NARUTO
三
発信源が誰なのか解らず俯いた。
「カカシが言ってた」
『・・・カカシ先生?』
誰にも告げていない事を何故カカシが知っているのか不思議で、首を傾げて考えた。
『俺・・・誰にも言ってねぇのに?』
「父親と知り合いでこの前会ったら・・・」
あー!ナルトは言葉を遮り脚をばたつかせて納得すれば、腕の拘束が取れた。
『父ちゃん何か半ベソで帰って来て、抱き着いて離れなかったんだよなあ・・・』
そうだったのか。起き上がり一人納得顔を浮かべるナルトだが、サスケは手に持っていた物を眺めた。
「リップ、どうした」
『買った。でもこれダメ』
ひりひりすんの。
リップクリームを指先でころころ転がすと、ぬるりと唇にあたり肩を震わせる。
『う、な・・・っ!』
「顔に着くぞ」
リップクリームだった。
仄かに蜂蜜の香りがして、不思議な感じがナルトの気持ちを和らげた。
「荒れてる時にんなもん塗るな。」
『知らないからしゃーないって』
蜂蜜の香りがしてナルトは思わず舌先を出して口端を舐めた。
『お、蜂蜜の味もするー』
「舐めるなウスラトンカチ」
出たよそれ。うんざりした眼差しを向けると、指を曲げた背がナルトの口端に触れる。
「・・・取れただろうが」
『・・・貸して?』
手を差し出して首を傾げるナルト。
ポケットに入っていたリップを取り出し蓋を開ける。
「やだね。」
『・・・度量ねぇ』
見せ付けるようにリップを塗る姿に、ナルトは飽きれ顔を浮かばせた。
「留学する必要ねぇだろ、お前なら」
『二重生活じゃん』
話が戻ると気分が滅入ってしまう。
「ほんとお前・・・」
『なんだってよ』
また貶すのか。見上げた男は、逆光にその影を濃くしていたのは近いせいでもあった。
『・・・むっ?!』
ぬるり、互いに塗ったリップの感触が唇に当たった。
「・・・留学はする必要もねぇし、バイトもある」
離れた唇から次がれた言葉よりも、キスされた事にナルトの思考が戻ってこない。
「・・・ナルト?」
いつまでも固まったままの姿に、サスケは口角をあげてもう一度口づける。
『・・・ん?!さっ、んーっ!』
啄まれやっと我に帰るナルトだが、されたままで頬を染めた。
「お前、卒業式に言うとかやめろ」
『・・・へ?』
なにを言う。全く理解できない言葉にサスケを見れば、顔を顰めていた。
「だから鈍感馬鹿だって言われんだ、ウスラトンカチ。」
『誰が鈍感馬鹿のウスラトンカチだっ!』
おまえだろ。顎を持ち上げられ見下ろしてくるサスケに、ナルトは痛いくらい頬を赤らめる。
「お前が俺を好きな事ぐらい知ってんだよ。」
『・・・俺今から留学手続きとパスポー・・・どわぁっ!』
そそくさ逃げようとするが、彼はまるで猫を捕まえるよう首根っこをがしりと掴む。
「バイトは俺の家の住み込み家政婦ならあるが?」
『なっ、だよそれ・・・っ』
勝ち誇った笑みが腹立たしくて、でも恥ずかしくも嬉しくて。
「・・・どうする?」
顎の下を撫でられ、ナルトは俯く。
『・・・住み込みは駄目。』
「・・・は?」
冷めた目でナルトを見下ろすと、耳まで赤かった。
『だってそれ・・・同棲みたいで破廉恥・・・っ』
羞恥すぎて両手で顔を覆うナルト。
うぶ過ぎる反応にサスケは一瞬目を瞠るが、和らぐ。
「破廉恥って、破廉恥な事を想像してるから出る言葉だよな?」
『そ、だって何か・・・見てらんねぇ』
覆ったまま頭を振る姿にサスケは意味が通じなかった。
「・・・解りやすく言え」
『おはようからただ今までハグ&チューすんだろ?そんで座ったら手繋いで膝抱っこしたりして、風呂一緒に入ったり息子の前で平気にキスしたりす・・・』
「落ち着け・・・」
どんな夫婦だよ。呆れ顔を浮かべるが、それはそれでいい情報が入った事に変わりは無い。
「つまり俺とナルトがそれをすると・・・」
『それが普通なんだろ?!』
普通じゃねえよ。サスケは蟀谷を押さえてどういいように返すか迷う。
「それは二人の仲がいいって事だろ?」
『・・・うん』
こくりと頷けばサスケは肩に手を置いた。
「なら俺とナルトがそれをしても良いって事だ?」
そうなの?そう言いたい眼差しを向けるナルトにサスケの口元が笑う。
「・・・ナルトが俺を好きならな。」
『うぅ・・・』
かああ、と頬が染まり俯いた。
「どうなんだ?」
静かに尋ねると、ナルトはサスケの指をきゅっ、と掴んだ。
『好き・・・だってばよ』
「・・・当たり前だ」
微笑み優しく抱きしめた。
荒れていた心は静まり
荒れている唇は
「リップ取れちまったな」
『あー・・・塗って?』
傾げて告げれば顰めた顔を浮かべるサスケ。
けれど手にはリップクリームが握られていた。
荒れたら塗って、唇を重ねて塗りあわせて。
少しずつ荒れた唇も良くなっていった。
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