[携帯モード] [URL送信]

NARUTO


帰宅してナルトは直ぐにシャワーを浴びた。

普段ならまだ入りはしないが、今日も家庭教師のサスケが来るので早く入らないと寝てしまう可能性が強くて。

頭の中はぐるぐる昨夜の事を思い出し気分が滅入ってしまう。

また今日も言われるのか。

嫌でたまらない。


『今日夜勤だったか』

シャワーから出てダイニングテーブルを見ると

看護師をしている母親のクシナは、早く食べちゃいなさいよ。と置き手紙がされてあった。


半ズボンにTシャツ姿で冷蔵庫からおかずを取り出して電子レンジで温めた。

がっつり食べる気力が出て来ない。

『・・・・・・。』

18時に近付こうとする時計を眺めて、戻ればいいと思うがかちこち進んでいく秒針。

チャイムが鳴ったのは時間二分前。

『はいはーい』

ソファーから立ち上がって玄関ドアを開けた。

『今日も宜しお願いします?』

「疑問符か。」

片目を眇る相手にナルトは貼付けたような笑みを浮かべる。

『ご飯は?』

「食ってきた。」

そっか、と返し中へと入る。それに続いて彼も入っていった。

「・・・クシナさんは?」

『夜勤。父ちゃんは今日から出張。』

なんか海外出張多い気がするな、とナルトは改めて感じた。


「――・・・克服プリントね」

『これやんなきゃなんねえの』

結局見せた。

中身を見たら間違いなく終わりそうも無いし、終わった後にやる気力も無い。

「ならまず出来る所だけやれ。分からなかったら式が途中でも次に進め。」

『・・・ん』

頷くとサスケはバックからパソコンを取り出して指を動かし始めた。

『論文?』

「ああ。誰かさんの家庭教師してるからな。」

ほんとうにイラッとしてくる。

頭がかっとなるが、何処か冷めている自分がいた。

『理由にして断れねえのかよ、頭いいくせに。』

「別に問題ないんだよ、俺は」

ああそうかい。

頭がいいと便利ですね、とも言いたかったが面倒で言わなかった。

『・・・あの眼鏡ジジィ』

文章読むだけで疲れて来る。ああしろこうしろという問題文に、ナルトの頭は混乱した。

その呟きにパソコンを見ていた彼の目線が上へと向く。


「数学、だれた」

『――・・・エビス』

頭を掻いて天井を見上げた。

『気に入らねえんだろ、数学だけ点数わるいのが。』

「・・・は?」
それにはサスケも驚き指が止まる。

『数学抜きなら俺、学年上位だし。エリート好きのエビスからすれば気に入らねえ生徒なんだ。』

「お前がか・・・?」

この話で信じられない表情を見るのはもう慣れていて、ナルトは空虚な笑みを浮かべた。

『なに、そんなに意外かよ。』

「意外だな。」

横目でサスケを睨み目を伏せた。

『馬鹿そうだからって決め付けんな。』

数学が嫌いな理由は言いたく無いから解らないって言ってるだけ。

けど、今でも鮮明に覚えているものがあった。


この外見と性格で馬鹿にされていたから。

外見は父親譲り
中身は母親譲り

悔しくて堪らなくて、必死に勉強した。


目が気持ち悪いと言われ石を投げられた事もあった。

カツラだとからかわれて強く髪の毛を引っ張られた事もあった。


けど笑って誤魔化して、心では泣いて。

馬鹿だから勉強なんてしなくていいと

教科書を破られた。

馬鹿だから字なんて書けないだろうと

鉛筆を折られてノートを破られた。

教師も気付いていながらも、それを理由にいい先生ぶって話しているのも


必死こいて勉強して、見返してやりたかった。

生徒も教師も

――・・・サスケもだ。





『・・・・・・っ』

「悪かった」

頭に乗った物とサスケの言葉に驚いて瞼を開いた。

顔を向けると無表情ながらも頭を撫でる姿に、きょとんとしてしまう。

「そう言えばお前、頑張ってたよな」

『は?』

撫でた手は戻り、ナルトは首を傾げた。

「遊ぶの我慢して、必死こいて勉強してたな。」

『もう忘れた』

ふい、とプリントをやりはじめた。

忘れてなんかいない。

ただ、認めたく無かっただけ。

確かに昔はサスケとも遊んだし、喧嘩だってしてた。

いや、喧嘩ばっかだった。が正しい。

お前もある意味俺をそうさせたんだ。

そんなの絶対言ってやるもんか。


悔しかった、だなんて言うもんか。




[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!