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NARUTO
君の本音

それは突然だった。

日常会話のように聞かれた言葉に、ナルトは一瞬だけ動揺してしまった。

「ナルトの好きなものは何?」

『・・・それ物じゃないと駄目?』

食べ物なんて今更聞かれても誰もが知っている。

ナルトはきょとんとした顔を浮かべ尋ねれば、カカシはじゃあ、と言葉を足す。

「ナルトの好きな人は?」

『カカシ先生以外。』

すっぱりと目を見詰めて答えるが、聞いた本人は表情を変えずただ首を傾げた。

「え、先生嫌われてるの?」

『嫌いでも無い。』


「ああ、普通ね」

じっと見詰めるナルトは変化の見せないカカシに顔を顰める。

『先生もショックって感じがしてない。』


「えー・・・先生ショックよ?」


『何時もと変わらないってばよ。』

ぴくりとも動かなかった表情筋。

ナルトは一度深呼吸をした。

『カカシ先生は好きな人の中に入ってないよ。』

「普通だからでしょ?」

違うよ。ゆっくり頭を振って否定をした。

ナルトの中では違う部類に入っているカカシ。

けれどカカシからすれば、自分はどの位置にいるのかさえ解らない。

『カカシ先生は?』

「勿論ナルトは好きだよ。」

にっこり目許を笑わせるが、ナルトは瞬きをして一歩近付いた。

『まあ、いっか・・・』

「なにが?」

ふっ、と笑って自己解決をすれば、ナルトはカカシを手招きをした。


『カカシ先生はさ、そう聞いたけど俺に何て言って欲しかったの?』

好きだと言えば良かったのだろうか。

ナルトはカカシを好きなんかじゃない。

嫌いでも、普通でもない。

「えー、大好きぐらい?」

『無理だから。』

またざっぱり切り捨てた。

『カカシ先生はさ、色々あっからもういいかな・・・』

「あれ、また自己解決しちゃうの?」

くすくす笑うカカシに、ナルトは手を伸ばし胸倉を掴んだ。

『教えてやろっか、俺が想うカカシ先生の位置・・・』

見上げた瞳には意志の強さを浮かばせ、けれど笑んだ口元が艶っぽさがあった。

カカシは何時もと違うナルトにどきり、としてしまうが顔には現れない。

「教えてくれるの?」

『・・・だから耳貸してよ』

妖艶な笑みを浮かべれば、カカシの顔が近付き耳では無く唇を重ねた。

「──・・・っ」

目を丸くするカカシにナルトは満足な笑みに変え、唇が動く。

『好きでも嫌いでも、ましてや普通でもない・・・』

そっ、と耳元に唇を寄せてナルトは耳たぶに一度キスをして言葉にする。

『──・・・愛しい人』

カカシが聞いた事の無い、甘く熱を含んだ艶のある声は彼の腰に響いた。


「・・・・・・」

すっ、と離れるとナルトは悪戯っ子な笑みを浮かべ目の前で手を振る。

『やっと表情変わった。』


言葉には一切の嘘なんかない。

純粋にカカシを想い、募らせ、諦め切れなかったこの気持ち。

嘘と思われても、告げた事が出来てナルトは満足した。

想いは届かないと分かっていても、ナルトには言えた事で胸の支えが取れた。


『んじゃねー!』

ばいばい、手を振って背を向け歩き出したナルトに、カカシはその肩を強く引く。

『う、え・・・っ?!』

見上げた世界にはカカシの細まった瞳。

「大人を挑発するなんて、たいしたもんでしょ・・・」


『え、そうなっちゃうの?』

そんなに怒らせてしまったとはナルトには思わなくて、少し焦りを浮かばせる。

「先生怒っちゃったよ?」


『あ、あはははは、ごめーんね?』

やはり嘘やからかいの類と思われてしまった事に、胸が痛む。

痛んで、悲しかった。

潤んできた目を見られたくなくて、前を向こうと頭を下げたが、強く顎を掴まれた。

『い・・・っ、て・・・っ』

「なに下げようとしてんの・・・」

空気までもが変わってしまい、今なら訂正が出来るんじゃないかと淡い期待を持って口を開く。

『いや、さっきのはその・・・ちょーっとからか・・・っん!』

ナルトがしたのとは全く別物の口づけに、ナルトは目を瞠る。

合わせが強くなり、生暖かく柔らかなものに中を犯された。

『ふ・・・う、は・・・っ』

一瞬で頭がくらくらして脚が奮えてきた。

くすりと笑う声だけがやけに耳に響く。

「・・・こんなんでへばっちゃ駄目だよ、ナルト。」

『・・・・・・この・・・っ』

濡れた瞳で睨みつけるナルトにカカシはそこにキスをする。

「先生は幸せだねえ・・・」

ちゅ。軽いキスをしてナルトの頭を撫でる。

「先生、ナルトの為に生きなきゃね・・・」

『・・・キザっぽい、それ。』

いいのいいの。真っ赤な顔で返すナルトは、嫌がるでもなくどこか嬉しそうだった。

好きでも嫌いでもない。

ましてや普通なんかでもなく


ただただ純粋に愛おしいと想う人。




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あきゅろす。
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