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NARUTO



安全な宿を綱手から紹介され、ナルトはほっとする。

工事が翌日から始まり、それを見た者から問われるが何処に寝泊まりしているのかは教えなかった。


任務が終わりナルトは上半身だけを脱いで腰に袖を巻き付けて歩く。

今日は黒のシャツで、前方に見慣れた姿。

シカマルの腕に絡み付きぴったりくっついているくの一。


おそらく以前彼の部屋にいた女だろう、と。


周りはどんどん変わっていき、こういう光景をどれだけ見てきただろうか。


遊びも本気も、ナルトには良く分かっていない。


自分だけが変わっていないようで。

自分だけが同性に違う視線を向けられたり。


異性に想いを告げられた事もあったが、なんの感情を抱いていない者と、遊びとして付き合って。と言われても頷く事が出来なかった。


遊びから始まるものだってある、と言われても

ただの遊びだと軽く言われても。


店先に立ち止まっている二人を一度見て、ナルトは道を曲がった。


二人の横を横切るのはよろしくない。

ナルトの中にあるのは、お楽しみ中を邪魔してしまった気持ちがあるから。


『あーっ!汁粉食いてえっ!』


道端にしゃがみ込みうなだれるナルト。


身体が塩分と糖分を欲しているから。

あのまま横切った数軒先に、甘味処がある。


がしがし頭をかいて立ち上がり、ナルトは塀に乗り屋根の上へ飛び乗った。


見下ろせばシカマルはだるそうに立ち、女が髪紐を眺めている姿があった。


溜息を一度ついて、空へと蹴り上がり、甘味処へと降り立つ。


『汁粉しるこー』


暖簾をくぐって中に入ると甘い香りが広がり、ナルトの腹はきゅるぎゅる動く。


窓際しかなくそこへ案内され、懐から髪留めを取り出し邪魔な前髪を横へ流してとめた。

『なかなかねぇな・・・』


冊子を出して眺めるのは物件情報誌。

ナルトは引っ越しをしようと考えていた。


『んー・・・やっぱヤマト隊長に頼むかな』


見晴らしの良い所はいくつもあるが、建物が無い。


なら増改築はどうだろう。

全てを新しくするのもいいと思ったが、ナルトは頭を振って考えを飛ばした。


考えているうちに汁粉が運ばれ、冊子をしまい食べはじめる。


甘くてしょっぱい汁を飲み、柔らかくつるりとした白玉。


自然と綻ぶ表情に、周りがそれをちらちら見ている事に気付いていない。


だから、外から歩いてきたシカマルがナルトをの姿を流し見ていた事にも。



【あれ、渦巻さんじゃん。今家にいないらしいな。】


【そうそう、水道壊れたって。物件探してるの見たって奴いたわ。】

シカマルの横を若い男達が通り過ぎる。


面倒な事になっているのがシカマルにも分かる。けれど詳しくは知らないし言われてもいないが、眉間に寄ったシワは深い。

「・・・・・・。」

どうしても気持ちがスッキリしなくて、苛立ちが募ってきた。

相談されないナルトにも、ナルトを付け狙う者や自分より知っている者に。


どうしてナルトにだけなるのか。

それはきっと兄心なのだろう。


場所は変わり綱手の所へ行き、ナルトは巻物を手渡した。

けれどナルトの表情に翳(カゲ)りがあり、彼女は尋ねる。

「疲れたか?」


『・・・ばぁちゃん・・・』


消え入りそうなか細い声に、巻物を読んでいた綱手の手が止まる。


『見晴らしいい所ねぇの・・・?』


「あるとすれば、木の上じゃないのか?」


くすくす笑う綱手に頬を膨らますナルト。

「見晴らしに拘らなくてもいいんじゃないのかい?」


『俺さ、空見るの好きなんだよ。だから余り視界に物を入れたくねぇんだもん・・・』


広い空を眺めながら何も考えずにいるのが。


「なにシカマルみたいな事言ってんだ。」


『ちげぇし・・・』


そんな姿より、女と歩いてる姿ばっかりだ。


「ならこうしようか。」


『・・・ん?』


綱手の笑みにナルトは若干躊躇う。


良からぬ事を思い付いた嫌な笑みだったから。




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あきゅろす。
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