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NARUTO
 二

自宅に戻り冷蔵庫に入れてくが、食べる気分になれなくてナルトはそのまま眠った。


あの別れからシカマルは長期任務や諜報任務で、会ったり会話なんてものは存在しなく、気付けばナルトは暗部へ薦められ入隊した。


普通の任務もするが、暗部での成績も悪くない。


「・・・ナルト、風呂に入ってたのかい?」

『・・・寒い。』


濡れた頭を見て綱手は額に手を当てる。


「まったくお前は風呂ふろフロと・・・」


『だって臭い。』


そんな事は無いのだが、ナルトの精神がそうしてしまっているのだろう。


『なんの任務?』


「悪いがこれを大名へ届けてくれないか」


巻物を受け取りそれをしまい、外へと出た。

オレンジの細身の繋ぎは良く似合い、人目を引く。

それだけではなく、キバのようにナルトの姿を久し振りにみた者達。


人気の無い森の中へ進むと術式があり、ナルトは印を結び消えた。

父親の術を使えるようになった時空間忍術は、大名付近に繋がるようしてある。


そして帰りはのんびりと帰るのがナルトのやり方でもある。


ナルトじゃないような感じ。


キバに言われた言葉は否定出来ない。

皆が知っているのはあの明るく煩いぐらい元気な姿。


それが反転してしまえばそう言われても仕方の無い事。


草木を眺めながら里へと帰還し、報告へ向かった。


何時ものように窓から入るとシカマルの姿があった。


「ナルト、それをやめろと言ってるだろう。」


『じゃあ術式していい?』

渡された巻物を綱手に渡し、ナルトは角の方へと向かう。


「そこに飛雷神の術式を作ろうとするな!」


ばしん、とファイルが頭に当たった。


『大名のじぃちゃんは許してくれたってのに・・・ケチ』


「誰がケチだ餓鬼っ!」


むきになった綱手は机を叩いて立ち上がる。


「綱手様、筆が落ちましたよ・・・書類に」

シカマルの言葉に綱手は我に返りそれを眺める。


「作り直し・・・っ」

『じゃあ俺フロ入って・・・』


「入ったばっかりだろうが!」

凄む綱手の瞳は手伝えと告げていて、ナルトはむう、と口を尖らせる。

『でも風呂入りたい。』


「此処のを使え!今すぐっ!」


『あ、着替えが無いからやっぱ・・・痛い』

すこーん、と巻物が額に当たりそこを摩った。


「綱手様、書類」


「分かってるから待て!ナルトが作るから他のやってろ!」


『理不尽・・・』

何も悪くないのに。

ナルトは保管庫にあるロッカーへ行き着替えを取ると、シャワー室へ向かった。


暖かいお湯を頭から浴びて、瞼を閉じる。

あんなに優しい眼差しを向けてくれていた。


けれど今はその瞳で映される事なんて無い。


それは自分も同じだろう。


褪せる事なく残る思い出達。


今の自分は綺麗に洗い流しているのに、汚れていると思ってしまう身体。


綺麗な身体なんかじゃない。


『・・・・・・』

汚れてしまった身体。

守って欲しかったとか

助けて欲しかったとか


そんなんじゃない。


ただ傍にいて、癒して欲しかった。



別れた理由はナルトが暴漢されたからであり、それも二人の同性に薬を盛られたから。

それを言えずに綻び始め、知られてしまい別れを告げられた。

ナルトはあんな思いを二度としたくなくて決めた。


笑うから惹かれてしまうと思い

触れるから勘違いしてしまうと思って


人を狂わせるのなら捨ててしまえばいい。


笑う事も
触れる事も
人を見詰める事も


姿を、現さなければいいと。


『・・・めんど』

書類作り。

腰まではいてシャツを着ようと手を伸ばしたら、ドアが開いた。

『・・・・・・』

鍵閉めたのに。

その方向へ瞳を向ければ眉間に皺が寄った。


『・・・催促なら勘弁して』

「鍵ぐらい閉めろ」


『閉めてた。』


それは間違い無かった。

背を向けシャツに袖を通した。

身体にぴったりとしたシャツは、伸縮性に優れたもので動きやすい。

脱いだ服を持って振り返るとシカマルはまだそこにいた。


「おまえ、随分変わっちまったな」


その言葉にナルトの瞳が鋭くなった。


『そらどうもありがとうございます。』


脱衣所から出てナルトはそのまま出ようとドアへ向かった。


自分だけ苦しんで、悩んでいたのだと思うと馬鹿らしくなってしまった。


最初から、彼に好かれてなんかいなかったんだと


認めたくなかった気持ちが、今なら認めてしまいそうだった。


「何でそんなに風呂に入るんだ?」


分かっていて聞かれているのだと、ナルトにだって分かった。


だからナルトは違う言葉を選んだ。

『──・・・血生臭いから』


微笑んだ瞳は冷たく、はかなかった。


『書類、後で届けてもらうから。』


ドアを開けてナルトは出て行った。


一人になったシカマルは壁を強く叩く。


「・・・・・・。」


拳を見る瞳は、ナルトと同じで冷たく鋭かった。




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