NARUTO
三
大きな瞳は鋭利なぎらつきをしていた。
大きな舌打ちと共にナルトの姿は一瞬に地面から空へ移動し
何かとぶつかりあった。
『観念しやがれってんだっ!』
ナルトの覇気を含ませた怒号は響き、周りの者は身体を震わせる。
素早く移動するものをナルトは追い掛け、また地に足をつけ走り出す。
「甘いよナルト!」
ヤマトの木遁がナルトを捕らえようと伸びてくる。
『甘くねぇっ!』
螺旋丸を繰り出し相殺させ、走り出した。
角を曲がったのは覚えている。
そのまま流れるよう砂埃を立ち上げ、移動しているモノを確認する鋭利な瞳。
『──・・・いない』
どこに行った。
屈んだ身体は真っ直ぐ立ち上がり空を見上げると、瞳を笑わせる。
『みーつーけーたー・・・』
徐々に口が弧を描き笑わせるナルト。
『トントン観念しろーっ!』
「ぷりゅりゅぎーっ!」
短くて可愛らしい脚を懸命に動かして移動するトントン。
今のトントンはただの豚なんかじゃない。
ピンクの閃光とも言える速さを持っていた。
綱手が出した提案は、時間内にそのトントンをヤマトの攻撃を避けながら捕まえる事。
「・・・どうしてこうなるのかなぁ」
それが出来ればヤマトの木遁で家を建ててやる。
ヤマトは溜息をこぼさずにはいられなかった。
『広い風呂ーっ!!』
ざんっ、とナルトは降り立った。
『・・・あ?トントンいねぇ』
確かに居たのに。
動きすぎてナルトは上半身の繋ぎを脱いで、袖を腰に巻いて止める。
『・・・あちぃ』
頬を肩に擦り付け辺りを見れば、背中に硬いのがあたる。
『やべ・・・っ、は?』
ヤマトだと思い焦って振り向くと、シカマルの膝の上でぷるぷる震えているトントンがいた。
「動物虐待か」
『違う。トントン寄越せ。』
また邪魔したらたまったもんじゃない。
ナルトが近付くとトントンは慌て動く。
シカマルはそれを見てトントンを護ろうと背に隠した。
『トントン、お前・・・』
「嫌がってるじゃねえか、何しやがった」
不穏な空気が流れ出し、ナルトは空を仰ぐ。
『トントン、お前最初からこうする予定だったのか・・・』
いまいましげに呟いたナルトに、トントンはびくりと大きく震える。
「理由、なんだ」
『・・・もういい。』
終いだ。
諦めたよう瞼を閉じて
シカマルに背を向けた時、地面から一気にナルトを囲む木。
強固な四柱牢の術を使われナルトは座り込む。
「すまないねシカマル。」
「いいっすけど・・・なんなんですか?」
また膝の上に座るトントンを撫でながらヤマトに尋ねた。
「ナルトの引っこ・・・」
『──・・・ぶち壊すぞ』
九尾チャクラを纏ったそれは木遁忍術で出来た木に影響を与える。
(知られたく無い訳ね。)
言葉が途中で消されたが、もう知っている者はいる。
『・・・っ、くそ』
通常の姿に戻り、悔しい顔を浮かべながら逸らして俯いた。
なぜこんなに不機嫌なのかは、間違いなくトントンが来た事だろう。
「おまえ、引っ越すって流れてるぞ。」
『・・・へぇ。』
小さな舌打ちが零れた。
「水道管全部駄目になったぐらいで引っ越しか?」
『・・・そうじゃねぇよ・・・』
そんなんで引っ越すかよ。
堪えられなかった。
自分に向ける違う視線や、探ろうとする瞳に。
「シカマル、綱手様から聞いたけど、ナルトちょっと訳ありらしいよ。」
トントンを抱え札を取ってやるヤマト。
ナルトを囲んでいた木も無くなり、シカマルは立ち上がる。
「どんな理由かは知らねぇが、それはお前一人でやれる問題なのか?」
『・・・誰かがいても、そいつが迷惑だろうよ。』
ナルトももう分からなかった。
思い出したくも無い光景が自宅にあったから。
『もうあの家、ヤなんだ・・・』
あれを見る前までは良かったのに。
顔を歪めて己の肩を強く抱いた。
「シカマル、君ならどうする?」
一度ナルトに視線を向けると、強く真摯な眼差しを彼に向けるヤマト。
「留守の間に部屋は荒らされ、異臭やらの痕跡があったら。」
「・・・・・・は?」
なんだそれ。目を瞠る彼は驚きで縮こまっているナルトの背中に視線を向けた。
「酷かったらしいよ。水道管が壊れて銭湯に行ったら襲われかけて、仲間に借りればいい話をナルトは嫌がったんだ。」
誰かが居るのが怖い。
ヤマトは綱手から聞いた話をシカマルに告げた。
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