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NARUTO
独りで抱えるよりも


ナルトは直情型で、身体が真っ先に動く所がある。


だから先ず、こうなってしまった場合はやはり一番最初に思いついた者の所へ向かった。

片手には、カエルの洗面器を持って。


『シカマルーッ!助けてくれってばよ!』

ざん、とシカマルの自室である窓から現れたナルト。

思う事は余り無いにしろ、今は都合が悪かった。

『あ・・・わりぃ。』

「・・・・・・はぁ。」


「う、うずまき上忍・・・っ」

深い溜息をつくシカマルと、布団を抱いて赤らむ女性。


思い切りタイミングが悪く、空気も悪くなった。


『あー・・・お邪魔しました。』

「おい、お前のその恰好はなんだ・・・」


上半身だけ脱いでいるシカマルが尋ねた。

今のナルトはとにかく酷かった。

頭からは水滴が滴り落ちて、服も濡れて片手にはカエルの洗面器。

川遊びにしては空はもう暗い。


『・・・なんでもない。』


ナルトはシカマルに顔を背け返し、姿を消した。


人気の無い所に着けば頭を抱えしゃがみ溜息を漏らす。


『・・・ドジっちまったな』


この行動を何とかしなければと感じていても、中々うまく行ってはくれない。


『銭湯、嫌なんだよなあ・・・』


じろじろ見られ、しまいには身体に触れて話し掛けてこられる。

その触れ方がどこかいやらしくて。


『何で水道がいきなり錆色になんだよ・・・』


鉄くせえ。

シャワーを浴びていた時にそれは突然おこった。

お湯が錆色に変わり、家の水道総てが使い物にならなかった。


『しゃーねえか』

この時間なら銭湯だって人は空いているだろうから。


『──・・・一式ねぇ』

あるのはカエルの洗面器。

服も濡れ、急いでいたナルトは下着すらはかないでズボンを着ていた。


顔に張り付く髪の毛を掻き上げ、一度自宅に戻ろうと脚を向ける。


『あー嫌だいやだ・・・』


貸し切り風呂あればいいのに。

そう思わずにはいられなかった。



翌朝、詰所が少し賑やかな事にシカマルは小首を傾げる。

何時もならくの一達が話しているのに、男連中が話していたからだった。

【まじ綺麗だったんだって!】


【左腕から洗ってたぞ。】


【スタイル良すぎたもんなっ!】

【あー、俺も銭湯に行けばよかったー!】

【勿体ねえ!!】

どこか興奮したように話す男が数名と、それを羨ましがっている者。


きっと女の事か。シカマルが通り過ぎようとした時、彼の瞳は丸みを帯びていった。


【俺、渦巻上忍にまじで惚れちまいそう・・・】


シカマルは振り向かないまま歩いた。

歩いているものの、シカマルの表情は苦い薬を飲んだかのようにゆがんでいた。


昨日慌てて来たナルト。シカマルは聞いた話しを聞いて、少し前の記憶が思い出してくる。


以前ナルトが一人で銭湯に行った時の内容を。

″もう銭湯に行きたくねえ″

そう話していたのを。


「・・・はぁ」


昨日慌てたように窓から入り、ずぶ濡れだった姿を思い出し溜息が零れた。


ナルトは自宅で業者を呼び見て貰ったが、その表情は暗い。


暗いまま火影室へ行き、開口一番に綱手に問う。


『ばぁちゃん個室の銭湯作ってくれってばよ』


「いきなり何だその希望は」


訝しい顔でナルトを見る綱手。

『毎日銭湯は嫌なんだって!俺の身体が危なくなっちまう!』


両腕で己の身体を抱き竦めるナルト。

『俺ん所の水道管全部駄目で風呂入れねえ・・・』


「それと個室銭湯と身体の危険が結びつ・・・」

つかない。言いかけた言葉は続かず綱手は額に手を当てる。

「・・・確かに危ういかも知れないな。」


綱手も思い出し溜息混じりに呟く。


大人になり綺麗になったナルトは、同性から好意を寄せられる事もあり、襲われそうになった事があるのを知っている。


それを知っているのは綱手やシズネしかおらず、ナルトは仲間にすら言っていない。


端整さの中に艶もあり幼さもある今のナルトに、綱手も心配していた。


「風呂なら信頼の置ける仲間に借りるか、もしくは宿を取るとかしたらどうだ?」

信頼のおける仲間達の姿を思い浮かべると、ナルトは目を伏した。


『でも俺・・・っ、宿にする』

何かを堪えているように綱手に返し、ナルトは安全確保の為に宿探しを始めた。


昨日の銭湯は嫌でたまらなく、それじゃなくとも以前から感じるねっとりとした視線が嫌だった。

他にも誘う言葉や触れてくる手が。


仲間に相談なんて出来る内容じゃなく、ナルトはストレスが重なっていた。


ある時は手紙

ある時は物を置かれ

ある時は待ち伏せを狙われた事も。


追い撃ちをかけるよう水道管が使えなくなった。

思い出したら、ナルトは深い溜め息を漏らさずにはいられなかった。




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