NARUTO
秘めたるもの
空が茜色に染まり、綺麗な夕焼け空が、木の葉の里を包んでいる時
『あー、頭かいー』
頭を掻きながら詰め所のドアを開くと、そこには見知ったメンバーが居た。
「あ、ナルト調度良かった・・・ってどうしたの?」
『あーサクラちゃん聞いてくれよー。頭虫に刺されたっぽくてさー』
痒い所をまた掻き始めると、サクラが診ようと近付く。
「今日の任務って林や森だった?」
『いや、今日は護衛だったから別に・・・でも帰りに木にボール引っ掛かったのを取ったぐらいだし』
見せて、と言われ上半身を少し前へ屈めてサクラへ見せる。
探る細い指が痒い場所付近に触れて、痒さが増えた。
「じっとしなさい、ぷつってなってるわね」
『痒いしイテーし・・・薬塗ってくんね?』
痛みは多少耐えられても、痒みは耐えられたものじゃない。
「やだナルト、あんたこれ・・・」
『サクラちゃん薬ーっ!』
言葉を止めジッと患部を眺めるサクラと
痒いってばよー!と足をダシダシさせると、サクラは頭を軽く叩き薬を取りに向かった。
その間にナルトは今日の任務の報告書の作成を始める。
ナルトも落ち着いた頃に中忍となった。本来ならば上忍になれてもおかしくはないのだが、推薦されてもナルトは経験を積む為にと中忍の職を取った。
あんなドタバタキャラが今では結構落ち着き、大人へと変わっていくナルトの姿は
里の中で人気がある事を、本人は全く知らない。
辛い過去は消し去る事は出来ないけれど、ナルトはそれに負けず進んでいった結果が、確実に現れている。
かたり、と筆を置きまだ吸いきれない墨汁を吸う為に、吸引紙をつけ吸わせる。
さらりとなった用紙を丸めて懐へと入れた。
『あーもーまじ痒いってば!』
ガリガリと強く頭を掻く手が、誰かによって阻止される。
『・・・あ?誰だって・・・ってシカマルか』
「お前何やってんだよ」
振り向くと眉間に軽くシワを寄せ、気怠い雰囲気を醸し出しているシカマルの姿に、ナルトの胸は小さくトクリと動く。
『虫刺されだとさ。今サクラちゃん薬取って来てくれてんの』
「だったらもう少し我慢しとけ」
『いや無理。むず痒さは我慢出来ねぇ。』
反対の手で掻こうとすれば同じように阻止されてしまう。
『シカマル、自分だったら我慢出来ないで掻くくせに・・・』
「お前気付いてねぇのかよ」
『なにが?』
キョトンとした顔を向けると、シカマルは溜息を吐き出し、先に掴まれていた手をナルトの目の前に持ってきた。
『・・・は?』
「は、じゃねぇ。お前血出て来てんだっての」
『別に傷出来ても直ぐに治るからいいよ。』
掴まれたまま手をパタパタ動かし、ふて腐れ声で返した。
痛みは昔から慣れているし、傷は九尾の力で直ぐに癒える。
傷付いたって
傷付けられたって
治してくれたのは人ではなく九尾
「俺が見たくねぇんだよ」
『見なきゃいいだけだろ。』
見たくないモノから目を背けるのは簡単だ。
自分だってある。
『もし今シカマルの肩に黒光りする虫やら、足の数が多いゲテモノとかいたら、俺は迷わず目を背けて走り去る!』
けらけら笑って例えると、シカマルは口端を引き攣らせていた。
「テメェ例えを虫にするんじゃねぇ。」
『わかりやすくね?』
ことりと首を傾げると、サクラがやってきた。
「ほらナルト頭出して。シカマルはそのまま押さえて」
『ちょ、サクラちゃんそれってまさかそんなに・・・』
「痛むと思うわよ?あんたただの虫刺されと思っちゃダメよ。」
乳鉢の中にある物を捏ねるサクラ。
その色は緑色をしていて、何が混ざっているのか解らないが
医療忍者であり、5代目火影である綱手の弟子でもあるサクラ
間違いは無いのだが、サクラの言葉に不安感がある。
「それ、掻けば掻く程広がって次第に狂っていっちゃうのよね、痒みで。」
『ひっ、広がるって・・・』
淡々と話すサクラと引き攣り顔のナルト。
確かに痒みは強まり範囲も広まった感じがしてきた。
そう思うと更に追い撃ちをかけたのが
「あー・・・噛まれた場所が紫色だなこれ。」
「そうなのよ、厄介なのに刺されるなんてね」
゙流石意外性なだけある゙
とサクラとシカマルが声を揃えて呟いた。
『でも一回塗ったらだいじょ・・・』
「大丈夫な訳ないでしょ」
サラリと返されナルトの肩は落ちた。
「痒くなったら塗るのよ。だから厄介なのよね、コレ。」
『痒くなったらって・・・』
「どんな時でも塗らないと、反動で一気に痒みが襲ってくるわよ」
『・・・・・・。』
言葉がでなかった。
本当に厄介な虫に刺されたもんだ、とナルトは頭の中で嘆いた。
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