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NARUTO


シカマルは慣れた手つきでフィルムを貼付けているのを眺めながら、ナルトも自分のペースでやっていった。


「お願いします」

貸し出しの生徒の声が聞こえても、ナルトはシカマルだと思い聞き流す。

「うーずーまーきー」

『・・・へ?あ、俺?』

そうだよ。見上げたナルトは苦笑する生徒を見てあはは、と笑う。

図書カードを入力して貸し出し本の番号を入力していき、巻末にある返却メモにスタンプを押した。

『はい、17日までです。』

「ありがとう、頑張ってね。」

頭を撫でられ飴を貰った。

『・・・なんで?』

「知り合いじゃねぇの?」

『一つ上にはいないです』

乱れた髪の毛を手ぐしで直し、貰った飴をシカマルに持っていく。

「いらねぇの?」

『三つ貰っちゃったから、おすそ分け?』

はい。ころんと彼の掌にグレープ味の飴を乗せ、ナルトも口の中でそれを転がした。


『・・・こっちか』

あらかた作業も終わり閉館後にやる本の整理をしているナルト。

綺麗に並べて、時々違う本を元の場所へ戻していった。


『あれ、脚立どこだ?』

蔵書が多く収納する棚は高くてナルトの身長でも届かない。

それを持ってきて間違って入っている本を取ると声がかかる。

「ナルト、これも入れといて」

『はいはーい』

一段下がりシカマルの方へ振り向き、受け取った。

『・・・先輩これどこの棚に入れればいいんですか?』

見えやすいよう少し屈んで尋ねた。

「あー?」

後ろで作業していた彼も呼ばれて振り向くと、やわらかい感触がする。


「・・・こうなるか?」

『・・・ならない。』


軽く触れた互いの唇。

けれど二人は落ち着いていた。


『・・・脚立に立ってんのに』

「お前が屈んでたからだろうが」


『屈むんじゃなかった・・・っ』

ごす、と棚に額を打ち付けナルトは自己嫌悪した。


『なんかもう、すいません・・・』

か細い声で告げるナルトは、この雰囲気が嫌でたまらない。


「きにすんな」


ぽん、と触れた肩と変わらない声にナルトはほっとしたが、直ぐに目を瞠り口元に手を当てた。

『俺の・・・初物・・・っ』

ナルトのファーストキスがこんな形で終わろうとは思ってなかった。


守ってきた訳ではないが、まさか同性とだなんて思っていないナルト。

自分の失態に情けなさが募った。


当分シカマルとは委員会以外で会わないだろうと考えたナルトは、あの日の事を思い出さないようにしていた。


思い出してしまうと恥ずかしくなってしまうから。

「ナールートー・・・」


『・・・ごめんなさい。』

凄んでくる皆河に、ナルトはそれしか言えなかった。


「理由知らないくせに謝るなぁっ!」


『サーイエッサー!』

軍人並の敬礼に相手は呆れ返る。

「つーか委員長と当番だったんだろ?」

『え・・・まさか俺虐められんの?!』

嫌だわぁ、と後退りをしてみれば脛を軽く蹴られた。

「なにふざけてんだよ」


『・・・皆河さんすみませんでした。』

もう片方の足で蹴られた脛をさすっていれば、溜め息をこぼされた。


『当番一緒だったらマズイの?』


「聞いた話しじゃその当番っての一年間ペアらしいな。」


『俺今日からボクシング習う。』


ふざけるな。すぱん、と頭を叩かれる。


「去年は秋道先輩とだったけど、ふたりして委員長と副委員長になったからペア組め無いんだよ。」


『それ誰が決めたの?』


「しらん」

偉そうな態度で返す皆河。

人気だと言われた相手と一年間当番が一緒。


ナルトは溜め息をこぼさずにはいられなかった。


あんな事普通はならない出来事に、ナルトは相手に申し訳無さを感じてしまっている。


気にするなといわれても、ナルトにとってあれが初めての口づけであり

慣れていればそうでも無かったにしろ、ましてや相手は人気生徒。


「ナルトー、戻ってこーい」


ぐりぐり頭を撫で回す皆河は、反応を現さないナルトを覗き見る。

「ナールート?」

『・・・ん?』

ちらり、と横目で皆河を見れば至近距離にいた。


「次移動だぞ?」

『んー・・・』


ゲームを終わらせてポケットへ入れると教科書を取り立ち上がった。

「こりゃ眠いな」


「間違いなく眠いな」


皆河と宮沢は眠そうに目を擦りながら歩くナルトを見て話し、階段を登る。


「ナルト踏み外すぞ」

『んー・・・』


「足動かせー!」

ほれほれ。尻を叩く宮沢だが、ナルトは拳骨をくらわせる。


『・・・セクハラ』

「叩いたぐらいでなるか!揉み拉くぞっ!」


わきわき指を動かす宮沢を、ナルトは眉を寄せさっさと階段を上りきった。


「宮沢、お前落とされるから止めておけ。」

「それは危ないから止めましょう!」


されないうちに宮沢も上がり角を曲がれば、二人して溜め息をこぼす。


「「起きろ馬鹿ナルトォッ!!」」


壁に寄り掛かって寝ているナルトの頭を二人は叩いた。


『・・・おきてます』


「「寝てただろうが!」」


皆河は教科書を持ち、宮沢はナルトの腕を引っ張り背負う。

その光景は他の生徒の目に止まり、知っている者はくすくす笑う。


『おーちーるー・・・』

「しがみつけばいいだろうが!」


むりー ずるずる下がっていくナルトに宮沢は口端が引き攣る。


「宮沢、放置だ。」

「お前なんぞ捨て置いてやるわぁっ!」


ふん!ナルトを廊下に横たわらせ皆河の方へ向かった。


『呪ってやるー・・・』

ホラー映画並に這いずるナルトの視界に誰かの足元が写ると、首を傾げる。


『・・・んー?』

見上げてみれば、眠たげだった目が見開く。


「何やってんだ」


『・・・呪ってやろうかと思って』


指を差すと宮沢の姿は無く、ナルトは眉間に深いシワを寄せた。


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