NARUTO
二
朝から痛む頭に顔を顰めながら授業を受けるナルト。
頭痛薬を飲もうとしたが、両親がそれを持って行ってしまって飲めなかった。
かといって薬局は開いておらず、そろそろ限界を感じて保健室へ向かうナルト。
『・・・くるし』
ずきずき痛むせいで、締め付けるものすら苦しくなって、ネクタイとシャツの釦を緩めた。
「ナルトどうしたんだよ?」
『頭いてえ』
保健室行ってくる。廊下で会った友人と短い会話を済ませて階段を降りると、女子が騒いでいる声が頭に響く。
「みたみた?」
「みたーっ!」
有名人でも来たのか、頬を赤らめて話しているのを流し見て気付く。
『・・・は?』
保健室の前に女子が群がっている光景に、ナルトは不快に眉根を寄せた。
きゃあきゃあ騒ぐ声が耳障りで苛立ちが募る。
『なあ・・・退けてくんねえ?』
冷眼な眼差しで静かに告げるとナルトの不機嫌さが解り道があく。
『・・・アスマせんせー』
ドアを開けながら保健養護を勤めるアスマを呼びながら中へ入った。
「おー、ナルトどうした?」
『頭いてえ・・・っ』
どさり、ソファーに上半身だけ倒れ込ませ瞼を閉じた。
「・・・そうとうだなこりゃ」
髭を触りながらアスマはナルトを眺めれば、その隣に座っている人物が頭を撫でていた。
「知り合いか?」
「あ?・・・近所」
それはシカマルだった。女子が騒いでいたのも、彼の存在に気付いて。
『・・・アスマせんせー、撫でてないで薬ー・・・っ』
ナルトはうめき声を出して、その手がシカマルのだと気付かない。
その手は小さな頭を揉んでやれば、和らぎはしなくても指圧していれば痛みが一瞬引く。
アスマがにやにやした顔を浮かべながら尋ねた。
「いつから痛いんだ・・・?」
『父ちゃん頭痛薬持ってくんだもん、俺のシカマルだったのに。』
「・・・ぶふっ!」
アスマは噴き出し笑い声を堪え、それをシカマルが冷めた目で見遣る。
「シカマルって・・・」
『俺の家鹿印のだから・・・此処普通の市販薬だからやだ』
シカマルがいいんだよ。まるで恋をしているような響を乗せて。
ちらりとアスマはシカマルを見れば、片手で顔を覆って俯いていた。
「持ってねえのかよ、シカマル」
『だから持ってかれ・・・』
顔を上げて繋がる言葉を見失った。
見覚えある人がいて、ナルトは身体を退け反らす。
『なん、なんで・・・っ!』
目を丸くしたまま驚き、声を詰まらせた。
前回に引き続きの失態にナルトはなにも言えなかった。
「シカマルは此処の卒業生なんだよ。」
アスマの言葉に更に驚いたが、頭を叩かれた。
『いって!』
「この馬鹿が・・・」
眉を顰められ謝りしょぼくれるナルトにアスマが薬を渡す。
「ナルトの良く効く薬ってのはそれだった訳だ」
『・・・だった訳』
市販薬の錠剤を押し開けようとすれば取られた。
『・・・へ?』
「こっちがいいんだろ?」
見慣れた赤の薬包紙だった。
ナルトは頷き受け取ると水を含んでから飲んだ。
後から来る苦みと独特の味に顔が少し歪む。
「今時珍しいよな、そう言う薬飲む若者。」
『苦くても良く効くから飲まさるって。』
へらりと笑い包み紙をソファーの横にあるごみ箱へと捨てて俯き瞼を閉じた。
「寝てくか?」
『んー・・・おやすみ』
ひじ掛けに腕をかけ身体を斜めにしてそこに顔を乗せた。
動く事すら億劫で、深呼吸をすれば項にひやりとしたのが伝わった。
『もー動けねえ・・・あ?』
項を揉まれナルトの瞼が開く。
「揉んでやっから寝てろ。アスマ職員室行くなら鍵閉めてってくれ、来たら面倒くせえ」
「はいよー、ナルトゆっくり寝てろよ。」
『ちょ、せんせ・・・お兄さん大丈夫だって・・・っ』
アスマが出ていくと鍵が閉まり、ナルトはくすぐったさに肩を竦める。
「・・・くすぐったいのか?」
『まじ止めてって・・・ば、うあっ!』
身じろぐナルトにシカマルは態と項を指先でなぞったら、面白いぐらい震えた身体。
「誤解されっから呼び方変えれ」
『なんでお兄さんの名前がシカマルなんだよー・・・』
あいつ可愛いのに。悲しみを含ませた声で嘆くが、シカマルからすればいい迷惑でしかない。
『大体父ちゃん達だって知ってて言わなかったし・・・』
それは親が面白がって言わなかっただけの事。
いつかそうなったら楽しいな。ミナト達はその日を待ち侘びて、あの日爆笑して激しく咳込んだ記憶は新しい。
『俺の、シカマル・・・』
「だからお前な・・・」
呆れ顔で見れば、ナルトはすうっ、と眠ってしまっていた。
゙シカマル買いに来た!゙
゙俺のシカマルなのに・・・゙
愛おしむ声で自分と同じ名前を呼ぶ声が耳から離れなかった。
額にかかる前髪を指先で横へ払い、はっきり見える幼い寝顔。
沈んでいたソファーが少し膨らみ、近付いた影はナルトの頬に柔らかな弾力があたる。
「ーー・・・俺に誤解されっぞ」
寄っていた眉のシワが無くなり、シカマルはそっと毛布を掛けた。
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