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NARUTO



無理して笑った笑顔より


心の底から笑った顔が見たかった。


『…もっと俺に力があれば』


何とか出来る力があれば…


もっと早く救う事が出来たのかもしれない。


自分が出来る精一杯は、まだまだ子供で微力かも知れない。


それでも
それでも幸せを願ってしまう。


何時も怪我や痣を作って花を売ってた。


何時も目元を赤らめて


【お花…如何ですか】


何時も震える声で頑張って


花が売れなかったらどうしようという恐怖心に押し潰されそうで


少しでも無くなるなら


【ナルトお兄ちゃん…】


少しでも元気になってくれるなら


自己満足だったのかも知れない。


【ナルトお兄ちゃん、ありがとう】


最後に聞いた声が、震えた声でもなく

綺麗な声だった。



女の子の姿が見えなくなって、違う花売りの子に聞いた。


【あの子は買われちゃったの…】








『…馬鹿だ、俺』


一人居なくなれば次の子が同じようになるんだって


根っこをなんとかしなきゃどうにもならないのに…


悲しくて、涙が零れた。


悔しくて
悔しくてたまらない。


ふわりと、頭に何かが乗った。


『……っ』


「お前もっと早く言えよな」


『言う事無いのに何を言うってば…』



シカマルの大きな手だった。


「お前が足繁く通ってた花売りの女の子だよ」


何故それを知っているのか…見ていた人が伝えたんだろうと思いたくて


『欲しいから買っただけだって。』


「あの女の子、数日前に買われたぞ。」


『……っ』


聞きたく無い言葉だった。

耳を塞いで仕舞いたかった。


「花売りの元締が捕まった。」


『……。』

捕まったから何だって言うんだ、女の子は今もしかすれば酷い仕打ちにあっているかも知れない


もしかすれば、幸せに暮らしているかも、と思いたかったけれど


買われた、となれば違う。


ナルトはぎりっ、と歯を食いしばり拳を強く握った。


「お前が植えたり贈りまくった花、随分増えたな」


『…うん』


「その中でお前が皆に一番多い花贈ったの何か知ってるか?」


一番多い花…


「ガーベラ、カーネーション、東雲菊にカスミソウだ。」


『…詳しいね。』


「花屋が詳しく無くて誰が詳しい。」


イノイチとシカク、それにイノまで現れ、ナルトは何が何だか解らない顔を向けた。


「あの子にとってお前が希望だったんだ、ナルト。」


『イノの父ちゃんサッパリ解らない。』


何故じぶんが希望だったのか


「一ヶ月前、菜の花の里の長である一人娘が、旅の途中に居なくなった。」


シカクが説明を始め、ナルトは黙って見上げて聞いた。


「中々見付からず、この里に文が届いたのは直ぐだった。

人相描きを見ながら探しても見付からず、そんな時にお前が花を植えたり贈ったりしていたんだ。」


『それと、花の何の関係があるんの?』


シカマルが落ち着け、と言うようにナルトの頭を撫でた。


「花の仕入れが菜の花の里だ。イノイチ。」


「いいか、良く聞いてろ。

辛抱強い、はガーベラ。
あらゆる試練に耐えた誠実、は カーネーション
困難に耐える、は東雲菊(しののめぎく)
そして霞草は、その娘の名前、カスミだ。
あそこは生まれた子に名前だったり花を持たせるんだ。何かあっても良いように。」


イノイチの説明が、花言葉だと解るとナルトは俯いた。


「ナルトが居たから、あの子は花言葉で助けを呼んでたのよ。」


「お前がああしていなかったら、俺達も気付かなかった。」


『…そっか』


ぽたぽたと地面に濡れた粒の後がつき、声が掠れた。


「無事親元に送ったから安心しろ。」


『…うん』


「他の子供達も保護したから、心配するな。」


『…うん。』


「…取り敢えず手離せ。」


『やだ。』


イノイチ、シカクが伝え答えたナルトだが

シカマルの言葉には頷かなかった。


ナルトはシカマルのズボンのポケットをきゅっ、と握っていた。


「はいはい、二人とも行きましょうねー」

イノが気を聞かせて父親達の背中を押して去って行った。




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あきゅろす。
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