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NARUTO
十四

まだ帰って来ていないのを分かっていても、走らずにはいられなかった。

玄関を開けたって靴はまだ無いって事ぐらいしってる。

『ただい・・・へ?』

無い筈の靴がある。何かいい香りもする。

ナルトは靴を脱いでリビングに走り入ると、キッチンに立っているサスケがいた。

『サスケ・・・なんで?』

「暇だったから」

大学生が暇な訳あるか!

居ないと思っていた人がいた。それだけで驚き要素は大きい。

「着替えて風呂入って来い、それからだ。」

『えぇっ?いまでしょ!』

あぁ?と言う鋭い眼光に睨まれてしまえば、ナルトはそそくさと部屋へ向かった。

『・・・てか何でサスケがやってんの?』

今まで無かったのに。ましてや手料理だなんて。しかも風呂付き!ナルトは驚きの連続だった。

部屋に戻ると解答用紙を取り出してもう一度数学の点数を見て、頬が緩む。

『・・・ほんとに久しぶりだ』

早く風呂に入って見せよう。着替えと解答用紙を持って風呂場へ向かった。

懐かしかった感覚とクリアになった頭の中。


『・・・・・・あ。』

湯舟に浸かってナルトはふと思い出した。

両手で顔を隠して仄かに赤い頬が痛いと感じる程に紅潮させる。


『忘れてた』

サスケとの約束を。


どくどく鳴り響く胸と、訳も分からずに身体を左右に振って動揺する。


『どっ、どうしよう・・・っ』

どうしよう!頭の中が混乱してしまい、生理的な涙がじわりと潤んだ。


『きょっ、今日だよな?』

テスト結果が出たら抱く、と言われきっと今日なのだとナルトは考える。


『・・・今日だとしても』

約束をしたのは確かで、いずれにせよサスケに抱かれる。


どう抱かれるかなんて知らないが、今日までずっとサスケに触れられ見られて来たナルトは、数回頬を叩いた。

『・・・っし!』

おどおどしないで何時も通りでいよう。

目をきりっとさせて湯舟から出た。

大丈夫。

サスケに委ねれば。



「頭拭け」


『んー・・・』

がしがし頭を拭きながらソファーに座った。

『サスケ大学早くおわったの?』

「今日は早く終わったな。」

ふぅん。鼻で返事をして口元にタオルをあてる。

普通でいようとしても、それが出来ているのかが心配で誤魔化した。

『サスケの作ったご飯初めて食べる』

「早かったら作ってやるよ」

気が向いたら。付け足された言葉にナルトはがくりと頭を下げた。


「どうだった、テスト」

『あのな!サスケのおかげ!』

一気に表情が明るくなって、解答用紙をサスケに見せた。

受け取り眺めたサスケはナルトの頭を撫でる。

「本当に頑張ったな、ナルト」

『・・・っ、おう!』

笑いシワを作りながら笑顔を浮かべた。

問題用紙に解答を書き写してサスケに見せていたが、彼は不正解を言わなかった。

『あの時間違いだらけだと思って、ちょっと焦った』

「順位みてきたか?」

早くみせたかった。そう言ったらサスケはどう言い返してくるのだろうか。

けれどナルトは言葉に表さなく苦笑いを浮かべる。


『人だかりだから見てねぇや』

「そうか、後はこのまま落ちないよう頑張れ」


『頑張るってばよ!』

親指をぐっと立ててサスケに返した。

『・・・美味そう』


サスケが作った夕食はナルトが好きな生姜焼き。

目をきらきらさせながらそれを眺めて喜ぶ姿に、サスケはふっと笑う。


『あー、うめぇ』

しっかり味がついていて柔らかい豚肉。

顔が綻び目を細めて食べるナルト。

終始にこにこ顔で食べる姿は、作った側からすれば嬉しい反応でそれを眺めるサスケ。


「ナルト」

『んー?』

夕食が終わり皿を洗っているナルトにサスケはじっ、と見つめていた。

視線が重なりナルトは彼を見て気付き、緊張する。

「それ終わったら部屋行ってろ」

『・・・やっぱり今日だったのか?』

お湯を止めて手を拭きナルトはサスケと同じようにじっ、と見た。

「忘れては無かったんだな」

『いや、さっき思い出した。』

目を伏せて消えていく泡を眺めた。

二、三日だったとしても、ナルトの中では数学の事しか頭になかった。

サスケに聞けば分かった事でも、自分の目で確かめたくて言わなかった。

『・・・ん?』

こつん、と頭に当たりナルトは上目で見上げる。

「こわいか?」

『・・・怖くないって言ったら嘘になるけど、嫌って気持ちは無い。』

頭に乗ったサスケの手を取った。

『ただ、俺は知らないから怖いだけだと思うし』


異性との仕方は知っていても、同性同士の仕方を知らない。

困った顔を浮かべて伝えたら、ふわりとサスケに抱きしめられた。

「怖がる事なんかねぇよ」

『・・・ん。』

一度瞼を閉じて頷いた。

大丈夫だと心の中で何度も呟き、サスケは風呂場へ向かった。




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