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月へ唄う運命の唄
捧げよ。7

無言で睨んでくるクノンの視線を受けて、何かを察したらしい男はふむ、と一つ頷くと、再び口を開いた。

「知りたそうな顔をしているな。まぁ慌てなさんな。まずは自己紹介といこう。俺はこの組織のリーダー、ガルマってモンだ」

そう名乗ったガルマは、わざとらしく貴族のような恭しい礼をする。

「それはご丁寧に。でもおあいにく様、私にはそれに返礼する義理もなければ必要も感じない」

「そォかい。まぁお嬢さんの可愛らしいお口から聞けないのは残念だが、既知の情報は別にいらねぇ。客員剣士見習いのクノンちゃんよ。ついでにあんたの上司がここに包囲網を敷いてるところまでバッチリ知ってるぜ」

私の名前どころか、やっぱり作戦までバレてるなんて……

《エミリオ、聞いて。今敵のリーダーと接触中なんだけど…私達の作戦はバレてる。強硬突破しかないかも》

《…チ、どうりで。こっちは今、村の民家に潜んでた伏兵どもと交戦中だ!》

苦虫を噛み潰したような顔でガルマをいっそう強く睨み付ける。それにしてもこの余裕、一体どこから湧いてくるのだろうか。

「おー怖い怖い。だが、客員剣士見習いとはいえ丸腰の女の子相手にビビッてちゃ組織の頭は張れねぇ」

「さっきから組織って言ってるけど、こんな子供達を誘拐して何がしたいの?人身売買?」

作戦が筒抜けになってる以上、こうなったら少しでも情報を引き出さなきゃ。

「いんや。まぁ資金稼ぎに拐った内の何割かは売り飛ばしちまってるが本命はそォじゃねぇよ。……実験さ」

ぞわり、と全身が粟立つのを感じた。今、この男はなんて言った?

「実験。そのためのモルモット。わかるよな、この言葉の意味」

驚愕に目を見開いたクノンを尻目に、ガルマはまるで自慢話をするかのように声高に語りを続ける。

「妙に思わなかったか?なんでここのガキどもが大人しくあの部屋に閉じ込められてるか。やけに静かにしてるか。生気がねぇのか。…それは人体実験に使った後の廃棄物だからだよ。いわばゴミだ。ゴミが騒ぐわきゃねぇよな?」

「人体、実験……?……ご、……み……?」

「何の実験か。それは人とレンズの融合実験さ。獣やら植物やらはレンズをその体内に取り込む事でその存在が変容し、モンスターとして再構成される。しかも時に高度な知能を持ち時に魔法をも使いこなす化け物になる。ならそれを人が行えばどうなるか。それはそれは素晴らしい、凄まじいまでの戦闘力を持った兵器になる。人間だって生物だ。レンズとの融合だって可能なんだからな。……だがそのまま突っ込んだだけじゃあ自我も理性もなにもねぇ獣になっちまう。だから模索する必要があったのさ。自我と理性を保ち、さらに命令に忠実な兵士を作る方法を、自らを進化させ、さらなる力を得る方法をな!!」

ごう、と見えない圧力が部屋を走り抜けるのを感じた。そして、目の前に居る男の魂が、頭部のとある一点に向けて流れていくような感覚がした。

「外衆め……!そのために子供達で実験を繰り返し殺したのか!親子を引き裂いたのか!家族を、壊したのか……!!」


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あきゅろす。
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