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NARUTO
十一

サスケの腕をくいくい引っ張れば、それに溜息をついて、ナルトの頭を撫でた。

『・・・?』

「大丈夫だったのか?」

時々こうされると、ナルトはどう反応していいか迷う時がある。

昔から何処か冷めていて、表情を崩さない。

昔から何処か大人びていて、人をウスラトンカチと言いながらも面倒を見てくれていた事も。

『はやくいこ・・・』

「ああ、だがな・・・」

瞳をさ迷わせて告げるナルトに、サスケはドアを睨みつけ蹴った。

勢いよく開いたドアはそのままカチッと音がして止まる。

「こんな所で盛ってんじゃねえ、クソ餓鬼共」

『サッ、何言っ・・・んんっ!』

顔を青ざめさせて言葉にするが、手で口元を覆われてしまう。

ナルトの声だと知られないように。

『ん、んんっ!』

「・・・・・・。」

だしだし足踏みをしたのは苦しくて。

サスケの大きく男らしくも綺麗な手は、顔の小さいナルトの鼻まで圧迫していた。

「声出すな」

『ん!んんっ!』

サスケは耳元で囁き告げると微かに揺れた肩を横目で見る。

頷いたナルトは早く解放されたくて自然と彼の腕を掴むと溜息を零された。

「お前は」

『ふううううん!んっ!んんっ!』

早く手を退けてくれと伝えると、それは離れてナルトは胸一杯空気を吸い込む。

サスケが歩き出してナルトもその後に続いた。


帰ったと思っていた。

けれどまだ残っていて驚きはしたけれど、母校だから教師と会っていたのだろうと考えた。

『・・・・・・。』

もう何度と無くみた彼の背中。

悔しさで顔を歪めて見た事も

泣きながら自分よりも大きな背を見ていた事も

こうやって、助けられて先を歩いていく頼もしい背中を眺めてた事も。


『・・・ずりぃよな』

たった三つしか違わない年齢。

『・・・くそ』

アイツの匂いが取れねぇよ。

昔から変わらない匂い。


どこかホッとしてしまっている自分。

どうして頬が熱いのかなんて、そんなの身体を動かしたからだ。











「ナルトくぅーん、君次サッカー決勝だからぁっ!」

『知るか!次俺バスケなんだよ!』

びしっ、と指を額にくっつけて話す里山に、それを手でたたき落として怒るナルト。


「なぁーにぃーっ!」

一昔聞いたお笑い芸人風の言い方をする里山は、リストを確認した。

「・・・ってまだ時間あるだろうがっ!」

『戦士の休息だ。』

ばっ、と顔を背き唇を尖らせて言葉にすれば、彼は頬をぶにっと掴む。

『ひゃにすんだよ!』

「なるとっくぅーん、それは只の言い訳でぇーす。」

フグみたいな口になりながらもナルトは里山を睨む。

けれど里山は空いている手で指をぱちん、と鳴らした。

「お前達!ナルトを連行していけっ!」

「サーイエッサー!!」

『ちょ、ま・・・っ!』


わらわら集まりナルトを担ぎ上げるサッカーメンバー。

ナルトはぐっと歯を噛み締めると怒声を放つ。

『やすませろーーっ!!』

こういう時だけ団結力出してんじゃねぇよ!

一人怒鳴るナルトに、誰も止めはしないし笑いをただ誘っているだけだった。


『くそ・・・っ』

視界の端に映ったサスケの姿。

どうせまた後で馬鹿だのウスラトンカチだの言われるんだろうな。


頭の中でそう考えながらも、歩くのが面倒になったナルトは、総合グランドまでそのまま運ばれていった。


「――・・・。」

ナルトを見ていたサスケは先程の事を思い出していた。




どうしても気になって、サスケはイルカの元へ訪れていた。


「ナルトの中学時代の成績かい?」

「はい。アイツ中学は受験でしたよね。俺いまナルトの家庭教師やってるんです。」

イルカはそれに目を丸くはしたが、直ぐに目を細めて笑む。

別に両親から聞ける事だが、もしかしたらと思い此処へ訪ねた。


「そうか、ナルトの数学が少し良くなったんだよ。最近また落ちたから心配だったんだ。」

イルカは立ち上がって資料を取り出した。

「ナルトは、本当に数学以外の教科は成績上位でな」

内緒だぞ、とナルトの資料を見せる。

数学の成績が下がったのは二年生の後半。

それ以外の教科はオール5という数字だった。

もっと言うなら数学が下がる前の数字は4か5のどちらかで、成績優秀とも言える。

「前に聞いたんだ、数字が苦手な理由を」

イルカは珈琲カップを眺めて悲しそうな目をした。

「苦手だから、としか言って貰えなかったよ。原因はあると思うんだけど・・・」

「そうですか」

落胆するイルカ。

イルカは生徒を想う優しい教師であり、兄のような存在だと良く生徒に言われる。

悩みを相談する生徒は多く、イルカは何時も真摯に受け止めてくれる数少ない教師。

それでも言えないとなれば、数学教師と何かあったとしか思えない。

イルカは顔を上げてサスケを見て笑みを浮かべる。


「だがサスケも誰かを心配するようになったんだな」

「してませんよ。ただあの馬鹿の数学の悪さにです。」

それでも心配、したんだろ。

イルカはからかうでもなく、やはり優しい笑みを浮かべていた。

だから苦手なんだ。お人よし馬鹿は、と心の中で愚痴る。


資料を返してサスケはイルカの元から去って、バレーの試合を見た。

昔から変わらない笑顔と、人に好かれやすい性格は今でもそうで

「あの馬鹿が・・・っ」


鈍感さは全く変わってなんかいなかった。

あの肌をもう一度大多数の人間に見せるつもりなのか、とタオルを取り出して背中を叩いた。


呼び出すきっかけも作って、取り敢えず喉を潤そうと自販機で水を買って体育館へまた向かった。

「・・・」

するとトイレから出て壁に寄り掛かるナルトの姿があった。

どうも様子が変で不能だの最悪だの呟く姿と、目の下が赤い事に気付いてまさかと思い

サスケは理由を付けてそこへ入ろうとしたが止められた。


必死になって頬を赤くして止める姿が

サスケは苛立ちを覚え、空いている手で少しだけ押し開けると

微かに聞こえる女の喘ぐ声に、どろどろとした物がサスケの中に現れてくる。

動揺する姿は、さっきまで生き生きとした姿では無くて、弱々しく

ころころ
ころころ
変わる表情や仕種が

・・・愛おしい。




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あきゅろす。
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