NARUTO
四
ゲームをしていた罰として居残りを言われたナルト。
テンキーを押しながらパソコン画面で本のタイトルを確認していく。
指元は一切見ずに本と画面しか見ない作業は、ペースが早かった。
『・・・おかしくね?』
やってもやっても減っていく感じがしない。
もうかなりやったと言うのに、どうして終わらないのか。
ナルトは振り返ると目を瞠る。
『・・・は?』
本の壁が出来ていた。
『なっ、こんなに沢山どうすんだよ・・・』
一冊取って見れば年期の入ったもので、新刊ではない事が分かった。
『廃棄・・・?』
そう思うと何だか物悲しい気持ちになって、本の背表紙をそっと撫でた。
沢山の人に読まれたであろう汚れや、縒り。
ブックコートフィルムも角が剥がれていたりして。
『・・・沢山の人に読んで貰ったんだな』
自分にだってある愛着本は幾つもある。
絵本だってその一つのうちに入っていて、良く読んで貰った。
何度聞いても飽きもせず、次第にページを繋げる紐が切れた。
それでも新しい糸を使って修復してもらった絵本は、今でも捨てられないもの。
ぺちん、と頬に感じた小さな痛みにはっとした。
『・・・起きてます。』
相手を確認せず、何時もの癖で言葉にしたがくすくす笑う声がした。
「それ、読みたいのか?」
シカマルだった。
じっと眺めていたのを見られていたのだろう。
『これ、廃棄しちゃうんですか?』
「しねぇよ、此処の本は第二図書室行きだから。」
移動本の入力だったらしく、ナルトはほっとした。
「かなり進んだんだな。」
『入力だけなんで、簡単です。』
本を戻してナルトはまた入力作業に取りかかりながら、皆河に聞いた言葉を思い出す。
゙性格が黒い゙
ナルトからはそうには見えなかったが、きっと徐々に見せてくるだろうと考えながら、数字を入力していった。
次の本を取ろうと手を動かすが、空を切るだけで顔を向けて納得する。
『あ・・・終わったんだ?』
随分やったな。ナルトは立ち上がって窓の方へ身体を向けて背伸びをした。
すーっと血の巡りが良くなるのを感じるが、頭がくらっとした。
『おろ・・・っ』
ぐらりと身体が傾きぶれる世界に脚がもたつき、机に倒れ込む。
『・・・これ、ほんとヤだ』
脱力感に襲われナルトは膝立ちのままうなだれた。
程なくすれば回復し、ナルトは気付く。
『・・・携帯』
まだ返して貰ってない携帯。シカマルの姿は無く待つ事しか出来ないナルトは、暇潰しとしてラベル別に仕分けをした。
『つーかもう帰っちゃった?』
現れない相手にナルトは時計を見れば、もう19時になろうとしていた。
『携帯明日でもいっか・・・』
見られて困るものは無いし、あったとしても電子マネーを使われるぐらいだろうと。
『いや待て・・・昨日チャージしたの五千円だし!!』
勢い良く立ち上がりドアへと手を伸ばし開けた。
『あべしっ!』
勢いついたままナルトは何かに当たり顔を両手で覆った。
「あべしって・・・普通出ないだろ」
『どこ行ってたんですか・・・』
見上げて尋ねれば苦笑するシカマル。
「第二だっつーの」
『知りませんから。』
一人黙々と作業をしていたナルトは、むすっとした顔で彼を見る。
それを見てシカマルはくすりと笑った。
「寂しかったか?」
『・・・それは無い』
真顔で返しナルトは手の平をシカマルに向ける。
『作業終わったから携帯、返して下さい。』
「案外早いのな、作業。」
誰もいなければ作業なんて捗るものだと、ナルトは思うが何だか面倒そうで言わなかった。
「お疲れさん」
『・・・どうも』
自分の携帯が返されバックの中へほうり込むと、軽く会釈をした。
『じゃあ俺帰ります。』
「家どっち?」
あっち。窓にの方に指を向ければシカマルはふぅん、と鼻を鳴らす。
「同じか」
『そうなんですか?』
「途中まで一緒だな。」
そんな話をしながら二人は校舎を後にした。
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