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NARUTO
十五

静寂したリビングは時計の秒針の音すらしない。

だから、サスケの声が耳に残響する。

「体罰でもされたか」

『だから何で知りたいんだよ。別にサスケには、関係ないじゃん・・・っ』

言葉に反応を見せなかった事に違うと考える。

震える声で困惑を浮かべるナルトの姿は弱々しい。

「・・・っ、ナルト?」

手の甲に冷たいものが濡れて顔を覗き見れば、ぽろぽろ涙を流していた。

「・・・・・・。」

きしりとソファーが軋んだのは、サスケの膝が乗りナルトを抱きしめる。

『サ、スケ・・・?』

「そんなに辛い事されたか?」

宥めるように頭を撫でると、ナルトは頭をゆっくり左右に振って鼻を啜る。


何故そこまで知りたいのかナルトには解らない。

何時も表情なんか変えないような人間が、怒りを含ませたり優しくなったり


こうやって抱きしめてきたり


解らないだらけだった。


『意味、わかんねぇ・・・』

「お前は努力の固まりだったろ。それが数学だけ落とすって異常としか思えなかったんだ」


拒食になった時期が数学の成績が下がったと言われ

数学の授業中に倒れたとなれば、教師と何かあったと思う所で

拒絶を現していると考えているサスケは、嫌な考えも出て来てしまう。


『いやだったんだ・・・本当に、嫌だったんだ』

嫌な事が当たるのか。

サスケは気持ちに焦りと怒りが溢れるも、冷静を装い震える声に気付いて背中を撫でる。

『あ、あんな・・・っ』

「何かされたか?」

自然と力が入り、ナルトを強く抱きしめた。

純真無垢に育っていたナルトを変えた教師に、彼は腹の中が怒りで渦巻く。

『くっついて耳元で話すし・・・べたべた身体触ってくるし・・・っ』

変な事ばっか言う。

気持ちが悪くてストレスが溜まってしまった。

どんなに言ってもへらへら笑うばかりで、嫌で堪らなかった。

「触るって直接身体にか?」

『ちがう、けど・・・でも俺は嫌だった・・・』

ぼろぼろ涙を流してサスケの肩を濡らす。

身体や声も震え、声を我慢して泣く姿が、サスケには辛かった。

辛かったけれど、聞き出そうとしたのは自分。

自分勝手な理由で土足で踏み込んだのは自分。

「そんなもん忘れろ」

『勝手な事、言うな・・・っ』

声を堪えても、涙は止まらず嗚咽がる。

サスケは頬に頭を抱き寄せてキスをした。

「俺がいるから、忘れろ。」


『意味、っく、わかっ、ね・・・っ』
喉を引き攣らせ話すが、サスケは耳の裏に軽いキスをする。

「忘れろ、ナルト」

『だっ、から・・・っ』

今度は音を立てて同じようにする。

ぴくりと震えたナルト肩。

『な、で・・・すん、だよ・・・っ』

「お前がウスラトンカチのままだからだ。」

忘れやがって。

耳元で低い声がナルトをぞくりとさせる。

自分は何を忘れたのか

多すぎて解らなかった。


『な、にを、だよ』

「お前俺にいっただろうが。計算速くなって見返してやるって」

言ったのだろうか?そう頭の中でナルトは思い出そうとした。

何をするにもサスケには敵わなくて悔しかった。

悔しくて
悔しくて堪らなかった。


だから


【絶対サスケより計算速くなって見返してやるっ!】

【お前俺と三つ違うのに馬鹿か】

【馬鹿じゃないやい!俺ってば絶対、俺を馬鹿にする奴と、サスケを見返してやるってばよっ!】

【なら仮に出来たとしたらどうすんだ?】

【ウスラトンカチって言うな!馬鹿にするなっ!】

【じゃあ出来なかったらどうする?】

【−−・・・っ、そんなの考えてなんかねぇってば!俺は絶対、絶対サスケを見返してやるってきめてんだ!】

【へえ。なら出来なかったらお前は俺のモノになるんだな。】

【・・・モノ?】

【そう。俺のモノ。】

【ふん。俺はサスケのモノになんかならねぇってばよっ!】


【約束だぞ】

【約束だ!】









『・・・・・・。』

止まらなかった涙は一気に止まり、ナルトはただ腹が冷えた感覚に見舞われていた。

「だからウスラトンカチなんだよ、お前」

『サスケ・・・俺を女だと思ってたんだな』

何が俺のモノだ。

表情を引き攣らせながら呟くと、ウスラ馬鹿。と言われる。

『どっちがだよ。男に俺のモノとか言うか?サスケがウスラトンカチじゃん!』

「――・・・あ?」

凄みのある声にナルトは言葉が出ない。

まずったか。そう思い付いた時は遅く、唇が重なった。

『・・・っ!』

「やっぱりお前、ウスラトンカチだな」

唇をくっつけたまま告げ、舌先でそれを舐める。

ナルトは頬を真っ赤にして動こうとするが、乗っかられていて逃げ出す事が出来なかった。

『おっ、な・・・チュ・・・っ、俺の初物・・・っ』

言葉にならない程混乱してしまうナルト。

サスケはそれをただ平然とした顔で眺める。

「お前が数学もトップだったとしても、俺の勝ちだ。」

『そ、そんなのわかんねぇよ!』

馬鹿にされたくなくて必死に頑張った。

自分が辛くて、そのままが嫌で勉強を毎日やってきた。

「全国模試六年連続取ってねぇだろ、お前」

『んなぁっ!』


なんだよそれ!してやったりな顔を浮かべるサスケが憎たらしくて仕方が無い。

「当たり前だろ。こっちだって負ける訳にはいかねぇんだ。」

『・・・そんなに友達いなかったのか、サスケっ・・・いぃっでぇっ!!』

それしか無いと思って伝えれば、思い切りきつく抱きしめられた。

痛くて痛くて、また涙が滲んでくる。

どうしてキスをしたのに解らないのかがサスケには理解出来なかった。



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