NARUTO
十三
週替わり、解答用紙が返却されている中で、今日はどことなく気持ちがそわそわしていた。
待ちに待った数学の授業があり、返却される。
変わってしまってから数学が嫌でたまらなかったのに、今日は早く来ればいいと思ってしまう。
答案用紙が全て返却されれば、学年順位の発表が提示されるが、順位よりも数学の点数しか頭に入って無かった。
「・・・っ、ナルトせんせぇぇっ!」
『うわっ!なんだよいきなりっ!』
化学の解答用紙を見たキバはナルトに抱き付く。持っていたそれを取り点数を見て納得した。
『良かったな、頑張ったじゃんキバ』
「ナルトのおかげだぁっ!」
ぎゅうぎゅう抱き付いてくるが、犬塚の次は渦巻な訳なのだが、順番をすっ飛ばされた。
「落ち着いたら呼ぶからなー」
『キバ離れろっつーのっ!』
「俺は今、もーれつに感動しているーっ!!」
知るか!頭をばしん、と叩き立ち上がって引き剥がそうともがく。
キバの喜びように点数が良い事が分かった坂上は、用紙を見た。
「あのキバが・・・85点?!」
「すげーだろ!」
信じらんねぇ、と呟き落胆する坂上もまた化学補習の一人。
「裏切りだ・・・」
ぼそりと坂上は呟きキバに指を差した。
「化学補習組の裏切りだぁぁっ!」
「・・・お前が間違ってるんだぞ」
頭を抱え叫ぶ坂上に、アスマは呆れ顔で突っ込んだ。
「ナルト、頑張ったな。」
『サンキュー、アスマ先生』
キバの事もな。付け足されてナルトはニカッと笑う。
『キバの努力!』
解答用紙には100という数字。去年のは二点足りなかったから、ナルトは満足した。
英語の時間になるとやはりキバの点数は良くて、今度は里山が無言の睨みを寄越す。
テストは返され、昼休みになれば間違いを早く終わらせようとする生徒が多く、ナルトはクラスで先生をしていた。
『・・・あと、どこ解んねえのよ』
前髪を指で払いながら尋ねる。
この癖は元からではなく、サスケと共に過ごすうちに付いていたのを本人は知らない。
『桐野、そこはリスニングだったから電子辞書か携帯で聴いてみ。』
「う、うんっ!」
女子生徒にも教え、指摘をしていくナルト。廊下からはなんだなんだと人が集まる。
「何をしているんです?」
エビスが現れ中を覗いた。
ナルトを中心にしてテスト直しをするクラスメート達。互いに相談しあい、話している姿。
「あなた達も少しは見習った方がいいですよ、遊びたいのならば。」
「でぇきたぁぁぁっ!!」
みてみて!と里山がナルトに用紙を持ってくる。うっせぇよ、と言いながらも顔は笑っていた。
「ど?出来て・・・っ!」
『出来たじゃねぇか、里山』
わしわし頭を撫でた。
一瞬きょとんとしたが、里山は照れ笑いを浮かべる。
「だろ、俺できんだよ!」
「俺も出来たぜぇっ!」
坂上が持って来て直ぐ頭を下げて待つが、いっこうに来なかった。
「あ、あれ・・・?」
『坂上・・・』
じろり、と見て坂上は口元をひきつらせてしまった。
『まずは名前の確認をするんだな。』
「・・・へ?あ、まじ?」
違う生徒の答案用紙に、彼は床に倒れ込んだ。
「俺の苦労の結晶が・・・」
『それも間違いな。』
止め刺しをくらわせると彼はもう言葉を発しなかった。
『・・・後少し、か。』
数学が始まるのは。チャイムが鳴ればテストが返ってくる。
ナルトは緊張と期待で胸がどきどきと高鳴っていた。
「それではテストを返却します。」
エビスの言葉に一度胸が強く打たれた。
自分とサスケとの結果が出る。良くも悪くも直ぐに現れる順番待ちに、腹の中が渦をまいていた。
「・・・渦巻君」
『・・・・・・っ』
表情が強張り、脚さえも緊張で震えて冷や汗も出た。
「君は、まだ開花途中と言えます。これからもその負けん気と努力で次も頑張るんですよ。」
『・・・はい。』
駄目だったのだろうか。頭の中でぐるぐる周り瞳に膜がはる。
「おめでとうございます。」
『・・・・・・は?』
顔をあげたら微笑んでいるエビスがいた。差し出された答案用紙を視線を下げて見ると目が見開いて固まる。
『・・・・・・。』
「どうしましたか、貴方の答案用紙ですよ。」
ああむかつく。
サスケの姿が出て来るのが。
『・・・ありがとう、ございました。』
「・・・いいえ。」
受け取り席についた。
余りにも弱々しい姿に周りは心配の色を浮かべるが、エビスがナルトを誉めた事にも驚きが隠せなかった。
「ナルト、どうしたよ?」
『どうしよう・・・キバ俺・・・っ』
心配になって話しかけるが、ナルトは机に突っ伏す。
そんなに悪かったのかと思い答案用紙を引き抜き、確認するとキバもまたじわりと瞳が潤んだ。
「お前がよ、数学でこの点数見たの三年ぶりなんだけど・・・」
『・・・だろ?』
顔は突っ伏したままだが、隙間からブイサインを作るナルト。
「すげぇじゃん、ナルト!」
『ははっ、マジ久し振りだ!』
頭を撫で回され、二人して笑った。
悔しいけれど、サスケのおかげとしか思えなかった。
早く、見せたい。そう思ったのは何時以来だっただろうか。
「ナルトー、見なくていいのか?」
『明日見るー!』
張り出されていた学年順位表を見ずに、ナルトは足早に帰宅した。
「・・・ったく、やってくれるぜ、ナルトの家庭教師様はよ。」
表を見上げてキバは目を細めて笑った。
「アイツが主席になんのも、三年ぶりだってぇの・・・」
どうせ会うんだろうから。
携帯を取り出してキバは操作した。
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