[携帯モード] [URL送信]

NARUTO


中間テストが近いせいか、教科課題のプリントに誰もが溜息をこぼす。


「・・・同位体」

『と思いがちだけど同素体だ。』

わかんねぇ、キバは机に突っ伏した。

先程化学の授業でアスマは課題プリントを渡し、彼はそれを早く終わらそうとナルトを頼る。

『同じ元素の単体で、性質の異なる物質を違いに同素体って言うんだよ。』

「なんでそうなんだよー・・・」

『黒鉛は柔らかいだろ?じゃあダイヤモンドは?』

硬い。ぶーたれた顔を向けるキバ。

ナルトはそれを見てからかいもせず言葉にする。

『そう硬い。お互い性質が違うだろ?』

「だから?」

なによ、と言うがキバは目を丸くしてはっ、となる。

「両方とも炭素単体か!」

『出来たじゃん。』


頭をわしゃわしゃ撫でればキバは照れ笑いを浮かべる。

「俺すげぇっ!」

『なら酸素で出来た同素体は?』

問題をふっかけると、キバは腕を組んで考えるが次第に眉間の皺が増えていく。

『一つは酸素だろ?もう一つは何だ』

「あー・・・オゾン?」

正解。彼はふぅ、と息をはく。

『スコップだ、キバ』

「スコップ?」

いきなりスコップ何か関係あるのか?そう言いたい顔をする。

『琉黄のs炭素のc酸素のoリンのpの四種類だから覚えとけ。』

「ナルトォォーッ!!」

感極まったキバはナルトに勢い良く抱き着く。

それを宥めるようにはいはい、と頭を撫でた。

弟って、こんな感じなのかな。

ナルトは頭の片隅でそう感じた。


『甘栗うまいのに・・・』

ナルトはスーパーへ立ち寄り茶碗蒸しの材料を調達していた。

甘栗・・・ああ、甘栗・・・

後ろ髪を引かれる思いだが、二人分で一瓶は多い。

それから茶碗蒸しに合うよう魚とサラダに使う野菜等を買った。

色々冷凍されてはいるが、それを頼るのは時間が無い時にしようと考えているナルト。

早く帰って作ろうと袋に詰めていると声がかかり、顔を強張らせた。

「ナールート。」

『ーー・・・っ!』

背後からの声がナルトの嫌なものが溢れて来る。

「随分成長したねー、先生驚いちゃった。」

『・・・方向逆じゃねぇの、カカシ先生』

隣に立った男にナルトは平常心を保とうと袋詰めしていく。

「今日こっち安いのよ、お酒」

『へえ、チラシなんて見るんだな。』

興味ねぇけど。詰め終わりカゴを所定の場所へ入れる。

「ねぇナルト、数学は良くなった?」

『それ、あんたが言う台詞じゃねぇだろ、変態教師』

「ひどいねぇ、可愛いと思った生徒には、可愛がるものでしょ?」

変態じゃねぇか!

腹の中は色々な感情が渦巻いて、脂汗がじわりと浮かんでくるのが分かる。

『・・・・・・っ』

店を出てナルトは震える指先を見た。

やっぱり、治ってなんかいない。ただ記憶が奥へ奥へ行っていただけ。


早く家に帰りたくて、足速に歩いた。


帰宅して直ぐに着替えてから夕食の用意をするが、手つきは遅い。

何処か上の空で、何度目か解らない頭を左右に振った。


『・・・ムカつく』

相変わらずマスクをしていても、綺麗な銀髪に大人の色香を持っているカカシ。

性的な事をされていなくても、植え付けられたのは一年半も及んだ。


忘れた頃に、記憶を蘇らせるように現れたカカシ。

嫌で堪らなかった。


「ナルト?」

『・・・っ!あ、お帰り』

ぼうっとしていたせいか、物音に全く気付かず料理も進んでいなかった。

「何か言われたのか」

『な、なにをだよ』

まさかカカシと話しているのを見られたのではないだろうか。

ひゅっとナルトの身体が冷える。


「普通果物包丁で味噌溶かないだろ。」

それくらい様子がおかしいナルト。

誤魔化そうと頭の中でぐるぐる考えても、今のナルトには思い付かない。

『それはその・・・っう!』

「何があったんだ」

顎を捕まれ彼の方へ向かされる。

瞳は鋭く怒りの色が現れナルトの身体を強張らせた。

『だって・・・言ったら・・・っ』

「言ったらなんだ」

『もっと、しそうだから・・・』

目を伏せて長い睫毛が陰影を作り、きゅっと固く唇を閉じる。


「それは数学の点数か」

『・・・・・・。』

反応からして違うが、サスケはもう一つの方だろうと気付く。

「教師と会ったんだな」

『ーー・・・っ』

ぎゅ、と眉根が寄り歯を噛み締めるナルト。

声を出さないようしても、彼にはそれだけで理解が出来た。

「何もされなかったか?」

『・・・っ、うん』


どうも誤魔化すのが上手く出来なくて、隠すのが下手だとナルトは痛感した。

「ならいい、無理して作るな。怪我するだろ」

『・・・ごめん』

顎から手に移り、手の甲に唇を落とされた。

胸がきゅんとしてしまい、ナルトはどうしてか自然と彼の胸元へと身体を寄せた。

「どうしたよ」

『わかんね・・・しらねぇよ』

背に手を回し、ぐりぐり胸元に顔を擦りつけるナルト。

サスケに抱き着きたい、と脳が身体を支配した。

サスケの体温や、規則正しい鼓動の音、香りが今のナルトを落ち着かせてくれる。


『ご飯、作る』

「無理するなっつったろ」

抱き着いたまま気恥ずかしそうな声で言葉にする。

それでも作ると言うナルトだったが、離れようとしない。

「このまま作るつもりか」

『うう・・・っ』

耳まで赤く、どうせ恥ずかしくて動けないだけだろう。

本当に分かりやす過ぎるナルト。

「茶碗蒸し、作るんだろ」

『・・・っ、作ってやるってばぁっ!』


「・・・・・・。」

ナルトは意を決して両手で顔を隠し、彼に見られないよう背を向けた。

行動がいちいち計算されていない素直さで、サスケは微笑を浮かべていた。

「時間無くなるぞ」

『分かってるってば!』

早くおいきなさい!指を後ろに向けて精一杯告げた。

はいはいと言いながらサスケは部屋へ向かう。

『もー・・・何してんだよ俺ぇ・・・っ』


キッチンに両手をついてうなだれる。

なんて恥ずかしい事をしたんだ。ぐるぐる回る。

安心してしまった事も恥ずかしく思えてしまい、自分はどれだけ子供くさいのだろうかと。

彼を前にすると、自分はこんなにも感情のきっぷが激しいとは思っていなかった。

熱くなる頬を数回叩いて、ナルトは遅れた夕食作りに専念した。




[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!