月へ唄う運命の唄 prologue...000 「…なに?もう一度、詳しく説明しろ」 「は。…此処より南東十数キロの山間部にて、極々狭い範囲内ではありますが、非常に高密度のエネルギー反応が観測されました」 「エネルギー反応?そう濁して言うということは、我々が人為的に扱うものとは違う、ということかね?」 「その通りでございます」 「興味深いな。…調査隊は向かわせたのか?」 「はい、そう仰ると思いまして、勝手ながら社の者を向かわせ、調査させてまいりました所…思わぬ拾い物がございました」 「…言ってみろ」 「人間です」 「人間?」 「はい。人間…それも、年端もいかぬ少女でございます」 「ふむ」 「調査隊の報告によれば、現地に到着した時、既にエネルギー反応は消えた後であり、中心であったと思われる場所には、見たこともない…いや、見慣れない材質の石や、円筒型の鉄屑などと一緒に少女が倒れていた、と」 「と、いうことは。数年前から観測され始めた例の現象と同様のものであると」 「左様でございます。少女は恐らく、その超自然現象…我々が仮に"次元歪曲"と呼ぶ現象に巻き込まれた形で、何処かより運ばれてきたのではないかと推測されます」 「…面白い。数年前から、というより我々が観測技術を確立し、開始した時期から何件か謎の物質が運ばれてきたり、またこちらのものが消えたりといったことは起きていた事が判明したが…くくっ」 「……?」 「その少女とやらは?」 「得体は知れずとも人命に変わりはない、と、今は屋敷の離れにて保護しておりますが、未だ眠ったままでございます」 「ならばその少女を引き取ろう。我が家にて、な」 「……もしや」 「面白いではないか。…くくっ、うむ。お前の予想通りだよ。…わかったなら、手配せよ」 「畏まりました」 「それと、目覚めたなら先ず私に報告せよ。挨拶をしておかねばな」 「仰せのままに」 2011/07/20 [*前へ] [戻る] |