人なんです。』
「じゃあ毎日大変だねぇ」
『あはは、寝坊ばっかなんですよー』
のほほんとした会話をする二人に、シカマルは目を細め笑んだ。
帰り道チョウジと別れ二人は歩いていれば、シカマルがナルトの毛先に触れる。
「今日ずっとこの頭だったのか?」
『朝シャワーしたら髪の毛ホワホワだって言われて、弄られました』
縁石に乗りシカマルを見てナルトは気付く。
『お、先輩と同じ身長ー』
高さを手で計り笑うと、シカマルはその手を取った。
「それはまだ早いんじゃねぇの?」
『いや、すぐ追い付きますって!』
成長期だから。そう思うナルトの手を軽く引っ張ると、ぐらりと身体が前へ傾く。
『ぬ・・・ん?!』
重なった唇にナルトは目を丸くした。
ゆっくり離れると頬に熱が集中して、手で口元を隠す。
「・・・こうなるからな」
『・・・ならないから』
どんどん熱が顔に集まるのをナルトは見られたくなくて、瞳がきょろきょろ動く。
あの時とは違う、意図的なように感じたナルトは混乱した。
考えれば考える程ぐるぐる回り、ソファーに倒れ込みクッションを抱く。
『・・・明日当番じゃんか』
尚更会いにくい。
段差には注意しようと、ナルトは瞼を閉じた。
なんとも言えない気持ちのまま昼休みになり、ナルトは図書室へ向かった。
変に緊張しているのか、胸がどくどくして喉がひゅう、という感じになる。
開いているドアを見て、もう来ている事がわかり一度深呼吸をして中へと入った。
『先輩早いですね』
「一応委員長だからな。」
椅子に座ってパソコンを見れば、バーコードスキャナーが新しくなっていたのに気付く。
『・・・ピッピ新しい』
「今日入った。」
今日から手入力しなくていいと分かれば、使うのが少し楽しみになった。
「今日はピンしてないんだ?」
『ホワホワしてないですからね。』
自分の毛先を摘んで眺めながら返すと、シカマルもそれに触れる。
「細くて柔らかいよな、お前の髪の毛。」
『んー・・・絡むと痛いですよ?』
そんな二人の空気を引き裂くように、本を置かれた。
「返却」
『あー・・・はい。』
バーコードスキャナーを取ったが、本についてるそれは読み取りされない。
『・・・新しいピッピ壊れてんの?』
なぜ読み取らない。不思議な顔をしていると、ナルトの手を包むようシカマルの手が重ねられる。
「ここ押しながら、って説明してなかったな。」
『押すのか・・・先輩ありがとうございます。』
やんわり笑んで返すと、手は離れ本の返却が出来た。
「コロッケ食えたか?」
『・・・進まなかったですよ。』
むう、と口をへの字にすればくつくつ喉で笑うシカマル。
「・・・昨日のアレでか?」
『うわー、嫌だわぁその言い方。』
嫌そうな顔で軽く返したのは、からかわれてるのだと気付いたから。
『いかにも俺は慣れてます。って捉えられる発言ですよね。』
気にしていたのが馬鹿らしくて、ナルトは外に視線を向けた。
「何むきになってんだ・・・?」
『なってません。』
いや、なってます。
心の中ではそう呟いて。
「いたいた、ナルトナルト!」
『なにー?』
皆河達三人がカウンターへやってきて顔を向けた。
「次自習になって体育になったぞ。」
『・・・は?朝やったじゃん!』
なんで体育よ。いいたげなナルトに宮沢はジャージの入った袋を渡す。
『・・・替えのシャツねぇし』
「どうせ上脱がないんだから、ランニングで大丈夫じゃね?」
大橋に言われ納得すると、シカマルが声を掛けた。
「着替え此処でしてけ。」
『そうします。ありがとう届けてくれて!』
助かった。三人に告げ手を振って別れた。
ナルトは時間を見て、取り合えず下だけ履き替えようとジャージを取り出す。
今ならカウンターが目隠しとなっていて都合も良く、ベルトを緩めた。
「待てナルト、今か」
『チャイム鳴ってからじゃちょっと・・・取り合えず下だけですから。』
そうじゃねぇ。シカマルは額に手を当て俯いた。
ナルトは座ったままズボンを脱ぐと、可愛らしい牛柄のボクサーパンツが現れる。
普通此処じゃ無くて奥の部屋だろう。
シカマルはそう言いたかったのだが、早く行動するとは思わなくて、小さな溜息をもらす。
制服のズボンを綺麗に畳んで中へ入れ、チャイムが鳴ればワイシャツの釦を外す。
『間に合うかなぁ・・・』
ぷちぷち外して脱ぐと、薄ピンク色のランニングシャツ。
「細いくせにちゃんと筋肉付いてんのな」
『んー・・・付きにくいから俺的にはもう少し欲しいです。』
ワイシャツとブレザーを畳んでしまうと椅子から立ち上がる。
『じゃあ先輩また後で!お先です!』
袋とジャージの上着を持ったままナルトは駆け出す。
シカマルは目を閉じて深呼吸をした。
「慌ただしい奴・・・」
ふっ、と目を細めて笑ったシカマル。
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