NARUTO
三
今日も遅くなりそうで、シカマルは溜息を零し背伸びをした。
なんで毎日こんな激務に追われなければならないんだ。
たまには早く帰って家族団欒を楽しみたい。
子供達が寝れば愛する妻と他愛のない会話をして、ゆっくり身体を重ねる事だってしたい。
休みなら、四人で出掛けて買い物や温泉にだって入りたい。
「あー・・・足りねぇ」
癒しが。
目頭を押さえて瞼をつむった。
誰もいない部屋でぽつり呟いても、返ってくる言葉は無い。
今頃三人は風呂でも入ってるんだろうとか
父親ってのは本当に家族と過ごす時間が少ない。
帰れば子供達はすやすや眠っている姿ばかり。
かまってやれない事が多く、母親に懐くのも無理もない。
いや、ナルトも男ではあるがあれは母性が強い。
誰よりも強いからこそ、いい親だと言われる。
知らなかったものを自分なりに悩み考えて
いつだって家族の事を考え、両親の事も考えてくれる良い妻。
「ねみぃ・・・」
シカマルはそのまま机に突っ伏して眠った。
『ーーやっぱりな』
ばぁちゃんに休ませてもらうよう言わなきゃ。
疲れてすやすや眠るシカマルに、ナルトは仮眠室にあるタオルケットを掛けた。
ナルトは心配になって子供達を両親預け弁当をこしらえて見に来たが
やはりという状況に不機嫌になったのも確か。
『シカマルがいないと、家が寂しいんですけど・・・』
眠っている背中に頬をつけて、項にキスをした。
いくら子供達がいても、父親が抜けていたら意味が無い。
「──・・・やべえ」
寝過ぎたか。上体を起こすと肩からずり落ちたタオルケット。
机をみれば見慣れた弁当袋。
シカマルは目を細めて笑んだ。
「・・・起こせっつーの」
弁当袋を開いて取り出すと、温かいそれにシカマルはナルトに感謝した。
「・・・アイツ」
開けると好物である鯖の味噌煮が入っていた。
良妻賢母とはこの事だろうか、とシカマルは何時も感謝の気持ちで一杯だった。
だから頑張れる。
起こすよりも寝かせる方を取ってくれた事は、頭がスッキリした彼にとって作業を早く終わらせる事が出来た。
帰宅すると、明かりは灯っていても静かな空気に包まれていた。
「ナルト、風邪ひくぞ」
『・・・っ、シ、マル・・・?』
ソファーで眠っていたナルトを抱きしめ起こしたシカマル。
『──・・・お帰り、シカマル』
背に手を回して抱き返した。
「ちび達は?」
『実家で寝ちゃったからあっち。』
お泊り。そんなのを聞いたシカマルは疲れが飛んでいくのを感じた。
『お風呂、一緒しよ?』
「待ってたのかよ」
くすくす笑うとナルトは頷いた。
『シカマルとの時間だって大事だろ?』
「じゃあ、入るか」
五年経とうが
十年経とうが
その先も変わらないだろう。
明日を迎えにくる太陽があるように
愛する人を迎えてくれる愛しき家族達。
なんて幸せなのだろうか。
ありきたりな日常の中にある小さな幸せを、一日に何個見付けられるのだろうか。
目に見えるものだけが幸せなんかじゃない。
見えない所でも、幸せは存在している。
それをどう感じられるか
そしてまた、何時もの日常がやってくる。
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